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新型コロナ“戦時下”のパリから ー外出制限6週目のレポートー

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
4月26日日曜午前のシャンゼリゼ大通り(以下、写真はすべて筆者撮影)

新型コロナによる確認された死者数が、先週2万人を超えたフランス。厳しい外出制限が1ヶ月以上続いているが、日々感染者と死者の増加は続いている。

外出制限が始まった1週目からお伝えしているレポートも今回で6週目。制限解除が予定されている5月11日からどのような仕組みでコロナと共存してゆくのか。政府はもちろん、個々人も具体的な生活のあり方を手探りしているようにみえるというのが今週の印象だ。

以下、例によってパリの一生活者の視点で今週を振り返ってみたい。

4月21日(火曜)外出制限36日目

【この日までに確認された累計感染者数117324/累計死亡者数20796(そのうち病院での直近24時間での死者数404)】

数字はフランス公衆衛生局の発表によるもの。

以降、【感○/死○(○)】で表す。

5月11日から予定されている学校再開について、3週にわたって段階的に行われることが発表された。11日からの週はまず保育園、小学校、翌週から中学、高校と続く予定。ただし、ひとつの教室に入るのは1度に15人までとするなど現場でのかなりの工夫が必要で、遠隔授業との併用も検討されている。

北部、ヴァランシエンヌのトヨタの工場が再開されたニュース。およそ4000人いる従業員のうち200人からのスタートで、まずは従業員の安全を確保するための環境整備から作業開始。

外出制限が始まってから、生活必需品の物価は平均2.5%上昇しているというニュース。内訳は小麦粉14%、ウエットティッシュ(掃除用)21%、石鹸10%、パスタ5%、牛乳4%の上昇。必ずしも個々の商品の価格が上がったわけではなく、お買い得なものから品切れになり、価格の高い商品を買わざるを得ない消費者が増えているためだという分析。逆に、外出制限当初から価格が低くなっているものは、トイレットペーパー(25%のマイナス)、アルコールジェル(11%のマイナス)。

今が収穫期のブルターニュ地方のいちご農家。4週間前は収穫人の不足のために出荷できないことが危惧されていたが、人員の工面ができ、通常通りの出荷ができているという朗報。

いつもはゴミ袋を生産しているパドカレ県の工場が、ひと手間加えて貫頭衣のようにして、医療従事者らが使えるような防護服を製作するようになったという話題も。

アメリカの原油価格が史上最安値を記録した。

4月22日朝、カルティエラタンの様子。外出制限期間中、パリは晴天が続いていた。
4月22日朝、カルティエラタンの様子。外出制限期間中、パリは晴天が続いていた。

4月22日(水曜)外出制限37日目

【感119151/死21340(350)】

休業を余儀なくされているレストラン業界。加入している通常の保険では、コロナ禍への補償はされないということが当初問題になっていたが、料理人らが相互に呼びかけ団結して交渉してきたことが功を奏し、補償に合意する保険会社も出ているという。

野菜、果物の値段が平均して9%上昇。理由はまず輸送費の上昇。いつものようにトラックいっぱいの荷物を積める状況にないので、割合としてこの分が値段に跳ね返るほか、通常ならば安価なスペイン産などの品々が入ってくるところ、国産のシェアが高くなっているため。ビオ(有機栽培)はさらに高騰していて、12%の上昇。

経済的に厳しい人たち向けに食料の無料配給が行われている地域もあり、移民の多いパリ郊外などでは3時間並ぶケースも。

パック(イースター)の次は夏のヴァカンスが話題になるフランス。コロナ禍でも然り。ただし今年は少々勝手が違っていて、外国旅行は難しいため、フランス人10人中9人までは国内でのヴァカンスを予定しているという。また、夏は結婚シーズンでもあるが、集会禁止の煽りを受け、結婚式を挙げる人も少なくなる動き。冬まで、あるいは来年まで延ばすケースが増えているとか。

ヨーロッパ諸国の中では例外的に外出制限措置をとっていないスウェーデンの状況が注目されている。学校も通常通りで、医療崩壊している様子もない。人口100万人に対して感染者は188人(フランスは 310)、しかも感染のピークは過ぎたという市民の感想も聞かれるという報道。しかし、現地の医師によれば、死亡率は北欧隣国ノルウエーの4倍、フィンランドの8倍、デンマークの2.5倍と、高い値になっており、楽観視はできないとの見方。

