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#なくそう子育て罰 立民・国民・共産・公明は公約充実、 スカスカの自民 #衆院選2021政策比較

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
Yahoo!オーサー・末冨芳作成・2021年10月18日ver.1

10月31の投票日にむけて、いよいよ衆議院議員選挙が公示されました。

自民党によって作り上げられてきた、親子に冷たく厳しい子育て罰大国・日本を変えられる政党はどこでしょうか?

公開されている選挙公約・政策を比較しました。

※表・本文ともに転載の際には、この記事のリンクか次の情報を記載ください(表のダウンロードはこちら)。

末冨芳「立民・国民・共産1位・続く公明!自民は子育て罰路線 #なくそう子育て罰 #衆院選2021政策比較」Yahoo!個人2021年10月18日

1.子育て罰をなくせる主要政党はどこだ?選挙公約・政策比較

立憲民主党・国民民主党・日本共産党・公明党は、親子にやさしい政策コンテスト

自民党だけが子育て罰路線、こどもまんなか総裁選はなんだったのか?

子育て罰とは、政治・企業・日本社会が親と子どもに課してきた、罰のように親子に冷たく厳しい制度やルール・慣習のことです。

筆者と桜井啓太立命館大学准教授は、今年7月に『子育て罰-「親子に冷たい日本」を変えるには-』(光文社新書)を上梓しました。

同書に述べた通り、子育て罰は長年男性優位で、子どもや女性・子育てする父親にも罰を与えるように冷遇してきた自民党政権によって作り出されてきました。

衆議院選挙は子育て罰大国・日本を変える政治を実現するチャンスなのです。

方法は以下に述べますが、児童手当・教育の無償化・出産の無償化の具体度にポイントを置き、筆者独自の評価を行いました。

なお子育て世帯含む国民への臨時給付金が衆院選の争点になっていますが、重要な政策ではありますが日本から政治による子育て罰を根本的になくすためには、エッセンシャル(不可欠)な争点ではありません。

したがってこの記事の評価からは除外しています。

結果をまず申し上げます。

子育て罰をなくし、親子にやさしい公約・政策をかかげている政党は立憲民主党・国民民主党・日本共産党・公明党となりました。

とくに高等教育の無償化や児童手当で親子・若者にやさしい政策を競う、良い政策コンテストとなっています。

日本維新の会は、政党のかねてからの路線である教育の無償化を中軸に据えた公約を掲げています。

いっぽうで自民党だけが児童手当や教育の無償化に関する政策がスカスカです。

この公約・政策では、自民党は子育て罰路線のままと言わざるをえません。

野田聖子少子化担当大臣がこどもまんなか政策の論戦をリードし、全候補者が子育て予算倍増に賛同し、保守派である高市早苗候補も多子世帯への児童手当を掲げていた、こどもまんなか総裁選はなんだったのでしょうか?

自民党という政党は、総裁選の論戦を無視し、親子に冷たく厳しい子育て政党のままである、と選挙公約・政策からは判断せざるを得ません。

2.ランキング作成のポイント、粗点(#なくそう子育て罰得点)は児童手当・教育の無償化・出産の無償化

所得制限なく低所得層に手厚い児童手当・0-2歳・高校無償化

大学の無償化の所得制限緩和、出産無償化も子育て罰をなくすための必須政策

さてランキング作成のポイントを申し上げておきます。

ランキング作成に際しては、多くの読者に伝わるようにシンプルでわかりやすい採点方式にしています。

ご存知の方も多いと思いますが、選挙公約・政策は必ずしも細かく書き込まれているわけではないため観点別に細かく積み上げるポイント方式はとれません。

今回は、政党間順位を決めるために政策の具体度で相対評価を決める方式にしています。

◎=20点、〇=10点、△=5点、記載なし=0点とし、子育て罰をなくすための、政党の政策の有効性・具体度が高いほど得点を高くする方式としてあります。

表には粗点と補正後得点の2種類がありますが、粗点は、児童手当・教育の無償化・出産の無償化の3つの政策についての評価得点です。

日本から子育て罰をなくすためには、児童手当、教育の無償化(とくに0-2歳幼児教育の無償化、高校無償化、大学・専修学校の無償化)、そして出産の無償化に対し予算を拡充し、すぐに政策実現することが必要となります。

とくに少子化が厚労省予測をうわまわる異常なスピードで加速し、国家の消滅すら懸念される日本では、所得制限ない普遍主義の政府支援をベースに、低所得層により手厚い支援が必要になります。

以下、公約・政策の粗点のつけ方を示しました。

(1)児童手当

所得制限なし、児童手当増額を掲げている政党に◎(20点)【立憲民主党・国民民主党・日本共産党】

児童手当拡充を掲げている政党に△(5点)【自由民主党】

(2)教育の無償化

0-2歳・幼児教育の無償化:

