■「自分をよく見せようとする人」はだめ?

人事採用担当者の世界では「自分をよく見せようとする人間は信用ならない」と口にする人が少なくありません。面接の場面などで多くの担当者は、自分を飾ろうとする人、自分を大きく見せようとする人を「不誠実」と見なします。

これは人事の方によく見られるパーソナリティ、すなわち公正であることや誠実であることを良しとする性格も影響しているのかもしれません。「事実を聞き出し、事実から判断する」という面接の原理原則に忠実な担当者ほど「話を盛る」ことに対する嫌悪感も強いということです。

■社会的動物である人間はウソをつくもの

人事採用担当者が「自分をよく見せようとすること」を嫌うのは、他責志向や隠ぺい傾向を推定するからでしょう。失敗や自分の欠点を隠そうとする盛り方です。確かにこうした人は職場にトラブルを招きがちなので採用を避けたほうがいいです。

また、明らかな経歴詐称などであれば「信用ならない」と判断されても仕方がありません。度を過ぎて話を盛り過ぎるのも困りものです。仲間に対する疑心暗鬼はチーム内コミュニケーションに悪影響を及ぼし、全体のパフォーマンス低下にもつながります。

しかし、このようなチェックもエスカレートすると、過度に謙虚な人ばかりを集めてしまいかねません。日本人は往々にして自慢を嫌い、自虐を好む傾向にありますが、それも一種の自分を飾ろうとする行為ではないでしょうか。

ウソにも〝良いウソ〟と〝悪いウソ〟があるように思います。「自分の想いを熱く伝えたい」「自分に興味を持ってもらいたい」「自分の話を楽しんでほしい」という熱意やサービス精神に基づくウソも含め、すべて悪いと判断するのは早計かもしれません。

実際、誰しも善な動機から、多少は話を盛った経験があるはずです。自分をよく見せようと小さなウソをついたりする行為の背景には、社会的動物である人間が周囲と自分とを比較することで、集団における自分の「位置」を確認しようとするところから生じるものだと考えられます。

■上を目指す人か、リスクを避ける人か

他者との比較には二つのタイプがあります。一つめは、自分よりも劣った他者と比較する「下方比較」です。「あれに比べれば自分はまだマシだな」などと比べることで自尊心を回復させようとするものですが、このような比較をする人はパフォーマンスが低下する可能性があります。

もう一つは、自分よりも優れた他者と比べる「上方比較」です。「すごいなあ、自分もああなりたい」「上には上がいる、もっと頑張ろう」といった考え方ですが、このような比較をする人は、目標を高く設定し、自分を律するため、結果としてパフォーマンスが向上する可能性があります。

「悪い評価を避けたい」という下方比較は、自信を失ってリスクを避けたい状態や自己肯定感が低下した状態のときに行われます。一方、「良い評価を得たい」という上方比較は、自分自身を価値ある者だと感じる自尊感情が高まっている状態や、自分をもっと向上させたいというポジティブな動機付けができている状態のときに行われます。

そう考えると、採用面接において「話を盛る」「ウソをつく」といった行為が上方比較に基づくものであれば、多少は見逃してもいいのではないでしょうか。ポジティブな動機に基づく自分をよく見せようとする行為は、コミュニケーションの活性化や評価を求める努力につながるからです。

■言動の背景にある「動機」を理解して評価する

結論を言うと、自分をよりよく見せようとする人を単純に「信用ならない」と捉えるのは得策ではありません。上方比較する人は、周囲から失望されないよう努力したり能力を磨いたり、難しい課題をクリアしたりすることで、結果としてウソを本当に変えてしまうことも多々あります。「ウソと夢や理想は紙一重」と言うではありませんか。

とはいえ、「話の盛り方」だけでは、その人がしているのは下方比較か上方比較かは分かりません。例えば、みんなで成し遂げたプロジェクトにおいて「自分の成した貢献度が高かった」というような話は、動機こそ異なっても盛り方はあまり変わりません。

それでは、どうやって「動機の違い」を見破るのか。そこで重要になるのが、モチベーションリソースの確認です。採用面接で過去の頑張ったエピソードを聞いたとき、その話の背景にある動機を探る「なぜ頑張ることができたのか」を掘り下げて聞くことでその人の根っこを確認するのです。

上方比較の人であれば「自分もああなりたかった」「あれを目指していた」と前向きの答えが返ってきますし、下方比較の人なら「周りは全然ダメだったけど、自分はできた」などと後ろ向きの答えが返ってきます。

様々な行為の背景の動機をその都度丁寧に聞いていけば、その人が「上方比較」の人なのか「下方比較」の人なのかは、自ら分かってくることでしょう。

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