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J3福島・田坂和昭監督インタビュー(1) 改善を進めた「日本サッカー界未開発」の分野

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

J1、J2に続き、来週末にはJ3が開幕する。福島ユナイテッドは11日、ホームにザスパクサツ群馬を迎える。福島で2年目のシーズンに、田坂和昭監督はどんな思いで臨むのか。福島ユナイテッドのご厚意により、クラブ発行の「FUFC PRESS」でのインタビューの“ロングバージョン”を、ここに掲載する。

多くを学んだ福島初年度

――就任初年度、どんな手応えがありましたか。

「福島だからこそ学べることがありました。J3には練習場が定まっていないチームもあると聞いていましたが、経験するのは初めてでした。いきなり雪も降ったし、人口芝では雪かきができないなど、驚くこともありました。体育館で練習するとフットサルになり、違う競技になるとケガのリスクも高まります。今は屋根付きの練習場を使わせてもらっていますが、コートの大きさが変わると負荷のかけ方も変わってきます。

 でも去年の経験で勉強させてもらったので、今年は計算が立ちます。フルピッチでやるよりコンディションは落ちるかもしれませんが、小さいコートなりの負荷のかけ方をしっかり学びました」

――クラブや街についても、いろいろ知ることができたかと思います。

「それについても実際に体感しましたし、私も今までの経験をクラブに伝えました。他の県や地域では何年も前にクリアできているような問題もまだ残っていますが、だいぶ変わったと思います。Jリーグは地域密着を目指しており、実際にクラブだけで成り立つのは難しいんです。J1のビッグクラブでも、行政と連携しなければ解消できない問題が多々あります。逆に行政に協力してもらうことで地域が活性化されます。アウェイチームのサポーターが来てくれたり、他県からも注目してもらえたりと、地域にいろいろな財産が生まれてきます。まだまだ私たちにできることがありますし、地域にもさらに変わっていける土壌があると感じます」

――ピッチ上では、披露したいものはどの程度出せましたか。

「就任した時点で、前任のクリ(栗原圭介・前監督)がしっかりつないで崩していくというコンセプトを浸透させてくれていました。それをどう変化させるか取り組んでいく中で、良い面も悪い面も勉強させてもらい、選手の意識も徐々にではあるものの変わっていきました。意識が変われば行動やプレーが変わってきます。夏過ぎにはレンタル加入した選手も含めて、チーム内で競争心も高くなり、切磋琢磨した成果が数字や結果に出てきたという感触を得ました」

岐阜まで「通学」して自ら勉強

――意識を変えるのは、簡単ではないと思います。

「まず自分自身が変わらなければいけないと思い、メンタルトレーニングの勉強もしました。以前に福島大学にいらした白石豊先生にお会いして、岐阜の朝日大学での受講を快諾していただき、1カ月に1度ほどのペースで通いました。オフの日に朝から夕方まで、学生と一緒に勉強しました。福島市にお住まいで、エアレースで世界チャンピオンになった室屋義秀さんも5、6年前から白石先生の下で学んでいたという縁で、3人で食事をさせてもらい、いろいろな話を聞かせてもらいました。自分で言うのもなんですが、去年1年間でこれまでにないほど、精神的に変わったというか、視野が広がったと感じています」

――メンタル面の改善の必要性は、シーズン中にも指摘されていました。

「実はサッカー界では、指導者ライセンスを取る講習でもメンタル面の講義はあまりないんです。選手時代の経験や指導者になってからの感覚で、根性論や最近流行りの選手と同じ目線など、それぞれの考えで進めることが多いように思います。ビジネス界ではリーダーシップ論や意思の疎通の仕方などいろいろなものが取りざたされ、体操や水泳など他のスポーツ、特に個人競技でもメンタル面の研究や選手の勉強も積極的に行われています。私もそういうことを学びつつ、一方で今までやってきたものを捨てながら、ユナイテッドに合う新しいものを、選手に伝えていきました」

――選手たちは1年間で随分変わりましたか。

「顔つきからして違います。目を見て話せなかった選手がしっかり顔を上げられるようになったし、話す際に目が定まらなかった選手が非常に落ち着いて話せるようになりました。良い点と悪い点を自ら理路整然と話せるようになるなど、本当に大人になりました。

先制されても落ち込まなくなったのも、変化の顕著な例でしょう。シーズン前半戦では先制しても恐れが出てきて、追いつかれたり逆転されたりすることがありました。今は100%ではないかもしれませんが、非常に気持ちが落ち着つき、どっしり構えるようになってきました」

(2)へ続く。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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