ようやくケガが癒えた昨季チャンピオンのベテランポイントガード
昨シーズン、ロスアンジェルス・レイカースの一員として、"KING"レブロン・ジェームズと共にNBAチャンピオンとなったレイジョン・ロンド(34)。彼にとっては、2008年にボストン・セルティックスの若き司令塔としてVを飾ってから、12年ぶりの王冠であった。
ロンドは言った。
「最初のV時の俺は、21歳と若かった。33歳でのVは、8歳の息子が見ている前でだった。そこが大きな違いだ。息子が父の仕事を理解しながら現地で応援してくれたなかでチャンピオンとなれた。本当に素晴らしい体験だ」
昨シーズン、ロンドに与えられた役割は、スターティングのポイントガードではなかった。とはいえ、ベンチスタートながら、1シーズンのプレイオフでアシスト105を挙げた。ロンドがマークした数字は、2014年にマヌ・ジノビリが樹立した95を上回り、1971年のシーズン以来、最多となった。
若くしてチャンピオンとなったロンドは、正に怖いもの無しだった。翌2009年には「俺がチームを優勝に導いたんだ」と公言し、レイ・アレン、ケビン・ガーネット、ポール・ピアースら、セルティックスの中心選手たちを驚かせた。
ロンドはアシスト記録を作るために、自らシュートを打てる局面でも敢えてパスを選択した。当然のことながら、セルティックス内では彼に対する不満が大きくなっていく。一つになれないセルティックスは、王座から遠ざかった。
2011年プレイオフのことだ。"KING"レブロン・ジェームズ率いるマイアミ・ヒートに0勝2敗でリードされたセルティックスは、試合の映像を見ながら反省点を話し合っていた。自らがディフェンスに戻らないシーンが流れた際、ロンドはペットボトルを投げつけ、スクリーンを割ってしまう。この一件でセルティックスはチームとして壊れた。
2013年、右膝前十字靭帯を断裂したロンドは戦列を離れる。そしてダラス・マーベリックス、サクラメント・キングス、シカゴ・ブルズ、ニューオーリンズ・ペリカンズと渡り歩いた。<過去の人>と見られることも少なくなかった。
そんな日々を送りながら、ロンドの悪童ぶりは影を潜めていく。2018年にレイカースに移籍したロンドは、チーム内での己の立ち位置を理解する。シックスマンを受け入れ、チームに貢献するよう努めた結果、昨シーズン、チャンピオンの一員となれたのだ。
今季、ロンドは連覇を目指すレイカースを離れ、アトランタ・ホークスで再出発した。長く愛用した背番号9ではなく、7を付ける。
このチームのポイントガードはエースであるトレイ・ヤングだが、ロンドが担うのはそのバックアップだ。
開幕から3戦目のデトロイト・ピストンズ戦(現地時間12/28)に15分出場し、12得点8アシストをマーク。4戦目のブルックリン・ネッツ戦(12/30)では16分プレーし、6アシストしたが、右膝に痛みを覚える。
治療に専念せざるを得なくなったロンドは、1月15日のユタ・ジャズ戦まで欠場した。ジャズ戦で19分間コートに立ったロンドだが、3度もターンオーバーされ、得意のアシストも2と精彩を欠く。チームも92-116で敗れた。
故障がなかなか治らないのは、加齢のせいか----。ロンドの復帰第2戦となった16日のポートランド・トレイルブレイザーズ戦を現場で目にした。
この日のロンドもベンチスタートだった。
ティップオフされると、赤いヘアバンドをした背番号7はベンチから立ち上がって、監督以上にチームメイトを鼓舞する。平気な顔でコートに足を踏み入れ、審判にも言葉を掛けた。
ロンドに出番が回って来たのは、2Qの頭だった。ゆっくりとドリブルして、ブランドン・グッドウィン、トニー・スネルに鋭いパスを通す。
コートに入って1分14秒後、そして3分21秒後にアシストを記録。カットインしてのレイアップは外れたが、パスのタイミングの良さと戦術眼は、アシストを武器にNBAを生き抜いて来たロンドの足跡を再確認させるものだった。
味方フォワードであるジョン・コリンズがコートに倒れ、手を差し伸べて起こしたシーンを最後にロンドはベンチに下がった。2Qにおけるプレー時間は4分29秒。
86-86で迎えた4Qも、開始からコートに入り、4分28秒の間に2本のシュートを放った。しかし、いずれも決まらなかった。
合計の出場時間は8分57秒。アシスト2とリバウンド4という数字で終わった。試合自体も106-112で敗れ、今季のホークスの戦績は5勝7敗となった。
試合終了からおよそ10分後に始まったオンライン会見で、私はホークスのロイド・ピアース監督に背番号7について訊ねた。
ーーようやくレイジョン・ロンドが復帰しましたが、まだ右膝の回復に時間が掛かりそうですか? あなたはどう捉えていますか。
ピアース監督は答えた。
「今日の働きぶりには手応えを感じた。特に第2Qの彼はチームにとって、大きな戦力であることを示した。ウチがスローな展開の時に、流れを変えてくれる。今後、もっと試合を重ねれば、彼の良さをチームに活かせるだろう」
NBAで15年目のシーズンを戦うロンド。酸いも甘いも嚙み分けたベテランPGは、新天地でどんな活躍を見せるか。今夜の試合で最も印象的だったのは、コートサイドから何度も仲間に指示を出し、手を叩いていた姿である。