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アルゼンチン人コーチが指摘する「サムライブルーの迷走」

林壮一ノンフィクションライター
パナマに勝利したが、問題点も浮き彫りになったサムライブルー(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、パナマに1-0で辛勝したサムライブルーについて語った。

撮影:著者
撮影:著者

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中のサッカー選手が思うように練習できない状況に立たされています。各国の代表チームも、勿論そうです。

 そんななかで集まった日本代表。パナマ戦で何を見せてくれるかな? と思いましたが、まったくいいサッカーをしていませんでした。

 ヨーロッパ組と一言で括っても、選手が所属するそれぞれのクラブが、異なったサッカーをやっています。基本的な戦術を擦り合わせる時間もありません。だから、ピッチでもバラバラ、ちぐはぐな印象を受けました。

 サムライブルーは前に大きく蹴るのか、足元に出すのか、行き当たりばったりという感じでした。

 僕はエルサルバドル1部リーグのチームでコーチを務めましたが、その折、パナマ代表チームや、パナマのクラブを何度も目にしました。この10年での成長は目を見張るものがあります。昨今、国全体でサッカーに力を注いでいるんですよ。

 中米では、メキシコ、コスタリカに次ぐ強さだと言っていいでしょう。だから手を焼いたのかもしれませんが、実力的には日本とほぼ互角でしたね。

 日本は、DFラインからロングボールをFWに送るシーンが多かったですね。でも、それはキープできる、シュートまでいける、相手のセンターバックに最前線で競り勝てる選手がいて初めて、可能になります。

 大迫勇也みたいにポストプレーが出来るFWがいれば、それもいいかもしれません。が、南野拓実はそんなタイプじゃない。一体、何をしたいのか分かりませんでした。

 高いボールで得点に結び付かないのなら、やはりパスを繋ぐサッカーをしなければいけない。それが出来なかったですよね。狙ってもいなかった。

 時々、GKからボランチにボールが渡るのですが、その後、前に繋がらない。サイドの選手が上がっていくとか、裏に走り込むとか、3人目の動きが無かったですね。

 いいクロスボールも見られませんでした。さらに付け加えると、日本期待の久保建英も生きていません。ゆくゆくは彼を日本代表の中心としたいのなら、もっと数多くボールに触らせてあげないと。

 日本代表vsパナマ戦と同じ日に、我がアルゼンチン代表vs.パラグアイのワールドカップ南米予選も行われました。結果は1-1です。内容は褒められたものではなかったです。

 でもね、日本との最大の違いは、『自国のサッカーはこうだ』というバックボーンがあって、共通認識がある点です。だから、前半の動きが悪くても、後半にリズムを産むことが出来ました。

 日本には、そういう<国として〇〇なサッカーをやるんだ!>という確固たるスタイルが無いんです。それが大きな問題です。

 監督がどういう戦い方をするのかを明確に打ち出して、選手全員が理解しなければいけません。

 17日のメキシコはもっと強いですよ。チームがどんな方向を向くのか、今後いかなるサッカーで戦っていくのか。森保監督は、まず戦い方をハッキリと打ち出さねばダメですよ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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