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「黒人への差別と闘う」NBAが30日にPlay Offを再開

林壮一ノンフィクションライター
「黒人銃撃に抗議」。選手がボイコットしNBA Play Offは延期に(写真:代表撮影/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 御存知のように、現地時間8月23日、ウィスコンシン州ケノーシャで29歳の黒人男性、ジェイコブ・ブレークが白人警官に背後から撃たれた。ケノーシャは人口の11%が黒人、17%がヒスパニック、67%が白人であり、市長、警察署長、地方検事も全て白人である。市民の多くは、黒人と警察は長年緊張関係にあったと話す。

 この件をきっかけに、NBA選手たちが声を上げた。

 まずは、同州ミルウォーキーをフランチャイズとするバックスが試合をボイコットし、26日、27日に予定されていた他のPlay Offゲームも全て延期された。

 ミルウォーキー・バックスは現在3勝1敗でオーランド・マジックをリードしており、ベスト8進出に王手を掛けている。このカードは、現地時間30日に催されることとなった。

 また、オクラホマシティ・サンダー×ヒューストン・ロケッツ、ロスアンジェルス・レイカース×ポートランド・トレイルブレーザーズのファーストラウンドも、30日に再スケジュールされた。

 

 翌31日には、既にベスト8入りしたボストン・セルティックス×トロント・ラプターズ、そしてファーストラウンドを勝ち上がろうとするロスアンジェルス・クリッパーズ×ダラス・マーベリックス、デンバー・ナゲッツ×ユタ・ジャズを行うとNBAがアナウンスした。

 今日のNBAは黒人選手なしでは機能しない。世界最高峰のバスケットボールリーグは、彼らによって支えられている。神業としか表現できないプレーの数々、そしてその迫力は他の国のバスケットボールでは決して味わえない。

 こうした超人アスリートが賛同してきた<Black Lives Matter>が、何の効果も無いことを悟らせるきっかけとなったのがジェイコブ・ブレークへの7発の発砲だった。

 "KING"レブロン・ジェームスは、28日の午前1時33分に「発言だけでは、何も変わらない。今、国家に対して、子供たち、コミュニティーの為に何か行動を起こさなければ。合衆国は変わらなきゃいけない。共に。だから投票しよう」とSNSで呼びかけた。

 黒い肌を起因とする差別に立ち向かったボクシング界最大のヒーロー、モハメド・アリ。また、1968年メキシコ五輪200メートルスプリントで金メダルを獲得したトミー・スミス、同じく銅メダリストとなったジョン・カルロス。スミスとカルロスは表彰台で、黒い手袋を嵌めた拳を突き上げ、黒人に対する偏見を見直せ! なるメッセージを伝えた。

 "KING"レブロンだけでなく、今回のNBA Play Offでも、彼らに続くメッセンジャーが登場するような気がしてならない。コロナ禍でアリーナに足を運べないファンにバスケットボールの素晴らしさを見せるだけでなく、己の存在証明のために闘うーー例年以上にハイレベルなゲームが期待される。

 果たして、彼らのパフォーマンス、心の叫びは、白人至上主義者に届くであろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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