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「クレイジーなシーズンを過ごしている」地元紙記者が語る八村塁とウィザーズの今後

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 八村塁が所属するワシントン・ウィザーズにとって、2020〜21シーズンは波乱万丈のシーズンになっている。1月下旬、チーム内に新型コロナウイルスによるクラスターが発生し、6試合が延期。約2週間もシーズンが中断するという異常事態になった。

 オフにスーパースターのラッセル・ウェストブルックをトレードで獲得していたこともあって、開幕前はプレーオフ進出を期待する声も少なくなかったものの、こんな状態ではチーム作りが順調に進むはずもない。案の定、最初の15戦中12敗と低迷。厳しい状況下で、得点王争いではリーグ1位のブラッドリー・ビールがシーズン中にトレードされるのではないかという噂話に取り巻かれ続けている。

 ただ、離脱者が戻るとともにチーム状態は徐々に向上し、2月20日まで今季初の4連勝。プレーイン・ゲームに進出できる10位までは1.5ゲーム差に過ぎず、今後への期待感も少しずつ膨らんできている。

 このようにアップダウンが激しかったウィザーズの前半戦を、現地メディアはどう見ているのか。昨季途中よりワシントンポスト紙のウィザーズ番記者になった女性ライター、エバ・ウォーレスに意見を求めてみた。

 ウォーレス記者が八村塁にフォーカスして語った前編は以下

 八村塁が成長したポイントを番記者が語る「チームの未来を担う選手」

一筋縄ではいかないパンデミック下のシーズン

 ウィザーズはとても奇妙なシーズンを過ごしています。新型コロナウイルスの安全衛生プロトコルによって一時的にシーズン中断を余儀なくされ、チーム状態をめちゃくちゃにされてしまいました。

 パンデミックには多くのチームが影響を受けているとはいえ、この件に関しては「単なる言い訳」とはとても言えません。ウィザーズはプロトコルの影響を受ける前と受けた後ではほとんど別のチームになったといっても大袈裟ではなく、クレイジーな日々を経験していると思います。

 あの件があった直後、チームの目標は「これ以上、ひどい状態にしないこと」でした。スコット・ブルックスHCは依然としてプレーオフ進出が目標と言い続けていて、今が全盛期のブラッドリー・ビールのような選手がいるのであれば、それは当然でしょう。

 ただ、まだポストシーズンの圏内からは遠くはないとはいえ、チーム内に問題点は数多く、プレーオフ進出が有望なチームには見えませんでした。特にディフェンスが弱点になっており、ウェストブルックが新たな軸になったばかりのオフェンスも不安定。楽観的になるのは難しかったのが現状です。

 その一方で、ボストン・セルティックス戦、ヒューストン・ロケッツ戦では戦力がうまく噛み合ったときの強さも見せてくれました。オフェンスは不安定とは言いましたが、好調時には大量得点が挙げられるだけの力はあります。

ブラッドリー・ビールの行方は

 今季のイースタン・カンファレンスは大混戦です。得点力でディフェンス難をカバーするというチームカラー通りの試合ができれば、希望が消えたわけではありません。例年は8位までがプレーオフ圏内ですが、今季は10位以内に入ればプレーイン・ゲームに出場できるのもウィザーズには好材料。もちろん容易ではないですが、そこまで辿り着くチャンスはあるのではないかと思っています。

 噂になっているビールのトレードが今季中のどこかで起こるか、私にはわかりません。開幕前には長年のフランチャイズ・プレーヤーだったジョン・ウォールがウェストブルックとの交換で放出されたのを見ても、何が起こっても不思議はないのは事実です。

 ビールはウィザーズのフロントが即座の勝利を目指して本腰を入れることを望んでおり、同時に何らかの変化を模索することを求めています。ウィザーズはもうしばらくディフェンスが弱点になっており、今季もそれは同様。その点に関してビールはアンハッピーでしょうし、ビールが「このチームは適切な方向に向かっていない」と結論づけたとすれば、次のオフシーズンまでに何か大きな動きが起こるかもしれません。

 ただ、現時点ではビールはトレードを希望していないですし、チーム側もそれは望んでいません。来オフまでに話は変わるかもしれないですが、これまでに耳にしたいろいろな話を総合する限り、ビールが今後もチームに残り続けても私は驚きません。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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