2月11日から14日かけて「Taste of Paris」というイベントがグランパレで開催された。あらゆる食のスタンドが集結する見本市という様相だが、目玉はアラン・デュカス、ギィ・サヴォアらを筆頭に、パリの17人のトップシェフ達が一堂に会し、彼らの得意料理を気軽に“はしご”する雰囲気で楽しめるところ。イベントのコンセプトそのものは、2004年にロンドンで始まり、香港、モスクワ、トロント、ローマ、メルボルンなどでも開催されていて、パリでは今年が2度目になる。

会場になったグランパレ入り口
会場になったグランパレ入り口

今回の注目は、17人中2人を日本人シェフが占めていること。昨今活躍著しい在仏日本人シェフたちの代表として、パリのミシュランガイド一つ星のレストラン「KEI」の小林圭シェフ、「PAGES」の手島竜司シェフが参加した。

オープニングに先駆けて、パリの助役ジャン=フランソワ・マルタン氏とふたりが揃っての記者発表があった。マルタン氏は日本とフランス、パリと東京の親密なつながりを強調。歴史や文化的背景はまったく違っても、ガストロノミー(美食)の伝統という絆がどの国や街にも増して深いことを熱く語る。さらに、こうしたビッグイベントを自粛することなく開催し、人々が集うことこそが、テロに屈せず、パリの豊かな日常が続いていることを証明する最たるものだという。

勢揃いした参加シェフたち
勢揃いした参加シェフたち
パリ助役をはさんで、向かって左が小林圭シェフ、右が手島竜司シェフ
パリ助役をはさんで、向かって左が小林圭シェフ、右が手島竜司シェフ

折しも、2月末から3月上旬にかけて、パリの女性市長アンヌ・イダルゴ氏が来日予定。ずっと蜜月状態にあったパリへの日本人観光客が、昨年激減したことを受けてのラブコールであると同時に、排ガス対策やオリンピック招致で一歩先ゆく東京に学ぶことも目的にある。

さて、食に話題を戻そう。シェフたちの各スタンドでは、レストランの人気メニューから3、4品をセレクトして小さいポーションで提供する。「パリでは世界中の国々から一番いい食材が手に入る。野菜でも魚でもとにかくフレッシュなものを」と、グローバルな視野にたつ小林シェフのメニューは「オマールのラビオリ」、「トリュフのニョッキとイベリコハム」、「柑橘類のスムージー」。今年は品薄で価格が高騰しているトリュフだが、これを惜しげなく使い、お客さんの目の前でスライスしてえも言われぬ香りを漂わせているスタンドにたちまち行列ができた。

トリュフとイベリコハムを添えたニョッキ
トリュフとイベリコハムを添えたニョッキ
早々に行列のできた「KEI」のスタンド
早々に行列のできた「KEI」のスタンド

手島シェフは、2週間前に発表になったミシュランガイドで、今年あらたに星を獲得した時の人。イベント参加のオファーはそれ以前からすすんでいた話で、一万二千食という膨大な数をこなせるかどうかではじめは躊躇したそうだが、「わたしがここまで来られたのは、いままでの日本人シェフたちの活躍のおかげ。恩返しができればいいと思っています」と、この場に臨んだ。

食材は作り手や漁師の仕事の現場を訪ね歩き、納得したものだけを厳選するのが手島シェフの身上。今回の目玉は「尾崎牛」を使った料理で、彼が得意とする炭火焼の手法によって旨味が凝縮され、スモークした香りも絶妙の肉を海草とともに食すというものだ。「牛が食べてきたものを取り合わせています」というそのこころは、「尾崎牛」の独特な飼育方法を暗示するもの。「飼料に海草の粉末を入れることで、血管の強い牛に育つんですよ」と、宮崎からはるばる駆けつけて来ていた牛の育ての親、尾崎宗春氏も会場で舌鼓をうっていた。

「尾崎牛」に海草を取り合わせた一品
「尾崎牛」に海草を取り合わせた一品
「美味しいでしょう?」とご満悦の尾崎宗春氏
「美味しいでしょう?」とご満悦の尾崎宗春氏

初日は平日の夜にも関わらず、21時を回ってもスタンドの行列は途切れない。ひと皿6〜12ユーロ(およそ760円〜1500円)という価格を安いととるか高いととるかは置くとして、会場には思いのほか若い人の姿が多い。「美食はパリの力そのもの」。助役のマルタン氏の言葉を象徴するように、伝統は新しい人材やアイディアを取り込みながら脈々と受け継がれてゆく勢いだ。

一流シェフを間近で見られるのもイベントの醍醐味
一流シェフを間近で見られるのもイベントの醍醐味
食材の即売や試食もある
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90歳を迎えたフレンチの重鎮ポール・ボキューズの人形と記念写真
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シャンパーニュは「ローラン・ペリエ」。日本びいきのプレス、アンヌ=ローさん
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アフターファイブに立ち寄る若い人たちが目立った
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