現代なら、人の心を一つにするのは何だろう。笑いのあとに、ふと考えさせる『ウイスキーと2人の花嫁』

(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016

クラシックな名画のような邦題です。それもそのはず、ギリーズ・マッキノン監督作『ウイスキーと2人の花嫁』(原題:Whisky Galore!)は、1949年の同名映画『Whisky Galore!』のリメイク。1941年にスコットランドのエリスケイ島沖で大量のウイスキーを積んだ貨物船SSポリティシャン号が座礁した実話をもとに描かれたコンプトン・マッケンジーの小説『Whisky Galore』が原作です。オリジリナル版は日本未公開ですが、本国では大ヒットし、愛され続けてきたそう。

舞台は、第二次世界大戦中のトディー島。スコットランド文化の代名詞ともいえるウイスキーは、「生命の水」として、島の人々の生活にも深く溶け込んでいますが、ドイツによるロンドン空襲が激しさを増すなか、ウイスキーの配給が止まってしまう事態に。そんなおり、ニューヨーク行きの貨物船ミニスター号が島の近くで座礁。沈みかけた船には5万ケースものウイスキーが積まれていることを知った島民たちは、ウイスキーの"救出"に向かおうとするのですが…。

一難去ってまた一難。ウイスキーを守るために島民たちは一致団結。(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016
一難去ってまた一難。ウイスキーを守るために島民たちは一致団結。(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016

島の中心人物である郵便局長ジョセフ・マクルーン(グレゴール・フィッシャー)と、その娘ペギー(ナオミ・パトリック)とカトリーナ(エリー・ケンドリック)。ペギーにプロポーズするため戦地を離れて島にやってきたものの、ジョセフから「結婚するためには、まずウイスキーを振るまう婚約パーティーを開かなければならない」という島の慣習を告げられてしまうオッド軍曹(ショーン・ビガースタッフ)。厳格な母親にカトリーナとの結婚を反対されている気弱な教師ジョージ(ケヴィン・ガスリー)などなど…。

婚約パーティーのために大量のウイスキーが必要な恋人たちをはじめ、“救出”を目論む島民たちの前には、積み荷が盗まれないように監視するという使命に燃える堅物の民兵ワゲット大尉(エディ・イザード)という"憎まれ役"が立ちはだかるのですが、この憎まれ役すらもどこか憎めない。むしろ、彼の融通の利かなさが、笑いを誘う大きな鍵。ウイスキーを回収しようとする関税消費庁と島民が繰りひろげる騒動でも、いい味出しているのです。

杓子定規なワゲット大尉。妻や上官にもあきれられる融通の利かなさが、キャラ的には大きな魅力。(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016
杓子定規なワゲット大尉。妻や上官にもあきれられる融通の利かなさが、キャラ的には大きな魅力。(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016

ウイスキー好きは映画を観ている最中から飲みたくてたまらなくなるそうですが、お酒が飲めない人間でもハッピーな気持ちになるのは、島民たちがウイスキーの"救出"という目的のために心を一つにするから。

『ダンケルク』や『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(3月30日公開)では、第二次世界大戦下の苦境に際して心を一つにする英国民の姿に胸が熱くなりますが、人生に欠かせないもののために力を合わせる人々の姿をユーモアで包んだこの作品は、胸の奥を温かくしてくれるのです。

密かにウイスキー“救出”に加わるオッド軍曹(先頭)。ショーン・ビガースタッフの今後の活躍にも期待。(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016
密かにウイスキー“救出”に加わるオッド軍曹(先頭)。ショーン・ビガースタッフの今後の活躍にも期待。(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016

愛すべきキャラクターたちのなかでもひときわ魅力的なのが、『ハリー・ポッター』シリーズでオリバー・ウッドを演じたショーン・ビガースタッフ。ワゲット大尉から積み荷を見張るように命じられながらも、愛する人との結婚のためにウイスキー救出作戦に加わることになるオッド軍曹が、義理の父となるジョセフへ見せる心配りがますます好感度をアップする。理想の夫候補、ここにありといった感じです。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』や『ダンケルク』という大作への出演が続いている、もう一人の未来の花婿役ケヴィン・ガスリーとともに、これから注目の存在になりそう。

島民たちが安息日を厳格に守っていたり、1940年代が舞台だからこその設定もありますが、いつの時代でも人々が心を一つにする光景は幸せなもの。けれども、『ウイスキーと2人の花嫁』がハッピーでハートウォーミングであればあるほど、観終わって、ふと考えずにいられません。価値観もライフスタイルも多様化した今の世の中なら、さらには現代の日本なら、人々に心を一つにして行動させてくれるものはなんなのだろうと。

2月17日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開中