香取慎吾初個展@ルーブル NAKAMA des ARTS

ルーブルの広々としたスペースを使った初個展(以下写真はすべて筆者撮影)

日本とフランスの友好160周年を記念して、今年7月から来年2月にかけて様々な文化行事が繰り広げられる「ジャポニズム2018」がいよいよ佳境に入っている。

先週は皇太子殿下が来仏。中村獅童、中村七之助主演の歌舞伎公演、石井幹子、明里母娘によるエッフェル塔の光のスペクタクル点灯式、プティパレの「若冲展」にもお出ましになった。

そして今週は「ジャポニズム2018」の広報大使を務める香取慎吾さんが登場。彼のアート作品を一堂に展観するNAKAMA des ARTS展が19日からスタートした。しかも場所はルーブル。ルーブル美術館へ地下から入るエントランスにあたるエリア、Carrousel du Louvre(カルーゼル・デュ・ルーブル)のHall Charles V(シャルル5世ホール)がその会場だ。

香取慎吾さんといえば、日本人なら知らない人はまずいない国民的アイドル。歌手、俳優、タレントとしてマルチな才能を発揮していることは言うまでもないが、ここで私たちは彼のまた別の才能に触れることになる。シャルル5世ホールは、パリの街を防御していた14世紀の城壁を内包するルーブルの歴史を感じさせる特別な場所だが、その広々とした空間に香取さんのほとばしるような感性が溢れている。

一般公開前夜、内覧会のあと会場を日本文化会館に移してレセプションが開かれたが、壇上で彼は開口一番「幸せに溢れかえっています」と、初個展に臨む思いを熱く語った。

カルーゼル・デュ・ルーブルの展覧会場
カルーゼル・デュ・ルーブルの展覧会場
レセプションの壇上でスピーチする香取慎吾さん
レセプションの壇上でスピーチする香取慎吾さん
日仏両国の大使、国際交流基金理事長、そして狂言公演のためにこの日の朝パリに到着した野村萬斎さんも特別に会場に駆けつけ、彼の「イヨー」という掛け声とともに鏡開き
日仏両国の大使、国際交流基金理事長、そして狂言公演のためにこの日の朝パリに到着した野村萬斎さんも特別に会場に駆けつけ、彼の「イヨー」という掛け声とともに鏡開き

「絵を描くことが子供の頃から好きで、特に勉強したわけではないけれど、ずっと描いてきました。描いている以上は人に見て欲しくて、いいねって言って欲しくて描き続けてきました。いつか個展をやりたいと思っていましたが、それがまさかパリで、ルーブルで、一生に一度の“初”個展を開催できることに感謝しています」

会場には、草なぎ剛さん、稲垣吾郎さんの姿もあり、香取さんと初個展の高揚を分かちあった。

記者団のインタビューに答える3人
記者団のインタビューに答える3人

稲垣/今朝到着しまして、そのまま(展覧会場へ)。なんかドキドキしましたね。僕らにしても誇りです。作品によっては彼のアトリエで見たことのあるものもありましたが、美術館の概念を作ったようなルーブル美術館で慎吾の絵を見るとまた違った絵に見えますし。とにかく感激しました。ちょっと興奮している感じです。

草なぎ/本当にすごい。まず作品の数もたくさんあって、ルーブルの広さ、その広いところに自分の作品を置いて全部埋まっていて。どこから入ってもひとつのストーリーになっている。もしかして、ここに来るためにひとつひとつの作品はあったんじゃないか、これでもしかしたら完成した作品もあるのかな、と思ったり。絵のタッチとか、使っている絵の具も様々。同じ人が描いたんじゃないみたいな、どれひとつ取っても同じようなものがないので、いろいろな方が見て、必ず心に引っかかる作品があるんじゃないかと思います。

開放感いっぱいに展示された作品の数々
開放感いっぱいに展示された作品の数々

そもそもこの展覧会開催のきっかけになったのは、草なぎさんの一言だったという逸話も披露。

香取/きっかけになった場面で、僕の絵を急に熱く、「慎吾の絵は素晴らしいんです。たくさんの人に見て欲しいんです」と声を上げてくれたんです。もう30年近くの付き合いで、僕のことをツヨポンがすごく大好きなのは知っている。でもその時の感じが、あんまり今までにないような、ちょっと熱すぎて「どうした?」みたいな。

