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「超絶技巧」4Qの17得点。ベテランの底力を見せたカーメロ・アンソニー

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3Qを終了した時点で、ポートランド・トレイルブレイザーズは89-93でフィラデルフィア・セブンティーシクサーズにビハインドを負っていた。今季は20点差でリードしていても、中盤以降に崩れて逆転負けを喫してしまう脆さを目の当たりにしていただけに、この日も負けてしまうのか……と私は感じていた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 しかし、である。

 最終Qに、大ベテランのカーメロ・アンソニー(36)が爆発した。試合終了10分53秒前に、ジャンプシュートを決め2点差に。その後、3本連続で3ポイントを成功させてあっさりと逆転。続いてターンしてのフェイドアウェイ、ジャンプシュート、2本のフリースローと、圧巻のパフォーマンスを見せた。

 対戦相手は下位のチームではない。東地区首位を走るシクサーズだったのだ。結局、118-114でブレイザーズが勝利した。

2005年のアンソニー。シュートフォームは若き日と変わらず、美しい。
2005年のアンソニー。シュートフォームは若き日と変わらず、美しい。写真:ロイター/アフロ

 試合後のズーム会見で、アンソニーはさばさばした表情で語った。

 「東1位の強豪が相手だし、勝たねばならないゲームだった。4Qの俺は、闘志が漲っていた。いいリズムが生まれたし、自分たちのエネルギーを感じたな。どれだけ大事なゲームであるかをチーム全体が理解していた。勝つために、全力を尽くしただけさ。

 チームメイトが俺を信頼してくれているし、やるべきことをやらないとね。勝利はタフさやエネルギーをもたらしてくれる。俺たちはお互いを信じている。そのうえで集団として成長しようとしている。勝利することで、プラスの要素が加わるんだ。明日の試合に向けても、準備万端だよ」

 それにしても4Qのアンソニーは、神懸かっているかのようだった。この日、ブレイザーズの背番号00は25分35秒間のプレーで24得点を挙げたが、そのうちの17が4Qでのゴールである。

ニューヨーク・ニックス戦
ニューヨーク・ニックス戦写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 スターティングとして出場することもあるが、今シーズンのアンソニーは、シックスマンの役割を与えられている。これまでの平均プレー時間は25.4分。ベテランらしく、ここぞという時に深みのあるプレーを見せる。

 24得点は、アンソニーにとって今シーズンのハイとなった。直近5試合において20得点超えが4回と、好調を維持している。

 2日前のオーランド・マジック戦で、アンソニーはNBAでの通算得点が26711となり、歴代12となったばかりであった。が、今夜の勝利も通過点でしかないようだ。

2月11日のシクサーズ戦でお披露目となったブラウンのユニフォーム
2月11日のシクサーズ戦でお披露目となったブラウンのユニフォーム写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 11日のシクサーズ戦で、ブレイザーズは新たなデザインのユニフォームを使用した。ファンは、この茶色を目にする度に、2021年2月11日の4Qにおけるアンソニーの姿を思い起こすに違いない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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