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6回KO勝ちで存在感を示したWBOライト級13位

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 12月2日、元OPBFスーパーフェザー級チャンピオンの三代大訓がライト級に転向後、2戦目のリングに上がった。対戦相手は元日本ライト級王者の西谷和宏。

 試合前、三代は「今回、最高のコンディションを作れました。フィジカルトレーニングを取り入れて股関節の働きがスムーズになり、下半身のバランスがとても良いです。力まなくても強いパンチを打てるようになりました」と語っていたが、その戦い振りは自信に溢れており、かつ冷静だった。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 元々、目のいい三代だが、西谷のパンチをほとんど食わずに見切った。

 「西谷は去年の10月に現IBFスーパーフェザー級王者の尾川堅一選手と戦い、判定負けしたものの、3ラウンドにダウンを奪っていますね。パンチがありそうだったので、そこは警戒しました。また、KO負けの無いタフな選手だという印象でした。彼は左フック、左ボディを得意としています。オーソドックスですが、スイッチして放つ左のパンチが巧みだなと感じていました。

 ですから、僕は西谷がスイッチした瞬間に間合いを詰めて、パンチを殺す策をとったんです。前後の動きで、ファーストラウンドから西谷の距離を殺すことが出来ました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「僕は試合の度に、まず『絶対に負けないボクシング』を考えます。負けたら何も残りませんから。泥臭くてもいいので必ず勝つ。それが一番大事ですよね。

 西谷戦は2ラウンドが終わって『これなら負けないな』と思いました。相手のパンチ力、タイミング、足の動きを感じての判断です。それ以降は、どうフィニッシュするかをイメージしていました。試合前は、判定での勝利でもいいと感じていましたが、やはり良い勝ち方をしたかったです」

 第5ラウンド終盤に右ストレートを正確にヒットし、ダウンを奪う。

 「フィジカルトレーニングの成果だと思います。脱力した状態でスコーンと打てました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 翌6ラウンド、西谷の攻撃をブロックしながら放ったカウンターの右フックで元日本王者を沈めた。

 「西谷は同じテンポでパンチを打っていましたし、倒せたらいいな、倒せるかなと。KOを狙った訳ではなかったのですが、会心の一発になりました」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 三代にとっては、2020年12月26日に元WBOスーパーフェザー級王者、伊藤雅雪を判定で下して以来のファイトだったが、このクラスの日本人選手としてはトップレベルの実力者であることをアピールした。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「伊藤さんに勝ち、現世界チャンピオンである尾川選手を苦しめた西谷も下したことで、世界が近付いたんじゃないかという気持ちが初めて芽生えました。今まで、何度か周囲の人が『世界』という言葉を口にしましたが、半信半疑だったんです。でも今は、現実味を帯びてきましたね」

 三代陣営は、上のステップを狙わせるべく動き始めるという。2022年、三代大訓の飛躍に期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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