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アルゼンチン人コーチが語る「カタールワールドカップ南米予選での祖国」

林壮一ノンフィクションライター
エクアドルに1-0、ボリビアに2-1で勝ち点6を得たアルゼンチン(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、カタールワールドカップ南米予選の祖国について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 南米10カ国の全てが2戦して、我がアルゼンチンとブラジルが勝ち点6を挙げて1位タイです。やっぱり、アルゼンチンの最大のライバルはブラジルです。いい選手が揃っていますね。初戦でボリビアを5-0、2戦目はネイマールがハットトリックして、ペルーを4-2で下しました。

 毎回思いますが、南米予選って戦争なんです。リベルタドーレス杯以上に激しいですよ。

 アルゼンチンの初戦の相手はエクアドルでした。エクアドル代表の監督を務めるグスタボ・アルファールは、アルゼンチン人です。かつてボカ・ジュニアーズで指揮を執っていました。堅い守りに定評があります。

 アルファールの戦術もあって、エクアドルは守備の強さを見せました。アルゼンチンの良さを封じていましたね。メッシのPKで1-0での勝利でした。スタートとしては悪くなかったですね。

 アルゼンチンの第2戦の相手はボリビアで、敵地に乗り込んでのゲームでした。ボリビアは標高が3700メートル近くあって空気が薄いんです。前回の予選では0-2、マラドーナがいた時でさえ、0-6で負けています。アルゼンチン人には慣れていない状況ですから、直ぐに疲れてしまいますし、目眩に襲われます。

 1986年のメキシコワールドカップの決勝の舞台、アステカ・スタディアムだって「標高が高い」と言われましたが1800メートルです。ボリビア国内にはもっと空気の薄い場所もありますが、FIFAが認めている競技場のなかではプレーし難いスタディアムですよね。だから、アルゼンチン国民は心配していたんですよ……。

 

 でも、代表の若い選手たちの力で勝利をもぎ取りました。前半24分にヘディングで先制点を決められた時には、過去の悪夢が蘇りました。やはり、この標高では無理かな……と感じざるを得なかったです。

 そんな中で、ラウタロ・マルティネス(23)、フォアキン・コレア(26)とセリエAで活躍するフレッシュな選手の力が生きました。彼らの溌剌としたプレーぶりは、代表の世代交代が上手く運んでいることを伝えて来ましたよ。メッシに頼り過ぎる戦術じゃなかったところが、非常に良かったです。

 次の試合は11月12日。ホームでのパラグアイ戦になります。今のアルゼンチン代表は、若い選手と同様にメッシも走るんですよ。

 これまでは、メッシだけはディフェンスしなくていい、攻撃だけに集中しろ、チャンスまでは歩いていていい、なんていうサッカーでした。でも、今は違います。メッシもディフェンスに戻るし、ハイプレスも掛けるし、献身的なプレーが求められています。そこがこれまでと違うんです。

 今月のメッシは、FCバルセロナ、アルゼンチン代表と1カ月に7試合をこなさなきゃならない。そんなスケジュールでも、走り切った姿が良かったですね。

 正直、現状ではブラジルの方が強いかもしれない。でも、期待出来るアルビセレステスです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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