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マディソン・スクエア・ガーデンのリングに上がる筈だった25戦全勝22KOのアジア系アメリカン

林壮一ノンフィクションライター
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 25戦全勝22KOでIBFスーパーライト級12位にランクされるアジア系アメリカン、ブランドン・リーは、8月6日にニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンのリングに上がる予定だった。ジェイク・ポールvs.ハシーム・ラクマン・ジュニアの前座に組み込まれたのだ。

 が、ご存知のようにラクマン・ジュニアの不可解な主張で、興行が中止となった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20220801-00307650

 リーの対戦相手は17勝(10KO)1敗3分けのウィル・マデラと決まっていた。身長で8センチ、リーチで6センチ、リーにアドバンテージがある。近く、同カードは実現するのではないか。

 ここ16試合中15のノックアウト勝ちを飾っているリーだが、今年4月のファイトでは力み過ぎたのか、判定まで縺れ込んだ。パンチ力だけでなく、足も使えるリーは、「伝説の地、マディソン・スクエア・ガーデンで戦えることが嬉しい。26勝無敗としてみせる」と決意表明していた。

//マディソン・スクエア・ガーデン
//マディソン・スクエア・ガーデン写真:イメージマート

 今日、140パウンドのスーパーライト級は、激戦区となっているライト級に比べて層が薄い。同じ年齢であり、同じ州の出身であるライアン・ガルシアと戦うのも、元WBA/IBF/WBO統一ライト級王者のテオフィモ・ロペスを相手にするのも、あるいはリオ五輪後にプロに転向し、15戦全勝15KO中のゲイリー・アントゥアン・ラッセル戦が決まっても面白そうだ。

 流れたとはいえ、SHOWTIMEでの放送が決まったということは、近い将来世界タイトル挑戦が決まる可能性ありと考えて良いだろう。

(C)Esther Lin/SHOWTIME
(C)Esther Lin/SHOWTIME

 次戦でリーがどのような戦いを見せ、次に繋げるかが見物である。また、本コーナーで過去に何度か触れたが、リーがカリフォルニア州立大学サンベルナディーノ校で刑事司法を専攻し、文武両道を己に課しているファイターでもある点にも筆者は注目している。

 アジア人としてアメリカ合衆国で生きていると、思わぬところで差別と出会う。多くのマイノリティー家庭は、それに対抗するために学を身に着けろ、と説く。リーの生き方は、次世代のアジア系アメリカンにもメッセージを突き付ける。

 今後のリーの動きに期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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