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36歳、元3階級制覇王者のカムバック

林壮一ノンフィクションライター
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 IBFバンタム級、WBCスーパーバンタム級、 WBCフェザー級タイトルと、3階級を制したアブネル・マレス(36)がリングに上がると、クリプトドットコム・アリーナは割れんばかりの大歓声に包まれた。

 4年3カ月ぶりのカムバック。マレスを2度下したレオ・サンタ・クルスもリングサイドから、かつてのライバルに視線を送った。

Stephanie Trapp/TGB Promotions
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 31勝(15KO)3敗1分けであるマレスの対戦相手として選ばれたのは、25勝(12KO)4敗のミゲル・フローレス(30)。

 マレスにはパンチを見切る力、カウンターを打ち込むタイミングを計る能力は残っていた。しかし、打たれ脆さとパワー不足は否めない。

Stephanie Trapp/TGB Promotions
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 序盤は安牌であるフローレスをグラつかせるシーンもあり、ファンを沸かせたが、徐々に弱々しさを露呈していく。

 7ラウンドの序盤にフローレスのパンチをもらいながら後退するシーンを目にした際には、40歳でリングに復帰し、無残な姿となったシュガー・レイ・レナードのラストマッチが脳裏をよぎった。

Stephanie Trapp/TGB Promotions
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 フローレスにとって、マレスは憧れの対象だったのであろう。遮二無二倒しにはいかず、安全運転に終始した。終盤に向かうにつれ、クリンチするシーンが目立ったマレス。

 結局、96-94でマレス、95-95が2名でドローに終わった。

Stephanie Trapp/TGB Promotions
Stephanie Trapp/TGB Promotions

 元チャンピオンは言った。

 「4年以上のブランクがあったが、現役選手として若手に勝つだけのものはまだ持っている。それを見せられただろう。ファンも幸せを感じた筈だ。ジャッジはドローとしたが、自分が勝ったと思う」

 しかしながら……SHOWTIMEのコメンテーターとして稼げるのであれば、それに集中した方がいい。深刻なダメージを受けないうちにリングを降りるべきだーーーとしか感じられないファイトであった。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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