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KAT-TUN再始動への大いなる助走。亀梨和也の集大成『The一 ~Follow me~』

杉谷伸子映画ライター

KAT-TUNの再始動への期待がますます高まるライブだった。7月13日の神戸国際会館からスタートし、地元会場である10月30日の「江戸川区総合文化センター」でのファイナルまで、約3か月半に渡ったソロコンサートツアー『KAT-TUN KAZUYA KAMENASHI CONCERT TOUR 2017 The一 〜Follow me〜』を完走した亀梨和也。

最終公演の会場は亀梨が幼稚園の時に初めてステージに上がった場所というあたりがソロツアーならではのお楽しみだが、亀梨にとって初となるソロコンサートは、まさにこれまでの亀梨和也の集大成。

メジャーデビュー前に堂本剛の作詞作曲で誕生した初めてのソロ曲『離さないで愛』や、ブレイクのきっかけとなったドラマ『ごくせん』の挿入歌『絆』はもちろん、『00’00’16’』や『w/o notice??』などデビューまもない頃から現在までのソロ曲のかずかずととともに、長年主演をつとめた人気舞台をフィーチャーした《DREAM BOYSメドレー》では、ときに笑いを交えながら名シーンとともに『LOST MY WAY』や『星の光る空』などの劇中曲を披露。

KAT-TUNが司会をつとめていた『ザ少年倶楽部プレミアム』(NHK BSプレミアム)で共演した「凛として時雨」のピエール中野が監修した《Bandコーナー》では、『BIRTH』『LIPS』『UNLOCK』と自身の主演ドラマ主題歌メドレーでたたみかけるなか、『UNLOCK』が主題歌だったドラマ『怪盗 山猫』の主人公の音痴キャラで沸かせたかと思えば、これもまた主演をつとめたドラマ『たったひとつの恋』で重要なアイテムとなった“オレンジのイガイガ”を手にして歌う主題歌『僕らの街で』でときめかせ、俳優・亀梨和也との思い出を蘇らせるという具合に盛りだくさん。エンターテインメントの申し子・亀梨らしい趣向とサービース精神が満載だ。

MCタイムでは、公演先の地元の人々に「亀梨くんについてどう思います?」と街頭インタビューする映像が紹介されるのだが、そのインタビューの声が冠バラエティ『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』でお馴染みだった【天の声】。会場ごとに内容が違うという手のかけ方にうかがえるスタッフの愛情と情熱もまたこのライブのスパイスだった。

そうした構成に、妖艶な和テイストを効かせた『1582』や、ベッドでのエロティックなパフォーマンスで沸かせる新曲『〜Follow me〜』など、ファンが求める亀梨感も濃厚に交えているのもまたソロコンならでは。そもそも、ツアーロゴのモチーフになっている唇にしても、ライブでの投げキスや舌なめずりでファンを沸かせる亀梨らしい。

けれども、このソロコンは、同時にKAT-TUNへの彼の想いをうかがわせるものでもあった。

なにしろ、ツアータイトルに「KAT-TUN KAZUYA KAMENASHI」と掲げているのだ。ソロコンサートで自身の名前だけでなく、グループ名を打ち出すのは珍しい。亀梨和也としてのファーストコンサートも「1st」とせずに「The一」とあえて漢数字を使った表記には、明らかにKAT-TUNのファンを意味する「−(ハイフン)」への思いがこめられている。

今年は、山下智久と「亀と山P」として、主演ドラマ『ボク、運命の人です。』の主題歌『背中越しのチャンス』をリリース。「修二と彰」として『青春アミーゴ』でミリオンセラーを記録した二人は、『背中〜』通常盤のカップリングに『青春アミーゴ』のアンサーソングである『逆転レボルシオン』や、二人の共作『Forever Summer』を収録。このコンサートを亀梨和也の集大成とするなら、いや、亀梨和也の現在を見せるなら、その2曲をセットリストに入れるという選択肢もあっただろう。しかし、KAT-TUN曲やメンバーとのユニット曲、亀梨和也名義以外の楽曲は、『青春アミーゴ(DREAM BOYS Ver.)』と、アンコールで披露した堀田家BANDとしての『サヨナラ☆ありがとう』、『背中越しのチャンス』という主演ドラマの主題歌3曲だけ。ここに、日頃から「KAT-TUN亀梨和也として」と口にする彼の心意気がうかがえると同時に、デビュー曲『Real Face』を歌わず、披露したKAT-TUN曲の大半も自身の主演ドラマ主題歌だったあたりにKAT-TUNの曲はKAT-TUNでという思いも感じずにいられない。

KAT-TUNファンにとってのサプライズだったのは、開演前の会場に流れる注意アナウンスが、メンバーの中丸雄一と上田竜也によるものだったこと。ツアーを通して、彼らの声が常に会場にあったということの意味は大きい。

亀梨和也を堪能させるとともに、KAT-TUNへの期待と渇望を高まらせてくれた亀梨。中丸は舞台『中丸くんの楽しい時間2』、上田はドラマ『新宿セブン』とメンバーそれぞれも充実を見せている。来年には再始動したいという亀梨や中丸の言葉が報じられているなか、嬉しいニュースが届く日が待ち遠しい! (8月29日18時公演を取材:東京国際フォーラム ホールA)

映画ライター

映画レビューやコラム、インタビューを中心に、『anan』『25ans』はじめ、女性誌・情報誌に執筆。インタビュー対象は、ふなっしーからマーティン・スコセッシまで多岐にわたる。日本映画ペンクラブ会員。

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