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12年ぶりにNBAチャンピオンとなった男~レイジョン・ロンド~が見せたもの

林壮一ノンフィクションライター
12年ぶりに自身2度目のNBA王者となった直後、息子から祝福されるロンド(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ベンチスタートの選手が、1シーズンのプレイオフでアシスト105を挙げた。ロンドがマークしたこの数字は、2014年にマヌ・ジノビリが樹立した95を上回り、1971年のシーズン以来、最多となった。

 NBA選手となって2シーズン目でロスアンジェルス・レイカーズを下してチャンピオンとなったロンドは、レイ・アレン、ケビン・ガーネット、ポール・ピアースと共に、ボストン・セルティックスの顔だった。この時のセルティックスは、いかに故コービー・ブライアントを抑えるかが勝利の鍵であった。

 若くしてVメンバーとなったロンドは、傍若無人ぶりが目立つようになる。翌2009年には「俺がチームを優勝に導いたんだ」と公言した。

 自らシュートを打てる局面でも、アシスト記録を作るために敢えてパスするロンド。日に日に彼に対する不満が大きくなっていく。そんな状態のセルティックスは、プレイオフ進出は果たすものの、当然のことながら王者にはなれなかった。

 2011年のプレイオフ。"KING"レブロン・ジェームズ率いるマイアミ・ヒートに0勝2敗でリードされたセルティックスは、試合の映像を見ながら反省点を話し合っていた。自らがディフェンスに戻らないシーンが流れた際、ロンドはペットボトルを投げつけ、スクリーンを割ってしまう。この件でセルティックスは、組織として砕け散る。

 翌々年、ロンドは右膝前十字靭帯を断裂し、低迷期に入る。そしてダラス・マーベリックス、サクラメント・キングス、シカゴ・ブルズ、ニューオーリンズ・ペリカンズと渡り歩いた。"元チャンピオン"あるいは"かつて、リーグを代表したポイントガード"として認知されてしまう。

 そんななかで、ロンドの悪童ぶりは影を潜めていった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180501-00084680/

 2018年にレイカーズに移籍したロンドは、チーム内での己の立ち位置を理解する。

 今回のプレイオフ6戦で、ロンドがスターティングメンバ―としてコートに立ったことは一度も無い。しかし、シックスマンとして与えられた役割を十分に果たした。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20201002-00200244/

 レイカーズの一員としてチャンピオンとなったロンドは言った。

 「俺がコービーに戦いを挑んだのは21歳の時だった。ケンタッキー州ルイビル出身の小僧だったよ。NBA選手となって2年で、同じ土俵で競うようになったんだ。コービーの仕事ぶり、遺産は多くを語り掛けてくる。コービーの映像を見て学び、彼の大きさを理解している。

 レイカーズの栄光は、コービーの娘さんの勝利でもある。我々は信じ難いシーズンを送った。チャンピオンになる為に出来る全てのことをやった。だから成功したんだ。きっとコービーも、微笑んでいるだろう」

 歳を重ねて丸くなったロンド。今後、どんな選手生活を送るのか。背番号9に新たな魅力が加わった。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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