STATION F 世界最大ベンチャー基地の住人たち(2)

かつての貨物駅を利用したベンチャー基地STATION F(以下写真は筆者撮影)

「起業家と聞くと、私たちはフードを被った20代の若者(男性)、例えば大学をドロップアウトして昼も夜もコンピュータのプログラミングをしているような姿を想像するかもしれない。だが、STATION Fにいる起業家たちは様々なプロフィールを持っている。大多数が30代で女性も多く、世界各地から集ってきている…」

世界最大のベンチャー基地STATION F が稼働してから1年の区切りに発表されたレポートの中にこのような所長の言葉あることはすでにご紹介した。

STATION Fに集うステレオタイプではない起業家の象徴的な例が彼女たちかもしれない。

JIHYUNG KANG(チウン・カン)さんとDANBEE LEE(ダンビー・リー)さん。韓国からやってきた二人の女性は、WISHUPONというアプリケーションの創始者だ。このアプリは、たくさんのオンラインストアのショッピングリストを一つにまとめてパーソナライズできるというもの。

WISHUPONアプリを立ち上げた二人の韓国女性、チウン・カンさん(右)とダンビー・リーさん。
WISHUPONアプリを立ち上げた二人の韓国女性、チウン・カンさん(右)とダンビー・リーさん。

「『ピノキオ』のテーマソングからとったネーミングです。オンラインストアのページを見ているととても多くの時間を費やしています。みなさん自分なりのやり方で、それぞれのページのアイテム情報を保存したりしていますが、前にチェックしたものをもう一度探そうとするととても難しかったりする。それを簡単にできるようにしたのがこのアプリです。しかも、チェックしていたアイテムがセールになったりして値段が変わったら、それを知らせるという機能ももたせています」

終始笑顔で熱く語る二人。かつては母国、韓国でCJという会社に勤務していた。

「大きな会社です。業種は映画などエンターテイメント系、そしてオンラインストアの部門もあります。私はその会社でiPhoneが発売された年に始まったeコマースのプロジェクトに関わっていました」

と、ダンビーさん。この前職の環境、つまりITのスキルを持ち合わせていたことが現在への飛躍に大きく関わっている。そしてそこで一緒に仕事をしていたチウンさんと一緒に2015年にこのアプリケーション開発を始めた。

「スタートアップになってからは常にチャレンジの連続」

と語る二人。

アプリは12000のブランド(オンラインストア)と提携していて、ダウンロード数を74000にまで伸ばした。出資企業として、ロッテとネオウィズゲームという二つの韓国の大企業がついていることも、かなり有望視されているスタートアッパーであることを物語っている。

ではなぜ本国ではなく、フランスのSTATION F に入居することを選んだのか?

「フランスのユーザーが多いことがまず大きな理由です。フランスのマーケットの可能性を感じました」

ユーザーの数は、本国の韓国を筆頭に、フランス、アメリカ、そして日本の順。

「第二に、パリはファッション産業の中心地の一つであること。そして第三にパリのスタートアップのエコシステムが素晴らしいこと。よりダイナミックな交流を通じて、他のスタートアッパーたちと一緒に大きくなってゆける環境が整っています」

二人はパリの他のアクセラレートプログラムをみつけて、ことし3月の1ヶ月間をそこで過ごした。その経験の後、どのようにしたら会社を設立できるのか、ワークショップに参加したりするうちに、フランスを拠点にすることにとても興味を持ち、なんとかフランスで続けられる道を探った。そうしてSTATION Fのファウンダープログラムに応募し、確率およそ9パーセントの狭き門をくぐり抜けた。

「選ばれたことは誇らしいですか?」と問えば

「とっても!」

と声を合わせる二人。

「韓国人として最初の入居者なんです」

入居してひと月半とまだほやほやだが、すでにアプリの充実から先のことも視野にある。

「例えば、ミレニアム世代の若い人達はファッションテイストが似ています。どんな商品が受けるのか、トレンドをウィッシュデータを元に分析したものはブランドにとっても魅力的。私たちのアナライズによってファッション産業をプッシュできる可能性があります。そのためにもウィッシュリストデータでナンバーワンになりたいと思っています」

STATION Fのファウンダープログラムは6か月。果たして数ヶ月後の彼女たちのプロジェクトがどんな風に発展しているのか、乞うご期待。