踏切道改良促進法対象外の私道踏切は3,725カ所、勝手踏切は約1万9,000カ所 - 国会で明らかに

踏切道改良促進法の対象は「公道」の踏切だけ(写真:アフロ)

踏切事故が後を絶ちません。国土交通省が発表した最新のデータによると、平成26年度の踏切事故総数は248件です。踏切事故による死傷者数は211人。死亡者数は92人。平均して、3日間のうち2日は踏切事故が発生し、そのほとんどでケガ人がいます。3日間で1人が踏切事故で亡くなっています。

踏切事故を減らす最良の策は、踏切そのものを減らすことです。判りやすいですね。そして、踏切の廃止や改良、立体交差化などの施策を推進する法律が“踏切道改良促進法”です。簡単に言うと「鉄道事業者などが踏切の安全対策をする場合、国が補助金を出しますよ」という制度です。

しかし、この法案には重大な欠陥があります。対象となる踏切は“公道”の踏切だけ。“私道”の踏切は対象外です。本当に危険な踏切を改良できない場合があります。

踏切道の定義

“踏切道改良促進法”の第二条で踏切が定義されています。

第二条  この法律で「踏切道」とは、鉄道(新設軌道を含む。以下同じ。)と道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)による道路とが交差している場合における踏切道をいう。

出典:踏切道改良促進法

「道路法が定めた道路を対象としますよ」となっています。そして道路法は、第三条で対象となる道路を定めています。

第三条  道路の種類は、左に掲げるものとする。

一  高速自動車国道

二  一般国道

三  都道府県道

四  市町村道

出典:道路法

高速道路は民営化されました。それ以外は自治体が管理する道路ですね。これらは路線番号が付けられて、しかるべく管理されています。道路管理台帳は役所で閲覧できます。東京都大田区のように、ホームページで閲覧できる自治体もあります。

上記のように、道路法は“私道”などを含みません。自治体の道路管理台帳では“認定外道路”と表記されています。

私道は、公道として指定されなかった私有地の道や細い道などです。たとえば、建築基準法第四二条第2項に示された道です。建築基準法では、建物を建てる場合は幅4メートル以上の道路に接した土地が条件と定められています。しかし「昔ながらの細い道しか使えない場合、便宜上の道路としましょう」という例外規定があります。“2項道路”と呼ばれています。

このような、道路法が道と認めていない私道の踏切は、“踏切道改良促進法”の対象外です。

そもそも、踏切の存在自体が法律の例外規定

国土交通省の“鉄道に関する技術上の基準を定める省令”では、「鉄道と道路は平面交差してはならない」と定められています。したがって、新たに鉄道線路を作るときは踏切を作ってはいけません。そして、省令以前にできた踏切については「ただし、やむを得ない場合を除く」という例外規定に含まれています。

踏切道改良促進法は、原則として存在しないことになっている踏切を「実際問題として踏切があるから改良しよう」という法律です。当時としては画期的な法律だったと思います。しかし、前述のように“私道”が対象外、という欠陥があります。詳しくは私が2013年に書いた記事をご参照ください。

杉山淳一の時事日想:なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前が - ITmedia ビジネスオンライン

対象外の踏切数が国会で明らかになった

“踏切道改良促進法”は5年ごとに見直しが行われています。今年はその節目にあたり、3月15日に国会の国土交通委員会で議論されました。

そのなかで、民主党の津村啓介議員が“私道踏切”問題を質問しました。国土交通省に対し、“踏切道改良促進法”は私道踏切が含まれていないと指摘し、実体を問いただしています。

その内容は動画で閲覧できます。後日、議事録も公開されるようです。

衆議院インターネット審議中継(国土交通委員会)

国土交通委員会で津村議員が示した図をお借りしました
国土交通委員会で津村議員が示した図をお借りしました

踏切道改良促進法の施行以降、踏切と踏切事故は減少しています。しかし、近年は踏切道の減り方が落ち着いています。

津村議員と国土交通省のやりとりで、驚くべき数字が明らかになっています。

全国に踏切は33,528カ所あります。そのうち、道路法の道路以外と交差をしている踏切道は3,725カ所もあります。その内訳は、第1種(警報器と遮断器がある)が1,975カ所、第3種(警報器あり遮断器なし)が221カ所。第4種(警報器なし遮断器なし)が1,529カ所とのことでした。

つまり、全国の踏切のうち1割は“踏切道改良促進法”の対象外となっていました。とくに第4種については、総数2,917カ所のうち、半数以上が対象外です。遮断器もない、警報器もない、もっとも危険な踏切の半分は、この法律では解消されません。

さらに、勝手踏切の数字も明らかになりました。“勝手踏切”とは、鉄道線路沿線の人々が、踏切ではないところを勝手に横断する場所です。鉄道営業法三七条では、鉄道敷地にみだりに入る者は10円以下の罰金と定められています。しかし、線路の向こうに畑があるとか、住宅地から学校や商店街への近道などで、踏切ではないところを渡る人がいます。2015年5月には、72歳の男性と高校2年の女子生徒が巡回中の警察署員に捕まり、書類送検されました

線路の横断が実体化した場所は、勝手に線路内に踏み板が置かれたり、柵が壊されたりしているようです。この“勝手踏切”の実体について、国土交通省が鉄道事業者に確認したところ、なんと全国に約19,000カ所もあったそうです。公式に認められた踏切道の5割を超える数です。

“勝手踏切”は柵の強化など立ち入り制限策も必要です。しかし、渡りたいという実体があるなら、いっそ、踏切として“格上げ”し、安全に渡れるようにすべきです。しかし、これも“踏切道改良促進法”は適用されません。

国土交通大臣は「基本的には、事故防止の観点から、柵や立入禁止看板の設置、近接踏切道への迂回路を確保することなどにより、極力横断の実態をなくしていく」と応えました。また、原則として踏切の新設は認められないとしながらも、過去には例外的に6カ所の踏切を新設した事例があるとのことです。本当に線路を渡る必要があるなら、個別に対応していくそうです。

パブリックコメントで踏切道の改良を後押ししましょう

奇しくも国会審議が行われた3月15日は、2005年に東武鉄道の竹ノ塚駅で重大な踏切事故があった日です。手動式踏切の誤操作によって2名死亡、2名負傷という大事故でした。この事故を教訓に、東武鉄道の手動式踏切はすべて自動化され、竹の塚踏切は緊急対策として拡幅や歩道が設置されました。国土交通省も全国の踏切を総点検し踏切対策を強化しました。また、立体交差化について、従来は国や県の優先順位で決められていました。この事故をきっかけに区が主導できるようにあらためられています。

これらの施策も“踏切道改良促進法”の枠組みで行われています。同法の施行後、踏切も踏切事故も減少しています。しかし、私道を除外している限り、踏切も踏切事故もゼロになりません。私道の踏切を改良したり、統合して大きな踏切を1つ作ろう、という施策に対して、国が支援できません。

“踏切道改良促進法”は5年ごとに見直しが行われます。ぜひ、次の改正では、私道踏切の認可と踏切新設の柔軟化について盛り込んでほしいと思います。

なお、国土交通省は3月15日より「踏切道改良促進法等の一部を改正する法律案に係る関係政令・関係省令(案)」のパブリックコメントを募集しています。関係政令は3月24日まで。関係省令は3月28日までです。

報道発表資料:「踏切道改良促進法等の一部を改正する法律案に係る関係政令・関係省令(案)」に関するパブリックコメントについて - 国土交通省

踏切事故ゼロを目指して、私たち国民にもできることがあります。この問題に関心を持っていただけたなら、ぜひ、パブリックコメントに参加しましょう。