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疑問視されている統一ライト級戦の結果

林壮一ノンフィクションライター
写真:AFP/アフロ 30戦全勝15KOとなったヘイニー

 デビン・ヘイニー(24)がワシル・ロマチェンコに判定勝ちしてWBA/WBC/IBF/WBO統一ライト級タイトルを防衛した。スコアは116-112、115-113、115-113。

写真:ロイター/アフロ

 今回の黒星によって17勝(11KO)3敗となったロマチェンコは、試合後の記者会見で語った。

 「判定は判定として、まずは私にチャンスを与えてくれた(プロモーターの)ボブ(アラム)にお礼を伝えたい。ただ、試合に勝ったのは自分だ。私がリングをコントロールし、すべてのラウンドを支配した」

 ロマチェンコのマネージャーであるエギス・クリマスも、「これはまさに強奪だ。ヘイニー陣営にとってはクリスマスが夏にやってきたようなもの。我々はネバダ州アスレティック・コミッションに抗議を申し入れる。この世に正義があることを示したい。こんな不公平を認めてはいけない」と述べた。

写真:ロイター/アフロ

 そして、私が意外に感じたのはボブ・アラムの次の言葉である。

 「スコアを耳にした際、誰もが唖然としていたが、私はプロモーターなのでコメントするつもりはない」

 かつてのアラムは、自分が抱えていたエリック・モラレスやホセ・ルイス・カスティーリョが敗れた折に、レフェリーやジャッジに不満をぶつけたものだ。が、91歳となり落ち着いてしまったか。

 MGMグランドガーデン・アリーナに勝者としてヘイニーの名がコールされた際、会場のファンは、リング上に激しいブーイングを浴びせた。

写真:ロイター/アフロ

 35歳のベテラン、ロマチェンコの国籍はご存知のようにウクライナだ。ロシアによる侵攻を受け、彼はボクシングに集中できない日々を送った。ファイターとして残された時間が長いとはいえないロマチェンコにとって、酷過ぎる状況であった。それでも3階級制覇を達成した男らしく、万全に仕上げてヘイニーとの戦いの日を迎えた。

会場で戦いを見詰めたスティーブンソン
会場で戦いを見詰めたスティーブンソン写真:ロイター/アフロ

 リングサイドから同ファイトを見詰めた2階級制覇中のシャクール・スティーブンソンも、ロマチェンコの勝利を唱えている。

 「ロマチェンコは文句なしでチャンピオンになるべきだった。彼は勝ったよ。よりクリーンなパンチを放っていたし、きれいなパンチをヘイニーに打ち込んでペースを握った」

Esther Lin/SHOWTIME ガルシアは以前から、ロマチェンコを尊敬していると話す
Esther Lin/SHOWTIME ガルシアは以前から、ロマチェンコを尊敬していると話す

 ライアン・ガルシアもSNSで、勝者はロマチェンコだと綴った。

 アリーナのブーイングは大きかったが、再戦ムードにならない。「リングに戻るよ」と発言したロマチェンコの今後が非常に気になる……。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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