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#学校連携観戦 保護者子どもは参加しない勇気を!組織委・都・自治体は子どもの安全安心を守り切れるか?

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
東京都ホームページより、緊急事態宣言で都民への協力を呼び掛ける小池都知事

学校連携観戦について、東京都の8自治体が参加予定と報道され、私の住む自治体でも観戦強行されようとしています(東京新聞8月18日報道)。

医療崩壊の中で、多くの子ども・保護者だけでなく都民も強い不安と不信を感じる事態になっています。

1.東京都教育委員4名が反対する中、学校連携観戦強行という異常事態

いまもっとも寄り添うべきは医療従事者

学校連携観戦については、東京都教育委員4人(臨時会議に出席した委員全員)が反対表明という異常事態となっています。

テレビ朝日の報道では「さまざまな立場の人に寄り添うことを学ぶのがパラ教育。いまもっとも寄り添うべきは医療従事者だ」と五輪憲章の精神を理解された発言がされています。

また医療従事者からも懸念の声があることも報道されています(東スポweb8月19日)。

2.学校連携観戦は希望者参加、不安な保護者と子どもは参加しない勇気を!

参加したい人の気持ちも尊重するのがダイバーシティ&インクルージョン

学校連携観戦について不安な保護者と子どもは、参加しなくても大丈夫です。

希望者13万2000人と報道されましたが、それは自治体の回答にすぎません。

政府や東京都、大会組織委員会、国際パラリンピック委員会では希望者参加の方針が明示されており(毎日新聞8月18日報道)、参加を強制することはポリシー違反となるからです。

おそらく短時間のうちにあわただしく保護者子どもの参加意思確認が行われるでしょうが、不安な人は参加しない勇気を持ちましょう。

子ども、家族でなく医療従事者を守る選択としても重要です。

(私の住んでいる自治体では昨日お知らせがきて、参加希望の場合のみ今日中に回答という信じられない短期間での対応を保護者も強いられています。)

もちろん参加したい人の気持ちも尊重するのが、東京パラリンピックのスローガンであるダイバーシティ&インクルージョンにもつながることです。

しかし、医療崩壊中の首都圏で、不安を強く感じパラリンピック学校観戦の参加の判断を押し付けられる多くの保護者や子ども、そしてワクチン未接種者もいる中で引率を余儀なくされる教職員を生じさせることが、果たして安全安心な五輪なのでしょうか?

ワクチン接種をしてもデルタ株感染を防げないことがわかっている今、家族に医療従事者がいたり、高齢者や基礎疾患保有者がいるなどの家庭は、とくに学校観戦は不安なことではないでしょうか?

22自治体はすでに中止決定ということですが、医療従事者だけでなく、子どもや保護者教職員を守る正しい選択だったと個人的には考えています。

3.組織委・都・自治体は子どもの安全安心を守り切れるか?

オリンピック時は750ml以上の飲料水の持ち込みは組織委員会ルールで禁止

都の独自対策は組織委員会と合意したのか?

東京都教委は、学校連携観戦について以下の方針を示しています。

感染防止のための体調管理の徹底やマスク着用、距離を空けた座席配置をはじめ、暑さ対策として冷却用タオル・飲料水の配布や、冷房付きテントの設置などを行うとしている(東京新聞8月18日報道)。

ところでオリンピック時の組織委員会の観戦ルールでは飲み物は750ml以下のペットボトル(もしくは水筒)1本しか持ち込めないことになっていました。

オリンピック学校観戦についてもそれ以外の方針を示さなかったことは私の取材でもあきらかになっています。

組織委員会の観戦ルールを変えるには、都教委と組織委員会との合意が必要なはずですが合意されたとの報道はありません。

都教委が先走っていろいろ決定しても、組織委員会がそれを認めないといえば覆ってしまうのです。

本当に子どもの安全安心を守り切る対応がされるのか、ホームページを探しましたが都教委、組織委員会ともにまだ情報公開されていません。

子どもの安全安心を守る方策がわからない状態で、学校観戦に参加するかどうか判断しろと短期間で迫られる保護者子どもが東京都や千葉市にはたくさんいるはずなのですが。

また参加した学校・児童生徒も、そうでない学校・児童生徒も、自治体やSNSでの誹謗中傷の対象にならないよう、学校連携観戦を決定した政府・組織委員会・知事・自治体は急ぎメッセージを発するべきでしょう。

また学校内でも、参加した児童生徒も、参加しない児童生徒もお互いを尊重しあえるよう、各学校での取り組みも必要です(これがまた参加自治体の教職員のさらなる多忙化を招くことになるのですが・・・)。

そして教職員の超過勤務に対する手当の予算措置もきちんとされるべきです。

感染症や熱中症が発生してしまったとき、治療費や損害賠償をし、学校連携観戦を決定した責任者が説明責任・行政責任や政治責任を遂行することも必要になります。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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