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前哨戦KO勝ちのデービスとR・ガルシア戦の行方は 全米ボクシング記者協会長が斬る

杉浦大介スポーツライター
Amanda Westcott/SHOWTIME

1月7日 ワシントンDC

キャピタル・ワン・アリーナ

WBA世界ライト級タイトル戦

3階級制覇王者

ジャーボンテイ・“タンク”・デービス(アメリカ/28歳/28-0, 26KOs)

9回13秒TKO

WBA世界スーパーフェザー級王者

エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国/31歳/16-1-3NCs, 10KOs)

 2023年最初の注目ファイトは現役屈指のパンチャー、“タンク”・デービスが改めて強さを見せる舞台となった。

 故郷ボルチモアから程近いワシントンDCに有料入場者19731人(チケットはソールドアウト)という大観衆を集めて行われた一戦。昨年は強豪を連破して波に乗るガルシアも落ち着いたアウトボクシングを展開するが、パワー、スピードで勝るデービスは徐々にペースを上げていく。8回終盤、デービスは強烈な左でガルシアに致命的なダメージを与え、このパンチで「自分がどこにいるかわからなくなった」という挑戦者はインターバル中に棄権した。

 保持するタイトルの4度目の防衛に成功したデービス。その強さはどこにあるのか。ここで危険な前哨戦をクリアし、4月に予定されるライアン・ガルシアとのスーパーファイトは本当に実現するのか。試合後、 全米ボクシング記者協会(BWAA)のプレジデントを務めるジョセフ・サントリキート氏に意見を求めた。

タイミングのいいパワーパンチの効果

 今回の試合で“タンク”・デービスは再び支配的な強さを証明したと言って良いでしょう。特にそのパワーはやはり脅威。実力者だった1階級下の王者ガルシアを最後は明白に下すことで、パンチ力を軸とした総合力の高さも見せてくれました。

 今戦の前にはリング外のトラブルで物議を醸しましたが、それらがリング上でのパフォーマンスに影響させなかったことも評価されて然るべきです。

 KOの瞬間まで、試合は接戦だったと思いました。ガルシアも優れたボクサーであり、ジャブを上手に使い、上質なアウトボクシングをしていました。流れが変わり始めたのは5、6ラウンドくらいでしょうか。中盤を迎えた頃、“タンク”のパワーがより大きな効果を発揮し始めたのです。ガルシアは次第に序盤のように相手のパワーパンチをやり過ごせなくなっていきました。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 “タンク”にとって、タイミングのいいパワーパンチが重要な武器になっています。そのパワーゆえ、相手を警戒させ、クリーンヒットした際の効果もちろん抜群。“タンク”はややスロースターター気味ですが、強烈なパンチを試合のどこかでタイミングよく決め、相手に決定的なダメージを与えることができるのです。

人気者ライアン・ガルシアとのメガファイトへの障壁

 私は“タンク”の実力を非常に高く評価しており、彼が負けるのはしばらく先になるんじゃないかとすら思っています。彼を負かすボクサーがいるとして、それは現在まだ10歳くらいの少年なのかもしれません笑(=それだけ長期間負けないのでは、という意味)。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 こうして“タンク”・デービスが前哨戦をクリアしたことで、ボクシング界の興味はデービス対ライアン・ガルシア(アメリカ)戦に映っていきます。

 このビッグファイトはすでに「4月開催で内定」と伝えられていますが、私は依然として疑いの目で見ています。ご存知の通り、“タンク”には来月、2020年に起こしたひき逃げ事件の裁判が待ち受けています。すべてはその結果次第。現時点で、まだ自信を持ってライアン・ガルシア戦を楽しみにはできていません。

 多くのボクシングファンが待望する一戦が予定通り、4月に実現したら?私は“タンク”が破壊的な形で勝つと思っています。

 個人的な意見ですが、“タンク”は今回のエクトル・ガルシア戦よりも容易にライアン・ガルシアに勝つでしょう。デービスのパワーはそれだけ驚異的なものがありますし、スタイル的にもより好戦的なライアン・ガルシアは打ち合いを望み、それは“タンク”が好む土俵でもあるからです。

BWAAのジョセフ・サントリキート会長 写真・本人提供 
BWAAのジョセフ・サントリキート会長 写真・本人提供 

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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