Yahoo!ニュース

33歳のベテランファイターが見せた気迫の2回KO勝ち

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 第2ラウンド2分19秒、オハイオ州クリーブランド出身の33歳、テレル・ガシェーの狙い澄ました右ストレートが、サウスポーであるジャモンテ・クラーク(26)の顎を捉える。

 クラークは腰からキャンバスに沈んだ。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 何とかクラークは起き上がり試合は続行されたが、ガシェーがコーナーに詰め、右ストレート、右ストレート、左フック、右フック、左フックと畳みかけたところで、レフェリーが両者の間に割って入って試合を止めた。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 ノックアウトタイムは同ラウンド2分44秒。

 ガシェーは白星を付け加え、22勝(11KO)2敗1分けに、クラークは15勝(7KO)2敗1分けとなった。

 ガシェーに単発のパワーパンチで相手をKOしようという思いはなく、初回からジャブを効果的に放ってリズムを掴んだ。

 試合を決めた一発も、相手の動きをよく見たカウンターであった。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 試合後、勝者は言った。

 「ジャモンテがタフだってことは分かっていた。昔から、彼のことは知っている。自分のコーチが彼の試合の映像をじっくり見て対策を考えてくれていたので、KO出来ると思っていた。

 ジャモンテは力を込めて左のパンチを打つから、ガードが開くんだ。そこに俺の右をお見舞いするっていう作戦通りの展開になったね」

 昔から、とは、クラークもオハイオ州シンシナティーが故郷であり、同じ州で育ったのだ。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 2017年10月14日、ガシェーはWBAスーパーウエルター級王者のエリスランディ・ララに挑み、ワンサイドの判定負けを喫した。2度目の世界タイトル挑戦を目指しているが、昨年9月19日に組まれた同級WBCシルバータイトル王座決定戦でも敗れている。

 後が無い状態で迎えた一戦で、イメージ通りのファイトを演じたガシェーは意地を見せた。

 「誰でもいい。世界タイトルに挑戦したい。俺はベルトが欲しいんだ」

 会心の笑みの裏に、彼が乗り越えて来たものを感じた。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事