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井上尚弥、カシメロとの統一戦の行方は ショータイム重役が語るノニト・ドネアの今後

杉浦大介スポーツライター
Esther Lin/SHOWTIME

12月11日 カリフォルニア州カーソン 

ディグニティー・ヘルス・スポーツ・パーク

WBC世界バンタム級タイトル戦

王者

ノニト・ドネア(フィリピン/38歳/41勝(27KO)6敗)

12回戦

暫定王者

レイマート・ガバリョ(フィリピン/25歳/21戦全勝(18KO))

 ドネアがカリフォルニアで暫定王者ガバリョと指名戦を行うことが発表された。四十路を前に依然としてバンタム級の中心人物であり続けるフィリピンの英雄は、今後、どこに向かおうとしているのか。

 5月のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)戦に続き、ドネア対ガバリョ戦を放送する米プレミアケーブル局ショータイム(Showtime)のスポーツ部トップ、スティーブン・エスピノーザにその答えを求めた。

 ドネアの目標はあくまで統一戦実現

 ドネアの息の長さには私も驚かされてきました。もう7、8年も前、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)に敗れたあたりから、多くの人々が彼を見限ろうとしてきました。それにもかかわらず、彼はボクシングに対する献身的な姿勢を保ち、エリートレベルの能力を維持してきたのです。ガバリョ戦までに39歳になりますが、まだまだ十分に力を保っていると私も見ています。

 今のドネアの目標はバンタム級の王座を統一すること。私たちも同じ目標に向かっています。ただ、今回の相手のガバリョは良い選手。ドネアにとって統一戦を実現させるためのステップになる指名戦ですが、単なる“調整試合”ではなく、ハイレベルの攻防が展開されることでしょう。

 近年のショータイムはドネア、ジョンリール・カシメロ(フィリピン)、リゴンドーといった多くのバンタム級選手の試合を放送してきました。ショータイムの方から特定の階級に注目し、エネルギーを注ぐことがあれば、逆に階級自体が自然と私たちの方に引き寄せられてくることもあります。私たちは1年ほど前、バンタム級で多くの好ファイトが組めることに気づいたのです。

 今後、カシメロがどんな方向に向かっていくかはわかりませんが、バンタム級にはエキサイティングな選手が多く、依然として好ファイトシリーズが期待できます。この階級のタレントたちを起用するのに高額報酬が必要なわけではなく、プロモーターからの拘束も少ないので、フレキシブルに試合が組めるのが大きいのは事実です。階級トップ6の選手をどう組み合わせても興味深い戦いになりますし、マッチメイクは比較的容易です。

 カシメロ戦の再セットはあり得るのか

 ドネアはリチャード・シェイファーが中心になって生み出された新メディア&プロモーション会社、プロベラムの傘下になりました。シェイファーからは、新しい会社の目的は「プロモーターの分け隔てなく好ファイトを生み出すこと」だと聞いています。だとすれば、今後も私たちとのビジネスには何の支障もないはず。その一方で、キャリアの現時点でのドネアの目標が、”ショータイムとの独占契約”でないのは理解しているつもりです。

 今の彼の頭には最大の試合を実現させることしかありません。統一戦が決まったとして、その舞台がアメリカであっても、日本であっても、もちろん私たちも興味を持つでしょう。ただ、その実現のためには、カネロがやっているようにプラットフォームを変える必要性が出てくるのかもしれません。私たちはドネアを高く買っており、試合の放映も常に望んでいますが、かといって彼の統一戦の妨げになるつもりはありません。

2011年以降、Showtimeスポーツ部のトップを務めるエスピノーザ。統一戦を熱望するドネアの希望に理解を示している 撮影・杉浦大介
2011年以降、Showtimeスポーツ部のトップを務めるエスピノーザ。統一戦を熱望するドネアの希望に理解を示している 撮影・杉浦大介

 一度は頓挫したドネア対カシメロの統一戦の再燃の可能性?8月の試合が流れた関係で、両陣営の間には激しい敵対心が存在します。それ以外のことも含め、複数の障害がありますが、選手同士が互いに好きではないからという理由で諦めてしまっていたら、もう組める試合などなくなってしまいます。

 試合を成立させるのに、友情やリスペクトは必要ありません。両者の間ではすでに契約が交わされており、報酬、待遇などを変える必要はないのでしょう。そう考えていくと、まだチャンスはあるのかもしれません。

 ただ、薬物検査に関してはドネアは非常に厳格な姿勢を貫いています。そこで歩み寄りがなされず、ドネアの望む形にならないのだとしたら、試合挙行は非常に難しいと言わざるを得ません。逆に言えば、薬物検査の件さえ両陣営が納得する形になれば、再燃は考えられると思います。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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