所得制限撤廃を明記する政党に◎(20点)【国民民主党】

所得制限緩和を明記した政党に〇(10点)【立憲民主党・日本維新の会・公明党】

高校の無償化:

所得制限撤廃を明記する政党に◎(20点)【立憲民主党・日本共産党】

所得制限緩和を明記した政党に〇(10点)【国民民主党・公明党・日本維新の会】

大学・専修学校の無償化:

所得制限緩和・給付型奨学金拡充・授業料・入学金低減を具体的に明記した政党に◎(20点)【立憲民主党・日本共産党・公明党】

所得制限緩和・奨学金返済軽減策の方針明記した政党に〇(10点)【国民民主党・日本維新の会】

※日本維新の会は幼児教育~大学までの完全無償化という表現のみを公約として掲げており、いずれも〇=10点として採点しております。

(3)出産の無償化

完全無償化を掲げている政党に◎(20点)【該当なし】

一部無償化、検診費用無償化を掲げている政党に△(5点)【立憲民主党・公明党・日本維新の会】

粗点順位でいえば、立憲民主党が75点と1位になります。

児童手当、教育の無償化、出産の無償化について、全般的に親子にあたたかくやさしい、脱子育て罰路線を明確にしているといえます。

3.財源明記と与党補正による得点補正

子ども財源に切り込んだ政党は国民民主党・日本共産党のみ

自民党の子育て罰をブロックし、進化させてきた公明党の実績は重要

さてランキングの順位は、粗点ではなく補正済の得点で出しています。

まず公約・政策を実現できるだけの財源ねん出の方法が明記されている政党に15点加点をしました。

また現在の与党である自民党・公明党は政策実現に責任を負うため、財源ねん出の目安がなければ、公約で言いたくても言えないというジレンマを抱えている状況があります。

こうした与党の制約を勘案しなければフェアではないという考え方もありうると思われます。

たとえば、児童手当の特例給付廃止について、公明党は連立与党として自民党に反対をしましたが、それは今回の選挙公約には含まれていません。

逆に自民党は児童手当拡充と書いており、公明党と自民党との公約には「すみわけ」・「調整」が行われていると想定しておくことも妥当だと考えます。

したがって与党補正の得点加点もしました。

私自身は、政党が示した選挙公約・政策にのみ注目して投票する立場に立ちますが、それでも与党の立場の難しさを勘案し複数の考え方を示しておくことは、必要だとも考えています。

(1)財源明記をした政党(+15点補正)

教育国債を財源として明記【国民民主党】

「能力に応じた負担」税制改革や、歳出の浪費改革で財源拠出を明記【日本共産党】

(2)連立与党公明党の実力:教育の無償化、子育て世帯特別給付金(公明党補正30点)

公明党は、高所得層児童手当に廃止した実績があります。

また低所得層への子育て世帯支援特別給付金をひとり親のみならずふたり親への支給に対しても、非常に熱心に自民党に働きかけていただきました。

本当は高所得層の児童手当の復活、低所得層への拡充という政策を打ち出されたい候補者も多いと推察しますが、連立与党の関係の中では難しい事情もあるのではと拝察します。

くわえて高校無償化、大学・専修の無償化については、与党での政策実現をリードいただき、コロナ禍の中でも、中退者増につながらず多くの若者たちの学びの保障に間に合わせていただきました。

今回の公約・政策においては、私立高校無償化を年収910万円まで拡充、大学・専修学校の無償化については年収590万円まで拡大と、親子・若者にやさしい具体案を示しておられます。

(3)なぜ自由民主党にも与党補正をしたか?(自民党補正15点)

自由民主党の補正については私も迷いました。

この超少子化の中でも児童手当の特例給付廃止を撤回せず、子育て世帯特別給付金も出し渋り、子育て罰政党の自民党でありつづけていることは間違いありません。

しかし、児童手当の特例給付廃止に反対したり、子ども予算倍増をかかげ自民党を変えようとしてくださっている、こどもまんなかの議員のみなさんの活動は評価されるべきです。

また連立与党・公明党の影響が大きいとはいえ、教育の無償化の実績、ひとり親・ふたり親変わりない子育て世帯特別給付金の実現の評価をゼロにすることもフェアではないでしょう。

しかし、自民党の粗点は5点です。

補正をしても20点にすぎません。

これは自民党の子育て罰勢力に対し、岸田総理が妥協したということを示しているのではないでしょうか?

