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8日、ライト級タイトルを獲る!

林壮一ノンフィクションライター
撮影:筆者

 2月8日に行われる日本ライト級王座決定戦まで、残すところ3日となった。同級1位の鈴木雅弘と拳を交える、現在4位の宇津木秀は言う。

 「非常に調子がいいです。これまでで最高のコンディションですね。やはりタイトルマッチですから、モチベーションが上がります」

 目下、9戦全勝7KO。鈴木とはアマチュア時代に3度対戦し、2勝1敗だ。

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 「鈴木は巧い選手ですし、パンチもありますから、ディフェンスを意識して練習を積んできました。自分のスタイルを崩さずに、パンチをもらわないことを課題としています。

 どんな勝ち方でもいいので、とにかく毎ラウンド、ポイントを取って圧倒したいですね」

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 昨年4月、前日本ライト級王者、吉野修一郎から宇津木に対戦の打診があった。しかし、新型コロナウイルスに感染してしまった宇津木は、オファーを断らざるを得なくなる。入院し、静養を余儀なくされた後、7月14日にノーランカーとファイトした。

 「間隔を空けずに試合を、ということでリングに上がりました。でも、計量の4日前、ランニングを終えて1時間くらいしたところで右膝に違和感を覚えたんです。翌日、急いでドクターに診てもらうと、『水が溜まっているようだ』と。即、治療を受けました」

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 万全のコンディションではなかった宇津木は、苦戦を強いられる。ファーストラウンド、自身が左アッパーを打とうとした際に、相手の左ストレートを浴びてグラつく。そこにパンチをまとめられ、両膝をつく形でダウンを喫した。

 「リングで正座したような感じになってしまいました。序盤は、ちょっと気を抜いてしまった感があります。コーナーから『集中しろ!』という指示があり、ハッとしました。

 その後は腹が効いているようだったので、ボディを狙い続けての判定勝ちでした。相手は腹を嫌がっていましたし、ダメージを負っていましたから、倒し切りたかったですね」

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 「プロはどんな状況に置かれても勝たなければいけない。最後まで諦めずに戦えたことと、苦しい局面でも自分のスタイルを貫けたことが収穫です。ピンチを凌ぐ策を学べたと思っています」

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 宇津木はプロボクサーの傍ら、パーソナルトレーナーとして収入を得ている。ダイエット目的の主婦や、ストレスを発散させたいという若者など、6名ほどにボクシングを通じたレッスンをしているのだ。

 「誰かに教えることで、ガードの位置や体重移動など、自分が忘れていたことを再確認することが、ままあります。

 ボクシングの動きに加えて、体を引き締めたい男性には、自重トレーニングで出来るケガをしない身体、動ける身体を身に付けるようなメニューを組んでいます。ポッコリしたお腹の方には、2分の腹筋メニューを作っています。女性はランジやバントを使って、お尻周りや下半身をシェイプアップするような内容を作っているんですよ」

撮影:筆者
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 昨年末、宇津木のジムメイトである谷口将隆がWBOミニマム級タイトルを獲得し、ワタナベジムは今日、京口紘人と合わせて2名の世界チャンピオンを抱える。

 「谷口さんの試合は、会場から目にしました。最高の試合をやりましたね。物凄く感動しましたね。自分も谷口さんに続くぞ、やってやる!!という気持ちです。必ず勝って、日本ライト級のベルトを巻きます」

2021年12月14日にウィルフレド・メンデスを11ラウンドTKOで下してWBOミニマム級王者となった谷口   撮影:筆者 
2021年12月14日にウィルフレド・メンデスを11ラウンドTKOで下してWBOミニマム級王者となった谷口   撮影:筆者 

 その谷口は後輩について語る。

 「宇津木と同じ歳の三代大訓(元OPBFスーパーフェザー級チャンピオン)が、彼の前を走っていますよね。僕もずっと京口を追いかけていたので、悔しい気持ち、追いつきたい思いが痛いほど分かるんです。

 だからこそ、巡ってきたこのチャンスを生かして、絶対にタイトルを獲ってほしいです。日本王者になる実力は確実にありますから、試合当日は自分の力を存分に発揮してもらいたいですね」

 2月8日の後楽園ホールで、宇津木秀は何を見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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