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中谷正義「ロペスに負けたままでは終われない」 ベルデホ戦直前インタビュー

杉浦大介スポーツライター
写真 杉浦大介

12月12日 ラスベガス MGMグランド カンファレンス・センター

ライト級10回戦

フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ/27歳/27勝(17KO)1敗

元OPBF東洋太平洋ライト級王者

中谷正義(帝拳/31歳/18勝(12KO)1敗)

5回KO勝利宣言の意図

ーー前日計量を無事にパスしました。現在のコンディションはいかがですか?

中谷正義(以下、MN) : 今回は減量もそこまできつくなかったんで、計量が終わった後、けっこう食べれて、調子はいいです。

ーー尾川堅一(帝拳)選手、伊藤雅雪(横浜光)選手に教えてもらった減量法が参考になったとツイッターに書かれてましたね。

MN : 塩分カット、あれすごいですね。今まで計量当日は立つのもやっとだったんですけど、今回は300gアンダーくらいだったので、計量前にオートミールを食べれる余裕がありました。

ーー計量後は何を食べたんですか

MN : 帝拳ジムのサポートの方に用意してもらったスープを飲みました。まずは水とスープです。

ーー昨年6月に行ったテオフィモ・ロペス(アメリカ)戦後、アメリカでの試合で学んだことをブログにも書かれていました。当時の経験は今回、役立っていますか?

MN : 日本では計量の2、3日前は家と練習場の往復ですけど、こっちに来たら写真の撮影だったり取材だったり、減量の厳しい時期にいろいろとやることがあることを前回で経験できました。計量までにもう少し余裕のあるコンディションを作っておくことが大切。それを学んでいたので、移動とか、(イベントの)スケジュールをこなすのも苦にならずにできたと思います。

ーー計量でベルデホにも対面しましたが、相手の印象は?

MN : 顔色とか、目つきとかも、元気そうで、調子は良さそうでした。フレームは小さいですけどそのぶん筋肉はありますし、パワフルな選手だと思います。どういう風なパンチを打つんだろうとか想像しますけど、ぱっと見ただけなんで、あとは試合やってみないとわからないという感じです。

ーー50/50の好カードと見られていますが、ESPNのインタビューでは「5回でKOする」と宣言していましたね。

MN : アメリカにまた来るためには、ただしょうもない試合をして勝つよりも、インパクトのある勝ち方の方が次につながる。そういう試合にしたいなと思います。

テオフィモ・ロペス戦で学んだこと、感じたこと

ーー去年のロペス戦は改めて見てもほぼ互角に見えましたけど、どう振り返りますか?

MN : うーん、接戦は接戦ですけど、ポイントになるパンチが僕の方になかったので、ラウンドを通して見たらやはりロペスかなと。どっちもそんなにパンチはもらってないし、当ててもいないですけど、見栄えのあるパンチはロペスの方が打っていました。そういう戦い方をしないと、こっちでは勝ちにくいのかなと思いました。

ーーそういった経験が今回のKO宣言に繋がったのかなとも感じました。

MN : そうですね。判定はどうなるのかわからないので怖いです。

ーーロペス戦の話に戻ると、ボディを少し効かせた場面もありましたよね。

MN : 多少、効いたかもしれないですけど、あとでテレビで見たらちょっと嫌がっているかなっていうくらいでしたね。だからそこまで中には入っていなかったのかもしれないです。表情には出なかったので、そういうところも相手がうまかったのかなと。

ーー10月、そのロペスがワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に勝ったのには驚かされましたか?

MN : 僕はロペスが負けるかなと思っていました。あの試合ではロマチェンコもちょっとおかしかったですけど、自分としてはやはりロペスが勝ってくれた方が嬉しいのは事実です。自分が負けた選手が活躍すると、自分の評価が上がるのにも繋がりますからね。

ーーボクシングに3段論法はないとは言いますが、自身が接戦を繰り広げた相手が現役最強の1人と目された選手を攻略したことで、自信を得た部分もあるのでは?

MN : 自信はそんなに変わらないです。あれはロペスだからできたこと。僕がロマチェンコに勝てるかっていったらまた話は変わってきます。ただ、日本でも海外でもそんなにボクシングに差はないなっていうのは感じました。

ーー2戦続けて世界的な強豪が相手とはいえ、今回も負けたら2連敗。後がない状態で迎える試合という気持ちはありますか?

MN : 絶対勝つっていう気持ちでは戦いますけど、勝負の世界なんで(危険は)避けられないですよね。負けることが怖い気持ちもあります。それでもチャレンジしないと勝利は掴めないんで、その恐怖を乗り越えて勝っていきたいなと思います。

Photo By Mikey Williams/Top Rank
Photo By Mikey Williams/Top Rank

挑戦し続ける人生にしたい

ーーロペス戦後に一度は引退して、今回は復帰戦でもあります。復帰を決意するまでの気持ちの変化はどういったものだったのでしょう?

MN : 引退したボクサーはみんな経験することでしょうけど、ボクシングから一度離れて、次、何をするかというのをよく考えました。ボクサーの自分と、引退して新たに生活する自分をずっと切り替えられずにいたんです。そこで近大の先輩・石田順裕さん(元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者)にお会いして、ボクシングを長い間やられた石田さんからは「まだまだチャンスはあるよ。30で辞めるのも、35、36、37で辞めるのも、そんなに変わらないぞ」と言われたんです。

ーーそれが大きな一言だったんですね。

MN : 30歳がいい節目だったからそれを勝手に辞め時にしていたんですけど、石田さんのそういう一言が僕の中で大きくなっていきました。あと5、6、7年とボクシングをやって、もっと大きい舞台にチャレンジしていった方が自分の人生にとってプラスになるかなと思ったんです。あと何回チャンスが来るかわからないですけど、チャレンジしていく人生にしていきたいなと考えて、それで復帰しました。

ーー話を聞いていて、中谷選手は「自分にはボクシングしかない」といったこだわりがあるタイプではなさそうですね。

MN : こだわりは全然ないですね(笑)。その一方で、ボクシングしかないとは思っています。15歳くらいからボクシングをやってきて、15年かけて培ってきたものがあって、やっとファイトマネーも大きくなってきました。好き、嫌いは別にして、自分が長くやり続けてきて、形になったのがボクシング。他の仕事でこれくらい稼げるものがあれば、ボクシングは選んでなかったと思うことはあります。ただ、すぐに今くらい稼げる仕事が他にあるかといったら絶対にないですよね。仕事として本気でやっているし、ボクシングには誰よりも真剣に向き合っていると思います。

ーー好きなボクサーは誰ですか?

MN : バーナード・ホプキンス(アメリカ)です。ちょっと僕とはスタイルは違いますけど、ホプキンスは渋いですね。結構、おっさんになってもボクシングやっていたじゃないですか。ああいう風になれたらいいですよ。僕もやはり僕にしかできないようなことをやっていけたらなと思います。

ーーベルデホに勝てば新たな道が開ますが、今後、何を成し遂げたいですか。

MN : やっぱりチャンピオンのベルトは欲しいです。そして、ロペスとはリマッチして勝ちたいです。負けたままでは終われないですし、ロペスに勝てば実質、(ライト級で)僕が一番になれますからね。

Photo By Mikey Williams/Top Rank
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スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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