4月23日(木曜)外出制限38日目

【感120804/死21856(320)】

新型コロナで最初に死亡が確認されたフランス人はオワーズ県の高校の先生だったが、クラスターが起きたその村の高校で、パスツール研究所が3月終わりに地元住人661人を調査。高校生の家族も含めて25.9%が感染。高校生、教師、学校関係者に限れば41%の感染率。感染している人のうち、17%には症状がなかったという発表。

イギリス、オックスフォード大学でヨーロッパ初となる新型コロナワクチンの治験が始まった。500人の健常者を募ってテスト開始。ワクチンの開発には通常少なくとも12〜18ヶ月かかるところ、今年9月に100万回の投与分を完成させる目標を掲げているものの、不確定要素多数という報道。

イスラム教のラマダンが始まった。本来なら盛大に祝うところだが、モスクで祈ったり、日没後のごちそうを大家族で分かち合うという慣習は今回はできない。今年のラマダン期間は5月23日まで。

4月24日(金曜)外出制限39日目

【感122577/死22245(312)】

5月4日から一般市民向けに、洗える布マスクがタバコ屋でなどで販売される予定との報道。いっぽう、マスクの材料を提供できる人、マスクを形にできる人、マスクを探している人、それぞれの立場の人をつなぎ、手作りの布マスクをネットを通じてやりとりする全国規模のプラットフォームもできている。

ホテル、レストラン業界の代表者たちと、大統領、大臣たちとのビデオ会議が開かれた。レストランやカフェがいつ再開されるかについて、具体的な日にちの決定はなく、少なくとも5月末までは無理なのではないかという予測。

会議に出席したシェフのひとり、ギィ・サヴォア氏がレストラン業界がフランスにとっていかに大切かを夜のニュースで熱く語った。(France2の画面から)
会議に出席したシェフのひとり、ギィ・サヴォア氏がレストラン業界がフランスにとっていかに大切かを夜のニュースで熱く語った。(France2の画面から)

『ル・フィガロ』紙には、学校が再開になったとしても、64%の保護者は子供を学校に行かせたくないと思っているという調査結果が出ていた。

アメリカのトランプ大統領の、消毒液が体内のコロナウイルスを撃退するのにも有効という発言がニュースになる。

中国では第2波対策として、ロシア国境での取り締まりを強化したという報道も。

4月25日(土曜)外出制限40日目

【感124114/死22614(207)】

エールフランスKLM航空に対して、フランス政府が70億ユーロ(およそ8190億円)の援助を決定。オランダも同様に20〜40億ユーロを予定。

サッカー、ハンドボール、自転車競技などのスター選手が、歴史的試合で身につけていたユニフォームなどをインターネットのオークションにかけ、すべての収益をフランスの医療機関へ寄付するという取り組みが紹介された。6300ユーロ(約74万円)で競り落とされたユニフォームもあるなど、4月25日時点で合計金額は23万ユーロ(約2700万円)になっているとか。

4月26日(日曜)外出制限41日目

【感124575/死22856(152)】

学校再開について。専門家たちは否定的で、9月からの新年度まで待ったほうが良いという考えだが、もし再開するならば、教室では生徒間は最低でも1メートルは開け、中学生以上は全員マスク着用などの措置が取られる予定。

家電や本などを扱う複数のチェーン店で、インターネットなどで注文して、指定の時間に店に取りに行くというシステムを拡大中。レストランでも同様に、事前予約で消費者がじかに取りに行く「ドライブ」というシステムを採用しているところも全体の数パーセントあるとか。いっぽう、パリ郊外のマクドナルドの「ドライブ」に3時間待ちの車の列ができていたという一般視聴者からの動画が流れたりもした。

マルセイユ、休業中の美容サロンチェーンの経営者と従業員たちが医療従事者のためにヘアカットを行なっているところや、小型飛行機の教習所が、地方をまたいで応援に駆けつける医師らのための空のタクシー役をかって出ているなど、さまざまな形でのボランティア活動が紹介された。

マルセイユの病院内でのヘアカットの様子。ボランディアの美容師さんらも医療用防護服を身につけて対応。(France2の画面から)
マルセイユの病院内でのヘアカットの様子。ボランディアの美容師さんらも医療用防護服を身につけて対応。(France2の画面から)
店舗を介さず、ネットで食料品を販売し消費者に届けるシステムも普及してきた。
店舗を介さず、ネットで食料品を販売し消費者に届けるシステムも普及してきた。

