Yahoo!ニュース

給付金、DV避難者・離婚前の実質ひとりはすぐ自治体相談を!地方丸投げで難民化する親子 #子育て罰

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
DV避難者・離婚前の実質ひとり親に支援は届かないのか?(提供:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

子育て世帯への臨時給付金ですが、大きな問題があります。

高所得世帯の子どもたちの排除だけでなく、DV避難者、離婚前の実質ひとり親への支給について国が制度設計しておらず、差別されているのです。

1.住んでいる自治体によっては支給可能性がある

残念ながら10/1以降離婚・調停開始等の実質ひとり親世帯は無支給

DV加害者が児童手当とともに給付金を受け取っている詐取の可能性も

DV避難者(要件は下で説明しています)の方、今年の9月30日以前に離婚・調停開始等の実質ひとり親世帯は支給の可能性があります。

12月20日(月)以降、急いでいまお住まいの市区町村にお問い合わせください(自治体判断なので支給されない可能性もあります)。

詳しくは0-18歳のDV避難者への給付金支給について米原市役所のご協力のもとで迅速に調査・情報発信くださった振角大祐米原市議会議員のnoteをご覧ください。

児童手当の支給の仕組みを利用したプッシュ型支援のもとでは、国の方針変更がない限り、地方自治体の判断では支給できないのです、

10月1日以降、離婚や離婚調停中や別居婚などをされている方は、申請をしても、今回は支給先を変更できません。これは、国の制度設計の問題で、自治体では、どうしようもできない問題です。

※振角大祐,特別臨時給付金、もらえる人がいる一方で。(2021年12月16日,note記事)

残念ながらDV加害者が児童手当とともに給付金を受け取っている詐取の可能性もあります。

なおDV避難者とは、法務省の作成資料で以下の3つのいずれかにあてはまる方となっています。

① 申出者の配偶者に対し、配偶者暴力防止法に基づく保護命令が出されていること

② 婦人相談所による「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」又は、配偶者暴力相談支援センター等の関係行政機関若しくは、行政機関や関係機関と連携してDV被害者支援を行っている民間支援団体(婦人保護事業委託団体、地域DV協議会参加団体、DV被害者支援関連の補助金を受けている団体)による「確認書」が発行されていること

③ 基準日の翌日以降に住民票を居住市区町村に移し、住民基本台帳事務処理要領に基づく「支援措置」の対象となっていること

2.令和2年・国民一律10万円給付の時から問題はわかっていた

日本政府はなぜ同じ過ちを繰り返す?

難民化しているDV避難者・実質ひとり親

救済策がなければやはり日本は「子育て罰」大国

DV避難親や、別居・離婚前の実質ひとり親世帯への給付金支給に課題があることは、2020年6月の国民一律10万円支給及びひとり親世帯臨時特別給付金の時からわかっていました。

この時は、厚生労働省・総務省の精力的な対応で、DV避難者への支給は行われましたが、実質ひとり親への対応は、やはり自治体任せで十分なものではなかったのです。

今回、2021年12月中の子育て世帯給付金についても、11月の制度設計時から問題は指摘されていました。

「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチーム(認定NPO法人フローレンス・認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、シングルペアレント101、北明美福井県立大学名誉教授)は、実質ひとり親への給付金支給を行うよう12月9日に政府・自治体に提言をしています。

認定NPO法人フローレンスHPより
認定NPO法人フローレンスHPより

しかし事態は改善されず現在に至っています。

今回の子育て世帯臨時特別給付金は、総理直属の内閣官房チームで設計し、財務省・財務官僚がクーポン給付設計による迷走を含め、主導したことがわかっています。

これまで困難な状況の親子に寄り添う制度設計を行ってきた厚生労働省、総務省の給付金実務に精通する官僚が制度設計に参加していないことも、厳しい状況の親子にされに冷たい給付金の制度設計となってしまった要因としてあげられます。

財務省主導による不十分で冷たい制度設計のために、多くのDV避難者・実質的ひとり親の親子が難民化しています。

先進国にありながら、政府の公助からも排除されている、もっとも弱い立場の人々に救済策も放置するならば、やはり日本は「子育て罰」国家と言わざるを得ません。

岸田総理には、もっとも大変な親子の声は届かないのでしょうか?

3.こども庁(こども家庭庁?)でも、大変な状態の親子に給付金が届かなければ意味がない

緊急避難した親子へワンストップ型支援を

おりしも、こども庁(こども家庭庁?)の議論がさかんですが、大変な状態の親子に給付金が届かなければ意味がありません。

児童手当の仕組みを利用してしまうと、今回の給付金のように必ず支援から排除されてしまう親子が出てしまいます。

DVにせよ、離婚調停・別居にせよ、やむにやまれぬ事情で配偶者と急いで別居しなければならない親子がいます。

そのような人の多くは、転居手続きどころかマイナンバーすら置き去りにして避難している実態もあるのです。

このような親子に対しては、国が指針や財政保障をし、どの自治体でも相談を受け給付金・児童手当や衣食住の保障につながれるワンストップ型支援が必要になります。

今回、給付金が受け取れないDV避難者、実質ひとり親の救済策とともに、親子が緊急避難しても難民化しない仕組みの実現が急がれます。

もっとも支援が必要なのは、この国の未来を担っていく、育ちざかりの子どもたちです。

DV避難者、実質ひとり親含め、すべての子どもに支援が行き届く日本まで、まだまだ道は遠いのでしょうか?

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

末冨芳の最近の記事