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IBF北米&WBCシルバー王座空位決定戦

林壮一ノンフィクションライター
撮影 著者

 現地時間9月17日、マッチルームは興行に心憎い演出を加えていた。カネロvs.GGG3の前座に、ゴロフキンと同じ国籍を持つ18勝(14KO)1敗のスーパーミドル級ファイター、アリ・アフメドフを出場させたのだ。

 対戦相手のプエルトリカン、ガブリエル・ロサドは16勝(15KO)15敗1分け。コーナーにフレディ・ローチがいたものの、戦績が示すように噛ませ犬だった。

 試合開始のゴング直後から両者はペースを取り合うも、決め手は無し。ジャブがなかなか当たらない展開である。時にアリも力を込めた右を振るうが、なかなかロサドを捉えられない。

 4ラウンド終盤、アリの左フック、右ストレートがヒット。徐々にアリの距離となり、カザフスタン人ファイターの手数が増す。コンビネーションを放つようにもなる。

 とはいえ……アフメドフは流れを引き寄せるものの、クリーンヒットの少ないファイトだ。

撮影 筆者
撮影 筆者

 7回、ロサドの細かいパンチに対し、アリはビッグショットを狙うが、決め手の無いままラウンドが進む。9回、ロサドのカウンターの右がヒットする。

 しかし、レベルの低い内容に記者席の方々からボヤキが聞こえた。両者共に上を目指せる選手ではなく、凡戦に終わる。スコアは3名のジャッジ全てが100-90で、アフメドフを支持。

撮影 筆者
撮影 筆者

 まだメインイベントまでは時間があり、アリーナに座る客もまばらだったが、試合と客数が比例するかのようだった。だが、カザフスタン人ファンのナショナリズムを擽り、この試合をビッグマッチの前座に組み込み、尚且つ2本のベルトを賭けてしまうマッチルームのビジネス的手腕を見る思いがした。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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