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2冠チャンプ田口良一が語った「井上尚弥vs.ジェイソン・マロニー戦」

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 2013年8月25日に日本ライトフライ級タイトルを懸けて井上尚弥と戦った田口良一。井上には判定負けを喫したものの、その後同級WBA/IBFと2冠を獲得した。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20191220-00155272/

 昨年、引退した田口は、井上vs.ジェイソン・マロニー戦をどのように見たか。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 いやぁ凄かったですね。自分は今でも、色んな人から「よく、あの井上を相手に判定まで粘ったね」って言われるんですよ。でも、それはもう過去のことです。自分と試合をした時の井上くんと、今の彼は全然違います。遥か上まで行ってしまったスーパーチャンピオンです。

 僕と戦った時もパンチ力はありましたが、もはや段違いです。パンチ力だけでも物凄く進化していますよ。

 今回の試合も、本当に素晴らしかったです。最後のカウンターは、かなり練習していたみたいですね。

 モロニーは打たれ強かったですよね。彼じゃなかったら、もっと早く終わっていたでしょう。 

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 1ラウンドは様子を見て、2回からだんだん圧をかけ始めて、中盤は距離を取って……と戦い方も巧かったですね。

 井上くんの圧力が「異様」としか表現できないほど、強かったです。3ラウンドくらいからかなりのプレッシャーを掛けて、相手は常に下がっている状態でしたよね。もう、KOするのは時間の問題だな、モロニーは苦しいだろうなと思って見ていました。

 5ラウンドに、ちょっとロープを背負うシーンもありましたが、何度か左フックのカウンターなんかをいいタイミングで合わせていましたから、どこで仕留めるのかな、と。毎ラウンド、ペースを変えて、試合を組み立てていました。カウンターを狙っていましたよね。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 肝が据わっていて、いつも落ち着いていますし、井上くんは本当にボクシングをする為に生まれて来た人なんでしょうね。

 自分も井上くんと勝負出来て良かったって、心から思います。それが後ろ盾となって、他の相手との試合の前は「彼ほどの強さじゃない。あの井上くんとやったんだから、大丈夫だ」って思えましたから。

 そんな感じで、井上くんとの一戦でメンタルが鍛えられました。

 彼はどこまで行くんでしょうね……。期待しながら見守りたいです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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