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井上尚弥がビッグスターになるためには? ボブ・アラム氏が語ったモンスターの未来

杉浦大介スポーツライター
撮影・杉浦大介

 10月31日、MGMグランドガーデン内のカンファレンス・センターで行われる井上尚弥(大橋)対ジェイソン・マロニー(オーストラリア)戦の試合前、井上が契約を結ぶトップランクのボブ・アラム・プロモーターが日本メディアの質問に応えた。

 これまでマニー・パッキャオ(フィリピン)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)といった多くの外国人選手をアメリカでスターに育ててきたアラム。この大ベテランプロモーターは井上の実力をどう見ていて、スーパースターになるには何が必要と考えているのか。

アメリカでスターになるために

ーー今夜のマロニー戦で井上に期待することは。

BA : 井上にとって理想的な試合になるだろう。マロニーはとてもタフで、相手から逃げず、打ち合う選手。ファンにとってエキサイティングな試合になる。井上の良い部分が出るはずだ。マロニーは足を使い、つまらない試合をした上で倒れてしまうような選手ではない。マロニーはファイターだから、人々は打ち合いを見ることができる。アメリカ、世界の人々の井上に対するイメージをより良くするような試合になるだろう。

ーー日本のファンは井上が世界的なスターになることを望んでいるが。

BA : パンデミックがなかったら、私たちももっといろいろと取り組めたはずだ。大会場やMGMグランドガーデンに日本から多くの人を招き、ビッグイベントにすることだってできた。ただ、起こっている現実に関してできることは何もない。だから、想定していたよりも時間はかかるだろう。次の試合の開催地はおそらく日本になる。あるいは日本と同じタイムゾーンのアジアの他の国かもしれない。その後、春の終わりか夏の始めにアメリカでまた試合を組むつもり。なるべく頻繁に試合をこなし、アメリカ、日本の両方で戦うのがプランになる。日本での試合を組む際の問題は、対戦相手が14日間隔離せねばならないこと。試合に備えて準備している選手がそれをするのは難しい。例えば(ジョンリール・)カシメロ(フィリピン)のような選手は2ヶ月前に日本に来ない限り、外国で準備するのは大変なことだ。だから様子を見ていかなければいけない。

ーー一度は延期された井上対カシメロ戦が流れた理由は。

BA : ショーン・ギボンズ(プロモーター)がカシメロをアメリカに連れてきていて、私たちは井上とカシメロの試合を組むことを望んでいた。ただ、とても金のかかるファイトだ。ゲート(入場料)収入とスポンサーからの収入がなくなったことが大きかった。MGMは日本での成長を目論んでいて、今回も大金を注ぎ込むつもりだった。それらが消えてしまい、そこでカシメロはチャーロ兄弟の興行(9月26日)で戦う機会を得た。井上の次の試合でカシメロ戦が組めるかどうか、今後も機会を伺っていく。

バンタム級では比類なき強打者

ーー井上がマニー・パッキャオ(フィリピン)のようなビッグスターになるために何が必要か。

BA : マニーのように英語を学ばなければいけない。マニーもアメリカに来た時には英語が喋れなかった。ただ、そこから学び、上手に喋れるようになった。多くの日本人アスリートは最初は英語が喋れないが、やがて会話ができるようになっていく。

ーー英会話はそれほど重要か。

BA : それによってコミュニケーションが取れる。自分の試合の魅力を自身で話し、大金を稼ぐことができる。もちろん必要なことだ。ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)は日本に行き、日本語が喋れるようになった。彼は適応したんだ。

ーーボクサーとしての井上は歴史上で誰に比較できるか。

BA : バンタム級で井上ほど強烈なパワーを持っている選手は見たことがない。バンタム級にも強打者はいるが、あれほどのダメージは与えられない。より上の階級の選手は筋肉もあるものだが、バンタム級ではあり得ない。しかし、彼にはそれができる。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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