草なぎ/ちょうど1年くらい前です。僕らが新しい道を歩み始める時。

香取くんの絵は近くで見ていますけれど、小さい時から本当にいろんなところで描くんですよ。スタジオの隅とか。それこそ今回の作品の中でダンボールとかありますけれど、あういうのも、彼は収録の合間とか隅で描いていたりする。悲しい時だったり、楽しい時もそうだし、そういうものが彼から湧き出ている作品なので、何か自然とみんなに見てもらいたいという気持ちになったんですね。

「同じ人が描いたと思えないよう」と草なぎさんが語る通り、あらゆる作風が展開する
「同じ人が描いたと思えないよう」と草なぎさんが語る通り、あらゆる作風が展開する

「どんな時に絵を描くのか?」という質問に彼はこう答える。

香取/元気じゃないときに描くことが多い。元気じゃないからこそ絵に思いをぶつけて、そこで消化して、あーすっきりしたと元気になることもあれば、自分の元気や笑顔が抑えきれないとき、描きたくて描いて、元気がオーバーしちゃっているのを、絵を描くことによって平均値におさめる。いろんなパターンがあります。

「Naketekurukara Waraketekuru」「いのってんの」「その先へ」「一笑懸命」

作品そのもののインパクトだけでなく、添えられたタイトルからも作者の心の襞が伝わってくる。

展覧会のきっかけを作った草なぎさんはこの日とても饒舌。

「吾郎ちゃんには申し訳ないんですけれど、香取慎吾初個展広報大使に(草薙くんを)任命してもいいでしょうか」と、香取さんが会場を沸かせたほど個展の魅力を的確に語る。

「吾郎ちゃんには申し訳ないんですけれど」と、笑いを取る香取さん。
「吾郎ちゃんには申し訳ないんですけれど」と、笑いを取る香取さん。

草なぎ/あなたのアートが僕を饒舌にさせてくれている。

ここまでヴァリエーションが豊富な作家っていないんじゃないですか。印象が定まらない。それがいい。全部が慎吾なのかなと。初めてにして洋服まである。そこまで行っているのはすごいね。あらためてアートの良さ、力強さ、そういうのを感じさせてくれる。

『一笑懸命』 2018 「一生、笑って、苦しんで、楽しんで、汗かいて、涙して」と添え書きがある
『一笑懸命』 2018 「一生、笑って、苦しんで、楽しんで、汗かいて、涙して」と添え書きがある
『Naketekurukara Waraketekuru』 2016
『Naketekurukara Waraketekuru』 2016
『宝箱』 2011 シルク・ドゥ・ソレイユの公演にインスピレーションを得た作品
『宝箱』 2011 シルク・ドゥ・ソレイユの公演にインスピレーションを得た作品
『宝箱』部分
『宝箱』部分
『いのってんの』2013
『いのってんの』2013
『弱き強さ』2018 部分
『弱き強さ』2018 部分

確かに、展覧会で大小さまざま、数々の絵に向き合い、それらを巡ると、この旺盛な作家のエネルギーに包み込まれるような気がする。既成概念に縛られない、とにかく描きたい気持ちにつき動かされて結果したアートは、例えばバスキアのそれを想わせるようでもある。あるいは、10代の早いうちから普通の人とは違うレベルの緊張と興奮がみなぎる毎日を生き、膨大な量のスポットを浴び、それと対を成す影もまた見てきた人ならではの心情の横溢のようにも映る。

「ジャポニズム2018」の広報大使に抜擢された彼はそもそもパリが大好きで、すでに20回近く、仕事よりもむしろプライベートでこの街を訪れている。パリで体感したアートを持ち帰って自分の中で消化して作品に反映させているともいう。

特に好きな場所、作品は、と問えば、こんな答えが返ってきた。

香取/『モナリザ』。

『モナリザ』だけ見に行くことがあります。ファッションも好きなので、パリにくると買い物三昧なのですが、フォーブール・サントノレで買い物をした後、「開いている、今だ!」と、ルーブルのもう最後の時間に入ります。閉館時間が近づくと、どんどん扉が閉まっていくんですよ。「やばっ、間に合わない」と言いながら、こっち行ったら閉まっちゃった、こっちから行こう、と、『モナリザ』までなんとかたどり着いて、一瞬『モナリザ』を見て、「よし、帰ろう」と。

今回の個展はまさにそのルーブルが舞台。10月3日まで開催されている。