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メイウェザーが「俺を超える素材」と語った王者が2階級タイトルマッチでKO勝ち

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 ハローウィンの夜、アラモドームは9024名の観客で埋まった。新型コロナウィルス感染拡大により、今年3月より米国のボクシングイベントは無観客が続いていたが、解禁となって初の世界戦だった。

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
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 IBFバンタム級、WBCスーパーバンタム級、WBAフェザー級、WBAスーパーフェザー級と4階級を制したサンタ・クルス(32)は、5階級目を狙っていた。

 IBF/WBAスーパーフェザー級、WBAライト級正規と、これまでに3本のベルトを巻いたジャーボンテイ・デービス(25)は、今回、サンタ・クルスが腰に巻いていたWBAスーパーフェザー級タイトルも獲得した。

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
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 このファイトはWBAの異なった2階級のベルトが懸けられていたが、WBA正規ライト級タイトルマッチとして開催するべきではなかったか。

 ボクシング界としては、自粛明けのビッグマッチでPPVを売るためにも注目を集めたかったのは分かる。契約リミットをスーパーフェザー級としていたが、一つの試合で複数階級のベルトが懸けられるというのは、今尚、不可解だ。

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions

 2人のチャンピオンは足跡も実力も折り紙付きでカード自体は非常に魅力的だったが、蓋を開けてみれば、両者にはパンチ力に大きな差があった。サウスポーであるデービスの左ストレート、左アッパーは抜群の破壊力を見せた。

 それでもサンタ・クルスは4階級を制した闘志で、4ラウンド以降打ち合いを挑む。

 第6ラウンド、ローブローを浴びて動きの鈍ったスーパーフェザー級王者の顎に、デービスの代名詞とも呼べる左アッパーがヒット。WBAスーパーフェザー級チャンピオンの死角から放たれたこの一発が、決定打となった。サンタ・クルスはキャンバスに沈んだ。

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
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 デービスは振り返る。

 「あのアッパーが今日の試合のカギとなった訳じゃない。レオの動きに適応したワンパンチだよ。彼は背が高く、前傾姿勢で前に出てきた。だから俺も下がらずに応戦し、ジャブを突いて強打を打ち込めるチャンスを作ったんだ。コーナーに追い込めたから、レオは逃げ場が無くなったよね」

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions

 「レオは素晴らしい選手。物凄くトレーニングを積んでいたことが分かった。ほんの少し自分が優っていたってこと。両方のベルトを守っていきたい。まぁ、どちらの階級にするかはチームとも相談する」

 勝者デービスはそう語ったが、2つの階級の世界タイトルを保持することなどあり得ない。

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
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 「俺は最高の試合をお届けした。今やPPVのスターだ」

 24戦全勝23KOとなったデービスは結んだ。今後もメイウェザーのプロモートでキャリアを重ねていくようだ。元パウンド・フォー・パウンドは「俺を超える才能」とデービスを絶賛する。

 一方のサンタ・クルスは「勝てなかったが、私の体はOKです」と話し、検査のため病院に直行した。彼の戦績は37勝(19KO)2敗1分けとなった。試合を左右したローブローが不運だった。

 1試合で2階級の世界タイトルが懸かるのは、1988年11月7日のシュガー・レイ・レナードvs.ドニー・ラロンデ戦、2014年9月13日のフロイド・メイウェザー・ジュニアvs.マルコス・マイダナ戦に続くものだ。

 ボクシング界にとって決していいことではない、と私は感じる。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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