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アルゼンチン人コーチが語る「W杯の組み合わせを見て」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、チェンマイ・ユナイテッド(タイ1部リーグ)所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 2019年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を執る彼が、ワールドカップ本大会のE組に入ったサムライブルーについて語った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 日本が入ったグループE、かなり厳しいですね。ニュージーランドとコスタリカなら、僕はコスタリカが勝ち上がってくると予想します。その前提で話します。

 まずは、11月23日がドイツ戦ですか。ドイツの強さは、改めて述べるまでも無いでしょう。4回優勝し、そのうちの2回は僕の国、アルゼンチンを決勝で下しています。18回連続出場で、20度目のワールドカップとなります。

 身体が大きく、技術も高く、ファイティングスピリッツも物凄くある。そして、国家としてもサッカーが根付いています。やってみなければ分かりませんが、日本が勝つのは容易ではありません。引き分けられれば御の字でしょうが、それも可能性は低いと言わざるを得ないですね。とにかく世界の強豪です。

写真:ロイター/アフロ

 第2戦は11月27日ですね。コスタリカはブラジルW杯でベスト8に入ったこともあり、国民にサッカーが浸透しています。

 今回の予選では苦しんでいますが、実力はありますよ。中米ではメキシコに次ぐチームだと言っても良いでしょう。

 速いし、激しいサッカーをします。そしてトップ選手はアルゼンチンやコロンビアのクラブに所属して揉まれていますから、勝負強さも身に付けていますよ。日本が勝ち点3を奪うとしたら、ここかなぁと思いますが、現状では厳しいでしょう。

写真:ロイター/アフロ

 12月1日がスペインですね。僕の国もスペインのメディアも「日本には間違いなく勝てる」と報じていますが、当然の見解です。日本代表は7大会連続W杯出場ですが、スペインは12大会連続にして、トータルで16回目。2010年の南アフリカ大会では優勝していますよね。

 ロンドン五輪では日本が1-0で勝ちましたが、ワールドカップと五輪は違いますからね…。スペインの力を思い知らされるんじゃないかな。

 ドイツやスペインに比べたら、7大会連続出場という数字は、まだまだだって分かりますよね。

写真:ムツ・カワモリ/アフロ

 オーストラリア戦の日本代表は、三笘薫の活躍で勝利出来ましたが、内容は良くなかった。森保一監督は、引き分け狙いでしたよね。

 その後のベトナム戦も酷かったですね。前の選手が点を取れないから、キャプテンの吉田麻也がオーバーラップしてこぼれ球をゴール。追加点のチャンスを彼は外しましたが、「見ていられないから俺が行く!」みたいな得点でしたね。

 ベトナムは最終予選で最下位だったチームです。そんな相手に苦戦していてどうするんですか? W杯の舞台でアジアの代表は、楽な相手と認識されているんですよ。アジアで断トツだとしても、世界の舞台ではなかなか通用しません。

 あんなサッカーでは「参加することに意義がある。ワールドカップに行ってきます」で終わってしまいますよ。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

 FK、CKのキッカーさえ決まっていませんよね。昔の本田圭佑とか中村俊輔みたいな「俺が決めてやる!」という存在がいません。

 左の三笘薫、右の伊東純也は欠かせません。経験のある乾貴士、名古屋グランパスの相馬勇紀には入ってほしい。今の攻撃陣ではバリエーションが少な過ぎますよ。

 11月までに、まだ時間がありますから、もう一度しっかりメンバーを選んで、整えたうえで本番を迎えてほしいですね。日本の飛躍を期待するからこそ、僕はそう願います。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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