教育無償化に関する公明党との公約住み分け説は、2017年衆議院議員選挙の保育・教育の無償化で自公公約が足並みをそろえたことを考えると、今回選挙では必ずしもあてはまらず、むしろ公明党との連携不足が影響している可能性もあります。

衆議院選挙後にいかに自民党内を脱・子育て罰にむけてまとめあげていくか、岸田総裁の実力が問われます。

子ども予算増、子ども基本法をベースとした、こども政策充実に関する野田少子化担当大臣の実力とリーダーシップを活かしきる岸田内閣であることを期待します。

4.ランキング順・主要政党の親子に優しい公約・政策ポイント

1位・立憲民主党:全政党中もっとも親子・若者にやさしい政策パッケージ

  • 児童手当・教育の無償化・出産の無償化のすべてを充実
  • 国公立大学の授業料を半額にまで引き下げ、私立大学・専門学校生への給付型奨学金を大幅など大学授業料や奨学金政策も具体的
  • すべて実現すれば子育て罰の大幅な改善に
  • いっぽうで財源論争も他の政党に挑めるかは衆議院選挙後も注視の必要があります

1位・国民民主党:教育国債で財源明記、若いファミリーにひときわやさしい

  • 所得制限なく児童手当を1人1.5万円に抜本増額・高校生延長
  • 0-2歳児幼児教育の完全無償化
  • 政府による所得再分配が失敗している子どもが乳幼児期の若いファミリーにひときわやさしいと評価できます

1位・日本共産党:大学の無償化・奨学金政策が傑出

  • 大学授業料を半額、入学金制度を撤廃
  • 「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人に支給
  • 貸与奨学金はすべて無利子、奨学金減免制度・返済猶予等拡充、奨学金20年間返済で残額免除
  • 児童手当の18歳延長、住宅費補助も充実
  • 子ども若者、とくに大学生にやさしい政策である点が注目されます

1位:公明党:教育の無償化の拡充・連立与党としての実績にもとづく実現可能性の高い公約

  • 私立高校の年収910万円まで無償化
  • 大学・専修学校の無償化の年収590万円まで拡大
  • 0-2歳幼児教育無償化の所得制限緩和、18歳までの医療費無償化も注目
  • 連立与党・公明党として必ず実現するという責任意識の高い手堅い公約になっています

5位:日本維新の会:結党以来一貫する教育無償化への姿勢

  • 日本維新の会の公約は以下のようにシンプルです
  • 「義務教育の他、幼児教育、高校、大学など、教育の全過程について完全無償化を憲法上の原則として定め、給食の無償化と大学改革を併せて進めながら国に関連法の立法と恒久的な予算措置を義務付け」
  • 政策の具体度は低いものの、結党以来の教育の無償化への変わらぬ姿勢は今回選挙でも確認できます

6位:自民党:とにかく政策の具体性が乏しく、評価に苦労

  • 選挙期間中でもよいので、岸田総裁の掲げた教育費・住居費の無償化や、景気停滞の中で児童手当の特例給付廃止を強行するのかどうか、追加公約・政策が必要な状況

5.若者・子育て世代の「声」と「投票」こそが、子育て罰をなくす手段

子育て罰は「投票」を通じてなくせる

気になる政党・政治家にSNS・HPで「声」を届けてみませんか?

最後に私がこのように発信をするのは、若者・子育て世代の「声」と「投票」こそが、子育て罰をなくす手段だからです。

子どもがいて生活が苦しい

保育料が高い

授業料が高いうえに奨学金を返せるのか心配

このような悩みは、読者のみなさんの努力が足りないから起きているわけではありません。

若い世代が頑張って働いて子育てしても、非正規雇用のまま、賃金が上がらない、子どもを育てているのに児童手当も教育の無償化もまったく不十分。

このような親子や若者に罰を課す、厳しく冷たい子育て罰大国・日本を産んできたのは政治の責任なのです。

政治は、投票により変えることができます。

今回評価が低かった自民党や日本維新の会の中にも親子や若者にやさしい候補者もいます。

みなさん方も、選挙区の気になる候補者や、比例区の気になる政党・政治家にSNS・HPで政策で、質問や意見を言うことができます。

もちろん乱暴な言い方や誹謗中傷はやめましょう。

「出産費用を無償化してほしいです」「奨学金を返せなくて悩んでいます」など、ご自身の困りごとや、政党・候補者のHPだけではよくわからない具体的な政策を確認するなど、相手への敬意を忘れることなく聞いてみてください。

たくさんの若い世代・子育て世代からの「声」も政治家を育て、日本から子育て罰をなくすことにもつながるのです。

※本記事は2021年10月18日時点で、主要政党が公開している選挙公約・政策にもとづいたものです。追加公約・政策等があれば、続編記事として公開いたします。

※本記事は、オーサー個人の分析・見解であり、所属機関・関係機関へのお問い合わせはおやめください。

記事内容についてのお問い合わせ・各政党の追加公約・政策等の情報がありましたらオーサー個人ページに示したSNSの機能をご活用ください。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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