外出制限期間中、出会い系サイトの利用者が増加しているというニュース。アプリケーションによっては加入者が40%増というところもあるとか。

ドイツでは外出制限が解除になったものの、すでに第2波が危惧されているという。

また、中部の人口10万人ほどの市イエナでは、20日前から独自の措置として商店、交通機関利用時のマスク着用が義務付けられていて、17日前から感染者が出ていないとか。マスクは一斉配布されたりはしておらず、住民たちは手製のものなどをそれぞれ作ったり地元の商店等で調達して使用。このような事例もあり、ドイツ全土で外出時のマスク着用がこの報道の翌日から義務化されるという報告。

イタリアの外出制限解除は段階的に、緑、オレンジ、赤の3色に分けて進行予定。まずは緑に位置付けされている商店と書店(40m2まで)と農業の分野ではすでに制限が解除になっているが、2段階目のオレンジ色のカテゴリーが5月4日から再開予定。商店と書店(40m2以上)、工場、レストランも対象で、労働組合と合意ができていること、安全対策が取られていることなどが条件。3段階目の赤は、現時点で再開の目処がたっていないもので、劇場、コンサートなどがこれにあたる。また、学校の再開は9月からとなっている。

4月27日(月曜)外出制限42日目

【感128339/死23293(300)】

政府先導で製作したマスクが薬局に入荷して販売開始となったが、薬局2軒に1軒の割合の入荷で、数も少なく即品切れ状態との報道。ただし今後毎週2600万枚が生産供給される予定とのこと。

新型コロナについての相談専用電話AlloCovidがスタート。対応するのはAI(人工知能)で、音声による問診によって、自宅で療養する、かかりつけ医に連絡をする、救急車を呼ぶ、この3つのうちのいずれかの診断がされるというものらしい。

2020年3月の失業者数が+7.1%(246100人)という大幅な増加を記録。それとは別に、外出制限による一時的失業者が現時点で1020万人。こちらについては、政府が給与の84%を補償することがすでに決定している。

今から15年前、2005年のこの日、エアバス社が誇る世界最大の超大型旅客機A380がトゥールーズで初飛行している。当時華々しく報道されたが、2021年での生産中止がすでに決定しており、航空業界、航空機産業が危機に陥っている今日との明暗が報道された。

街の個人経営の書店などは薬局同様、外出制限期間中も開かれているべきだったとする風潮あり。パン屋さんでご近所の書店の本を並べて販売してあげているところもあるという映像が流れた。

今週中に報道されたパスツール研究所の発表に次のようなものがある。

外出制限解除になる5月11日の時点では、フランス人の感染率は5.7パーセント(370万人)という試算で、これは感染拡大が自然にストップすると言われている全体の7割感染というレベルからはほど遠い。

また、感染率は地方によってかなりの開きがあり、イルドフランス(首都圏)では12.3%、グランテストでは11.8%と高く、西部の大西洋岸の地方では2%にも満たないという数字。

感染拡大の図式でいうと、外出制限前の場合、10人の感染者から33人、そして109人と爆発的に増えたが、制限後は、10人→5人→2.5人という状況。

感染者のうち2.6%が入院、0.5%が死亡。女性より男性が、また高齢になるほど重症化のリスクが高くなる傾向だという。

また、今週の『ル・モンド』には、こんな記事もあった。

L’Ecole des Hautes Etudes en sante publique(公衆衛生高等研究院/EHESP)は、厳しい外出制限の実践によって、フランスでは6万人以上の死亡が避けられたことになると発表。制限をせずにウイルスが蔓延していたら、この期間に人口の23%が感染し、67万人の入院が必要になり、14万人が重篤化。蘇生治療用のベッドは10万床(首都圏だけでも3万床)が必要になっていたと試算。実際には、ピーク時の4月8日に蘇生治療を受けていたのは全国で7148人だった。

さて、外出制限7週目に突入する28日火曜。午後3時から首相が議会で5月11日以降の具体的な方策を発表する予定だ。多くの国民がまたテレビ画面に釘付けになるだろう。

最後に、パリの風景がどれくらいゴーストタウン化しているのか、今週日曜午前の様子を動画でご紹介して結びとしたい。

※4/28 19:52 記事の一部を修正。

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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