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計り知れないイタリアの名DF効果

林壮一ノンフィクションライター
AP/アフロ 元イタリア代表の名DF、ジョルジョ・キエッリーニ

 昨シーズン、創立から僅か5年でMLSを制し、アメリカサッカー界の頂点に立ったLAFC。連覇を狙う今季も、現在、西地区で2位と十分優勝を射程圏内に捉えている。

撮影:筆者
撮影:筆者

 その要となっているのが、CBのジョルジョ・キエッリーニだ。LAFCの一員となったのが2022年6月末と、まだ1年強しか経っていないが、いぶし銀のプレーでチームを牽引する。彼の存在が無ければ、去年の優勝も無かったであろう。

まさしく百戦錬磨の世界的CB
まさしく百戦錬磨の世界的CB写真:Maurizio Borsari/アフロ

 イタリア代表117キャップを誇り、プロ生活23年目を迎えたキエッリーニ。相手の攻撃の芽を一早く摘み、1対1で絶対に負けない。アズーリ引退後に米国にやってきたが、ワンプレー、ワンプレーで格の違いを見せつけている。

 来る8月14日に39歳のバースデイーを迎える彼は、週に2試合をこなすことは流石に困難となっているが、彼のいるLAFCとそうでない日では、まるで別チームだ。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 LAFCとキエッリーニの契約は、週給で9万2000ユーロと言われているが、ある意味、安い買い物だったかもしれない。1年前のLAFCには無かった勝者のメンタルを、彼が植え付けた感がある。

撮影:筆者
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 昨季、キエッリーニがホームでの初戦に出場した日、試合後の記者会見で私は彼に、イタリアのサッカーとMLSの違いとは何か? また、アメリカのサッカーで最も素晴らしいと感じる点は? と質問した。

 トリノ大学で経済商業学と経営管理学の学士を得ているキエッリーニは、流暢な英語で丁寧に応じた。

 「MLSはスペースが広く開いており、イタリアリーグよりもミスが多いのでカウンターアタックに繋がりやすいですね。フィジカルなサッカーだな、という印象です。でも、私は多くのリスペクトを払っていますよ。ヨーロッパと比較し、簡単だなんてまったく感じません。自分の経験を生かして、アメリカのサッカーに適応しなくては。

 ファンの熱狂ぶりには大変驚いています。今日も2万人以上が詰めかけたんですよね。様々な国の選手がやって来て、MLSは成長中です。私も負けないようにしなくては」

撮影:筆者
撮影:筆者

 その言葉通り、LAFCを強豪に変貌させたキエッリーニ。目下10勝6敗7分けで、西地区首位のセントルイス・シティーFCを4ポイント差で追う。先週の直接対決では3-0で完勝したが、中2日でのミネソタ・ユナイテッド戦でLAFCはキエッリーニを温存し、ピッチに投入したのは77分のことだった。

 背番号14のベテランCB無しでLAFCの実力は半減。7月15日のゲームは先制点を奪いながらも追いつかれ、1-1に終わる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 MLSはこれから暫く、カップ戦の時期となる。LAFCはいかにキエッリーニを休ませるのか。リーグ後半も、彼から目が離せない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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