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得点王を狙う、難民の子として誕生したストライカー

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 MLSで今シーズン26試合に出場し、17ゴールで得点王争いのトップを走るオラ・カマーラ(32)。DCユナイテッドの背番号9は、U17ノルウェー代表を皮切りに、各年代別代表に選ばれ、Aキャップは17を数える。

写真:ロイター/アフロ

 DCユナイテッドは、13勝14敗5分けで東地区7位と苦しんでいるが、僅かな隙を逃さないカマーラの得点感覚は目を見張る。184センチ、82キログラムの体躯で、ダイビングヘッドを得意としている点も魅力だ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 1989年10月15日にノルウェー、オスロで誕生したカマーラだが、父親は西アフリカのシエラレオネから難民として当地に辿り着いた。

 カマーラの誕生後、両親は毎月第二土曜日・日曜日にノルウェー人ファミリーに息子を預けた。スカンディナヴィア文化に触れさせる為である。

 その一つがサッカーだった。1904年にオスロに創立されたフリッグ・オスロFKの一員となり、頭角を現す。16歳でスターベクでプロデビューした。以来、ノルウェー国内で4チーム、オーストリアで2チーム、ドイツ、米国、中国と渡り歩く。

写真:ロイター/アフロ

 そして、今季、肌が合わなかった中国リーグを去り、MLSに舞い戻って来た。柔らかく、しなやかな体と、ポジショニングの良さ、そしてスピードを武器にゴールハンターとなっている。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 カマーラの献身的な働きは、難民の子として艱難辛苦に耐えながら、サッカーで人生を築いた執念を感じる。現在は代表チームから遠ざかっているが、MLSではまだまだ活躍できそうだ。

 英語もマスターし、米国に溶け込んでいる点も称えられる。親の苦労を十二分に理解し、己の人生を歩んできたカマーラのプレーに注目だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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