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菊池風磨、進化する個性と才能。『風 is I ?』

杉谷伸子映画ライター

Sexy Zone5名と内博貴、A.B.C-Z橋本良亮による『Summer Paradise 2017』。2人目の菊池風磨は、伝えたいものがあることの素晴らしさと、それを届けることのできる素晴らしさに 胸を熱くさせた。

アイドルとして抱える葛藤と反骨をエンターテインメントに昇華した第1弾『風 is a Doll ?』、自問自答を経て アイドルとしての夢と決意を表明した第2弾『風 are you ?』。ある意味、この2つは対をなすものだった。そして、三たび、タイトルに「風」を冠した今年の『風 is I ?』。シリーズものには、毎回違う世界観を提示するのとはまた違う難しさがある。第3弾ともなると、そのハードルはかなり高いはずだ。しかし、菊池は年々高くなるそのハードルを鮮やかに飛び越えて、今年もまた素晴らしいものを見せてくれた。英語のモノローグで進行する物語仕立ての構成。バックではなくユニットとしての出演メンバーと繰りひろげるライブ。これまでのスタイルを貫きながら、さらなる深化を遂げるというすごいことをやってのけているのだ。しかも、より洗練されたスタイルで。

12歳で突然この世を去り、やり残したことがいっぱいの菊池が、10年後の夏、22歳の青年として1日限定で蘇り、少年時代を過ごした仲間たちと一緒にやり残したことをすべてやりつくすというコンセプトのもと展開する『風 is I ?』。

「女の子と手も繋いだことがない」など、やり残したことを列挙するあどけない少年のモノローグが、菊池の声に変わると、ステージ上段に赤いソファにかけた菊池がいるオープニング。艶っぽく歌う菊池の周囲に浮かんでは消えるスモーキーなシルエットが、少年が菊池の姿でこの世に戻ってきた幽玄を感じさせる1曲目『But…』から細部へのこだわりが満載。

仲間たちと楽しむ1日は、夏限定ユニット「風 is I ?」に迎えたSixTONES(ジェシー、高地優吾、京本大我、松村北斗、森本慎太郎、田中樹)が、同期や一緒にやっていたメンバーもいる入所以来の仲間というのもあってリアルな男子感に溢れている。ソロ公演前恒例の決起集会もかねて出かけた海での映像が スクリーンに映し出されて、楽曲の夏気分を盛りあげたり、これまた恒例の『SUMMARY』でのエアフライングもローラースケートと短パンで笑撃的な面白さを盛りこんで弾ける一方で、クールな楽曲も堪能させる。バラエティに富んだ選曲と細部までこだわった演出に改めて感じるのは、菊池の豊かな音楽性とプロデュース能力だ。

リアルな男子の空気感は、「風」シリーズの大きな魅力のひとつだが、この日はMC中にスタッフに扮して中島健人が登場するサプライズも。「1日しか帰ってこれない菊池に会いにきました。これも“Mission:K“です」と、3017年からやってきたという自身のソロ公演からのケントロイド モードを貫く中島と対照的に、初めてソロ公演を観にきた中島との2ショットに菊池がのぞかせた照れもまたリアル。さらに、観客も一緒に『20-Tw/Nty-』を歌ったアンコールでの森本の20歳のお祝いでもリアルな仲間の一体感を分かちあわせてくれた。

「とにかく自分が歌ってみたいなと純粋に思っていた曲をたくさん入れさせていただいているんですけど、そのぶん自分の理想が高くて。“この曲はこういうふうに見せたい”とか、その理想が高いぶん、作っていくのは難しかったですね」と公演前の囲み会見で話していた 先輩たちの曲や 初披露した新曲『My Life』など自身のソロ曲を中心に構成したライブ。

「好きな音楽」を楽しませてくれる力にサマパラ1年目から驚かせた菊池だが、先輩たちのカバー曲でも、耳馴染みのある曲ほど、彼が歌うとまた新たな世界が広がる。そう感じさせるのは、彼の声の力なのか、それとも彼の感性の賜物なのか。いずれにせよ、歌うたいとしての資質を備えたアーティストであると同時に、エンターテイナーとして観客を楽しませることにも長けている彼が、今年はさらに 細部まで作りこんでいた。それでいて、肩に力が入り過ぎない演出が、観客が素直に楽しむことのできる世界に引き込んでいく。英語モノローグも、菊池の視点のみならず、友人サイドからのモノローグも入ることで、より世界に広がりをもたらし、二度とない1日の切なさをより感じさせていた。

「僕が何より伝えたいのは、今をどれだけ後悔なく生きられるかっていうこと」と囲み会見で話していた菊池。これまでのアイドル菊池風磨としての決意表明から より普遍的なものとなったそのメッセージが、本編ラストを飾った『素晴らしき世界』の歌詞とあいまって、仲間とともに今しかないその瞬間を全力で楽しんだ夏の1日に深い余韻をもたらし、聴く者に 今の自分と向き合う先に広がる明日を感じさせてくれた。(8月4日17時公演:TOKYO DOME CITY HALL)

【Summer Paradise 2017 菊池風磨「風 is I ?」】8/4(金)17時公演セットリスト

M 1. But...(菊池ソロ楽曲)

M 2. LOVE CHASE(山下智久カバー曲)

M 3. Tokyo Sinfonietta(山下智久カバー曲)

M 4. Fragile(TOKIOカバー曲)

M 5. 東京ドライブ(TOKIOカバー曲)

M 6. SHAKE(SMAPカバー曲)

M 7. 夢でいいから(嵐カバー曲)

M 8. TIPSY LOVE(JIN AKANISHIカバー曲)

M 9. My Life(菊池ソロ曲・新曲)

M10. 月の幻(山下智久カバー曲)

M11. 愛ing(Hey!Say!JUMPカバー曲)

M12. パラダイス銀河(光GENJIカバー曲)

M13. SUMMARY(SUMMARY 2011楽曲)

 コント

M14. 太陽の世界(嵐カバー曲)

M15. Hello(菊池ソロ楽曲)

 MC

M16. First Love(宇多田ヒカル カバー曲)

M17. Amazing!!!!!!(SixTONES曲)

M18. この星のHIKARI(SixTONES曲)

M19. rouge(菊池ソロ曲)

M20. ...more(菊池ソロ曲)

M21. Over Flow(SMAPカバー曲)

M22. My Lovin’ Season(菊池ソロ曲)

M23. It's going down(菊池ソロ曲)

M24. T.A.B.O.O(嵐・櫻井翔ソロ/カバー曲)

M25. リリック(TOKIOカバー曲)

M26. 喜びの歌(KAT-TUNカバー曲)

M27. 20-Tw/Nty-(菊池ソロ曲)

M28. 素晴らしき世界(嵐カバー曲)

En1. Party up!(菊池ソロ曲)

En2. HEY WHAT’S UP ( JIN AKANISHIカバー曲)

En3. Oh! Yeah(嵐カバー曲)

En4. 20-Tw/Nty-(菊池ソロ曲)

映画ライター

映画レビューやコラム、インタビューを中心に、『anan』『25ans』はじめ、女性誌・情報誌に執筆。インタビュー対象は、ふなっしーからマーティン・スコセッシまで多岐にわたる。日本映画ペンクラブ会員。

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