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80秒で決着がついたWBA正規ミドル級王座決定戦

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 見事なKO劇だった。2021年初頭に村田諒太がWBAスーパー王者に昇格したことで、空位となった同正規タイトル決定戦は、僅か80秒でエリスランディ・ララ(37)が、トーマス・ラマンア(29)をKOして新チャンピオンとなった。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 アマチュア世界選手権優勝者の肩書を引っ提げ、祖国キューバから米国に亡命したララは、WBAスーパーウエルター級王者となる。2018年4月7日に行われた同スーパータイトル8度目の防衛戦、及び、IBF王者ジャレット・ハードとの統一戦で敗れた。その後、同正規王座に就き、今回はミドル級に上げて勝利を目指していた。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 試合開始のゴングが鳴ると、サウスポーのララは、まずボディへのジャブ、ワンツーを放ち、ラマンアの意識をボディに向ける。更に49秒、51秒、63秒と3発連続で顎を狙ったワンツーを見せる。

 そして、ラマンアが左ストレートを警戒したところに、角度を変えたオーバーハンドを右顎の外に見舞い、試合を終わらせた。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 してやったりのノックアウトで2階級を制したララの戦績は、28勝 (16KO)3敗3分けとなった。

 新チャンピオンは試合後に語った。

 「ラマンアは記者会見で俺をKOするなどとほざいてたが、逃げているだけで何もできなかったな。おそらく考え過ぎていたんだろう。

 ミドル級選手として、強さと鋭さを見せられたと思う。今後はこの階級でも、154パウンド(スーパーウエルター級)でもビッグマッチを希望していく。WBCスーパーウエルター級チャンプのジャーメル・チャーロと、WBO同級王者ブライアン・カルロス・カスターノとの統一戦の勝者と戦いたい。ジャーモール・チャーロ(WBCミドル級チャンプ)とは、ここ数年同じジムで練習しており、家族のような付き合いだ。でも、ビジネスとなったら、やはり戦いたい。

 今、肉体的に非常にいい状態にある。自分の体が『もう無理だ』というところまで、リングに上がりたい。キャリアを通じて、ダメージは負っていないし、あと3年はトップ選手として戦えると思っている」

 確かに、37歳という年齢をまったく感じさせないパフォーマンスだった。チャーロ兄弟のどちらと対戦しても、友人対決として話題になるだろう。

 非常に見応えのあるファイトで、ララは自身の価値を大いに上げた。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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