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世界王者の手ほどきを受けた元Jリーガー

林壮一ノンフィクションライター
撮影:筆者

 JR「北浦和」(京浜東北線)駅東口から徒歩3分の場所に建つ『シュガーフィット・ボクシングジム』。WBAスーパーバンタム級チャンピオンだった下田昭文が2019年11月にオープンしてから、早3年半。現在はおよそ150名の会員が通い、軌道に乗っている。

撮影:筆者
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 元世界チャンピオンの丁寧な教えが話題となり、女性会員もおよそ4割を数える。そして浦和と言えば言わずと知れたサッカー・タウン。先日、シュガーフィット・ボクシングジムに、昨年までJリーガーだった高瀬優孝が体験に訪れた。元々ボクシングに興味を持ち、元WBAスーパーフェザー級スーパーチャンプの内山高志とも交流がある。今季からコーチとして歩み始めた高瀬にとって、シュガーフィットでの70分は大いなる学びの時となった。

撮影:筆者
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 ファーストラウンド、ロープを跳ぶ高瀬に「顎を引いてください」と、指示を出す下田。高瀬の口からは「使う筋肉が全く違うので、戸惑いますね」という言葉が何度も漏れた。

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 ロープが終わりリングに入ると、下田はジャブ、ステップしながらジャブと、基本を伝える。高瀬の額からは、瞬く間に汗が零れ落ちる。偶然にも両者は揃ってサウスポーである。

 下田は「失敗を気にしないで、パンチを出してください。こちらが修正していきますから」と声を掛けた。

 ステップインしながら、バックステップしながらのジャブを数ラウンドやると、次はワンツー。

 下田が発した「速く動こうと思わないでいいです。ゆっくり丁寧にやりましょう」「焦らないで」という言葉には説得力があり、温かい。流石は世界王者にまで上り詰めた男である。

撮影:筆者
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 サンドバッグ打ちのメニューも、「顎を引きましょう」「ナックル2個で当てる感覚で、腰を回転してください」「母指球でバランスをとることを意識してください」「顔が動かないように」と、シンプルに、かつ的確にアドバイスした。

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 最後はミット打ちで仕上げると、下田が語った。「飲み込みが早いですね。才能は滅茶苦茶ありますよ」

 一方の高瀬は「体の使い方が難しいです。サッカーでは肩甲骨を動かすことなんて無いですから。でも、アスリートとしては絶対に使った方がいい。今日の学びを自分のなかに落とし込んで、指導に生かしたいです」と話した。

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 下田昭文といえば、4月23日に銀座で結婚パーティーが開かれたばかりである。100名ほどの友人、知人たちに祝福された。小林昭司(セレス小林)、内山高志、小堀佑介、伊藤雅雪といった元世界王者たちも駆けつけた。

 どうか伴侶と共に、浦和の街にボクシングの火を灯してほしい。彼の指導は、間違いなく本物だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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