新型コロナ“戦時下”のパリから ー外出制限5週目のレポートー

火災から1年のノートルダム。マスク姿のカメラマンたち(写真はすべて筆者撮影)

3月17日から始まったフランスの外出制限もすでに5週間が経過した。

4月13日の大統領演説で、制限は5月11日まで。つまりその日から制限が解除になる発表がされたことは前回お伝えした。

今週の報道の中心になっていたのは、これまでのような医療現場の様子よりも、解除後にはどのようなことになるのか、ということ。次の段階への動きが始まったことを感じる1週間になった。

ちなみに、15日付『ル・フィガロ』『ル・モンド』両紙によると、11局が放映した大統領演説を3670万人が視聴。これはフランスが2度目の優勝を遂げたサッカーのワールドカップ決勝のほぼ2倍の数字だという。

例によって、この1週間の推移をレポートしたいと思う。

4月14日(火曜)外出制限29日目

【この日までに確認された累計感染者数103573/累計死亡者数15729(そのうち病院での直近24時間での死者数559)】

数字はフランス公衆衛生局の発表によるもの。

以降、【感○/死○(○)】で表す。

前日の大統領演説では、高齢者の外出制限は継続する方針だと述べられたが、それがいつまで続くことなのか、何歳以上をさすのか、はたまた「差別」にあたるのではないかという疑問の声が続出。(結局、高齢者だけに制限を残すという方針は後に撤回された。)

また、マスク着用が5月11日以降には義務化されるかもしれないという方向で様々な動きが見られた。一般向けのマスクを制作するために、国内90の工場が政府の基準にしたがって稼働開始。さらに自治体単位でも独自に調達、製造に着手しているところが少なくない。

学校の再開については、今後2週間ほどで具体的な方法を決定してゆくと教育相。一斉登校ではなく人数を制限した授業など、地域の状況に即した、しかも段階的な再開になる公算が高い。主眼は、遠隔教育が難しい子供達を救うことにあるようだ。

7月半ばまでフェスティバル等のイベントは中止とする演説内容を受けて、夏恒例のアヴィニヨンの演劇祭の中止が発表された。

4月15日(水曜)外出制限30日目

【感106206/死17167(524)】

パリ、ノートルダム大聖堂の火災から1年。(このことについては記事の結びでも触れる)

火災から1年経ってのドキュメンタリー番組などが多かった今週。4月15日付『ル・モンド』紙には、1年前の火災の時と都市封鎖の現在とを同じアングルで捉えた写真が掲載されていた
火災から1年経ってのドキュメンタリー番組などが多かった今週。4月15日付『ル・モンド』紙には、1年前の火災の時と都市封鎖の現在とを同じアングルで捉えた写真が掲載されていた

国から医療従事者に500〜1500ユーロの臨時報酬を支給する発表。また、警官、税関職員、刑務所の職員、医療従事者の子弟のために出勤している教師らにも最高1000ユーロの報酬。

「アマゾン」の配送センターは5日間閉鎖という司法決定。従業員の安全が確保されていないことが問題になっていた。加えて、扱い品目も生活必需品(食品、薬など)に限る決定。違反した場合には、1日につき100億ユーロの罰金も。

自転車レース、「ツール・ド・フランス」の開催時期変更。6月27日〜7月19日に予定されていた日程が8月29日〜9月20日に。ニースを出発し、パリでゴールという行程の変更はなし。

デンマークで学校が再開された。

アメリカ、トランプ大統領がWHOへの出資を停止する声明。

4月16日(木曜)外出制限31日目

【感108847/死17920(436)】

医療崩壊していたグラン・テスト地方、コルマールの病院が満床状態ではなくなったほか、全国規模で見て、感染して新たに入院する患者数を退院者数が上回ったという報告。

パリ造幣局が医療従事者をはじめとするヒーローたちへの感謝を込めた特別硬貨を発表。売価8ユーロのうち6ユーロはフランス財団へ寄付。

コロナ禍最前線で活躍する人々を象った特別硬貨。足元には20時の拍手のイメージもあしらわれている。(パリ造幣局のサイトから)
コロナ禍最前線で活躍する人々を象った特別硬貨。足元には20時の拍手のイメージもあしらわれている。(パリ造幣局のサイトから)

日本では、緊急事態宣言が全国に拡大される。

4月17日(金曜)外出制限32日目

【感109252/死18681(429)】

艦内での感染者増加から、日曜に急遽帰還した空母「シャルル・ド・ゴール」の乗員と関係者2010人を検査したところ、1081人の感染が確認された。このうち545人には症状があり、24人が入院。空母は1月21日〜4月24日までのミッションで、東地中海、大西洋で演習。途中キプロス、フランスのブレスト、デンマークに寄港していて、クラスター発生の原因を調査中。

外出制限に伴う厳しい取り締まりによって、親、配偶者の最期に立ち会えなかった人たちの体験が報道される。

ドイツでは来週から800m2未満のすべての商店を再開。学校は5月4日からの予定。医療体制は万全で、蘇生治療用11000床が空いている状態だとか。この数字はフランスの通常時の総数を上回っている。

中国が公式発表の感染死者数を1290人上乗せした。

チェルノブイリ近くでの山林火災の報道に続き、アメリカでは、テキサスと南カリフォルニアで複数の竜巻きが起こり、24時間で少なくとも30人の犠牲者が出たという報道。リビアのトリポリで病院が爆撃されるなど紛争は続き、スペインのカナリア諸島には難民船が到着しているというニュースも。

