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誰もが待ち望む「NBA17年目のベテランが新しいユニフォームを着てコートに立つ日」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年1月20日に、サクラメント・キングスからポートランド・トレイルブレイザーズにトレードされたトレヴァー・アリーザは、ベテランらしくいぶし銀の仕事ぶりでプレイオフ進出に貢献した。

 試合前のウォーミングアップ時、トレイルブレイザーズのなかで最も念入りにルーティンワークをこなしていたのが、背番号8のアリーザだった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 だが、ストーブリーグ中にトレード要員となり、ポートランドを去る。デトロイト・ピストンズ、ダラス・マーベリックス間での三角トレード、さらにはオクラホマシティー・サンダーへトレードと新天地が目まぐるしく変わった。

 オクラホマシティーは、彼にとって10箇所目の所属チームである。年俸、1280万ドルと報じられたので、アリーザの評価は落ちていない筈だ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 新たなユニフォームに身を包んだ彼を目にしたいと思うのだが……。今季、オクラホマシティーは6試合を消化したが、アリーザはまだプレーしていない。

 自身の子供の親権を巡っての話し合いに時間をとられ、オクラホマシティーへの合流が遅れているのだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 1985年6月30日生まれで、現在35歳であるアリーザは、2009年にロスアンジェルス・レイカーズの一員としてNBAチャンピオンとなった。故コービー・ブライアントと共にリングを獲得したのである。

写真:ロイター/アフロ

 フロリダ州マイアミで誕生したアリーザは、幼少期に母親からバスケットボールをプレゼントされ、この競技に夢中になった。

 小学4年生でカリフォルニア州ロスアンジェルスに引っ越し、高校2年からNBAを意識してプレーした。高校卒業後は、1年のみ名門UCLAでプレー。

 2004年のドラフトで、2巡目43番目にコールされてニューヨーク・ニックスに入団し、同チームの最年少記録である19歳4カ月と4日でNBAデビューを飾る。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 その後、オーランド・マジック、レイカース、ヒューストン・ロケッツ、ニューオーリンズ・ホーネッツ等いくつものチームを渡り歩きながら、必ず自身の存在価値を証明して来た。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨シーズン、彼はロッカールームで私のインタビューに応じてくれたが、最も印象的だったのが、次の一言である。

「私は他者と自分を比較しようと思ったことはありません。自分が出来うる最大限の努力をして、ベストな自分を作ることが肝心だと信じています。バスケ選手としてだけでなく、人間としてもそうです。〈いつもベストな己を築くこと〉を目標に生きています」

 一年で中退し、プロを選択したとはいえ、UCLAの名監督が常々口にしていた言葉であり、同校バスケットボールチームの核となっているものだ。

 アリーザの発言を耳にした折、謙虚に物事を学ぶ彼の姿勢に心を打たれた。

 今シーズン、ベテラン紳士であるオクラホマシティーの背番号8が、どんな働きを見せるか、非常に楽しみである。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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