週に1回の買い出しの途中の空。とにかく空気が澄んでいて風景がいつもより数段クリアに見える
週に1回の買い出しの途中の空。とにかく空気が澄んでいて風景がいつもより数段クリアに見える

4月18日(土曜)外出制限33日目

【感111821/死19323(368)】

クルーズ船の寄港をマルセイユ市が拒否。船内での感染は確認されていないが、外出制限中という理由による判断。1800人の旅客のうちフランス人は423人いるが、下船できず。クルージングは1月10日にイタリアの港から始まり、3月16日にオーストラリアのパースに寄港した後は、下船できない状態が続いている。

TGVの運行は通常の6%。5月11日以降は15%、6月は50%、夏には100%の運行予定。5月11日以降、公共交通機関ではマスクが義務化される可能性が高い。

レディガガらが発起人になった「One World : Together At Home」チャリティコンサート開催。ローリングストーンズ、エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオン、アンドレア・ボチェッリ、ランランらアーティストたちのパフォーマンスをはじめ、ビル・ゲイツ、ミシェル・オバマらのメッセージもネット配信された。収益は医療従事者、WHOへ。コンサートのダイジェスト版が、フランス時間の翌日夜、公共放送France 2で放映された。

4月19日(日曜)外出制限34日目

【感112606/死19718(231)】

首相と健康相の会見。5月11日に外出制限が解除になったとしても、「前のように」という状態は相当先のことになると首相が明言。

マスク問題。外出時に一般市民がマスクをつける方向に。自治体によっては、地元の工場、ボランティアに制作してもらい独自にマスクを市民に配布する試みが始まっている。パリ市では、5月なかばまでの間に200万枚の布マスクを配る予定で、70歳以上の高齢者、妊婦、慢性疾患のある市民が優先。

ロワール地方のある工場で作られているマスクは中綿が入った3層構造の布素材。30回の洗濯に耐えるとか(France2の画面から)
ロワール地方のある工場で作られているマスクは中綿が入った3層構造の布素材。30回の洗濯に耐えるとか(France2の画面から)
4月18日付の『ル・フィガロ』紙に掲載されていたマスクの作り方提案。Tシャツやコーヒーのフィルターを利用したアイディアが
4月18日付の『ル・フィガロ』紙に掲載されていたマスクの作り方提案。Tシャツやコーヒーのフィルターを利用したアイディアが

4月20日(月曜)外出制限35日目

【感114657/死20265(450)】

死者数が2万人を超えてしまった。例年のインフルエンザでの死者は14000人ほど、2003年の歴史的酷暑での死者19000人という数字をも上回る犠牲者が出てしまった。また、イタリアではちょうど1週間前、そしてスペインでもすでに2万人を超えていた。

老人ホームでの死者が7752人にのぼるという事態から、全国の老人ホームで家族との面会は禁じられていたが、この日から解禁になった。感染も怖いが、家族に会えない寂しさからくる心身へのダメージが看過できないという判断。ただし、人数の制限や一定の距離をおくという条件つき。例えばバルコニー越しに久々の対面を果たした夫妻の映像などが流れる。フランス人にとって、家族や友人同士では頬にキスしたり抱擁したりするのがごく当たり前の挨拶なので、それができない喪失感というのははかりしれないものがある。

感染拡大第2波の予防として、アコーホテルグループのおよそ300のホテルが、感染者隔離施設として対応準備中というニュース。

海外県のニューカレドニアは本土よりも先に外出制限解除に。4月4日以降新しい感染者の報告はないという。

『ル・フィガロ』紙の論壇として、Le College Culinaire de France(フランス料理会)の中心となる17人のシェフたち(ヤニック・アレノ、ギィ・サヴォア、エリック・フレションらトップシェフ)から大統領に宛てたメッセージが掲載される。外出制限が解除されても当面レストランの営業はできないことになっているが、業界全体が瀕死の状況にあるとし、一刻も早い再開を訴えている。しかも、これを機に将来を見越した新しいガストロノミーのあり方を実践するとして、感染防止のための衛生面、機能面の具体的な措置だけでなく、食材の透明性(生産者、生産方法を明記し、消費者からのアクセスも可能にすることなど)、レストランスタッフの働き方改革なども盛り込んだ先進的な内容になっている。これをもとに、中心人物のひとりアラン・デュカスシェフが木曜日に大統領と面会予定。

カフェもレストランも3月14日から時間が止まっている
カフェもレストランも3月14日から時間が止まっている

さて、パリのノートルダム大聖堂の火災から1年が経った4月15日午後8時のこと。

消防隊の決死の消火活動によって、正面の二つの塔は崩落の危機から救われたが、その塔の内側にある大鐘が1年ぶりに鳴り響いた。

あの火災も衝撃的だったが、1年後の世界がこんなことになっているとは、誰が予想できただろう。

ノートルダムの前に集まったジャーナリストたち。外出制限の取り締まりのために、警官が出動していた。カメラマンらはお互いの間隔をあけて、橋の上に陣取っていた
ノートルダムの前に集まったジャーナリストたち。外出制限の取り締まりのために、警官が出動していた。カメラマンらはお互いの間隔をあけて、橋の上に陣取っていた

2024年の完成を目指した修復も、現場での作業は今のところ中断を余儀なくされているが、そのような状況にあっても鐘は鳴った。

鐘をじかに聴くべく筆者も現場に駆けつけ、その音を記録した。

以前の高らかに歌うようだった音色に比べれば、どこか恐る恐るというものではあったが、パリの空に1年ぶりに響いた鐘の音はしみじみ尊く、希望の命脈がつながっていることをあらためて思い起こさせてくれた。