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WBA&IBF&WBOヘビー級王者、アンソニー・ジョシュアも声を上げた

林壮一ノンフィクションライター
ロンドンでのデモ行進に参加したチャンピオン(写真:ロイター/アフロ)

 「沈黙は暴力だ」と書かれたプラカードがチャンピオンの後方で揺れる。

 6月6日、ロンドンで催された「Black Lives Matter(黒人の命も重要だ)」デモ隊の中に、一際背の高い、引き締まった体の黒人男性の姿があった。「差別撲滅」を主張するWBA&IBF&WBO統一ヘビー級チャンピオン、アンソニー・ジョシュアである。無論、5月25日に白人警官によって窒息死させられたジョージ・フロイドを巡る抗議だ。

 黒い衣装に身を包んだジョシュアは言った。

 「私や、我々の地域は、一体どのくらいの期間、差別に苦しまねばならないんだ? あなたも、そして私も差別ウイルスを消すワクチンだ」

 「フロイド殺人は、絶対に許されない。ヤツらは、黒人たちの人権を奪い、虐げ、嘲り、侮辱し、命や魂を奪っていく……」

 この英国人チャンピオンはロンドン五輪の金メダリストとしてプロに転向したが、2011年に大麻の所持で犯罪者となっている。更生し、栄光を掴みながら社会性を身に付け、今日、スポークスマン的役割を担うようになった。

 

 ご存知のようにジョシュアは、6月20日にIBF1位のクブラト・プレフとの防衛戦が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期となった。 

 デモ行進に加わった折、ジョシュアは左膝をニースブレスで固めていた。側近は「予防のためだ」とコメントしたが、調整に時間を要する可能性もある。

 次戦で会心のファイトを見せ、勝利後にもう一度、リング上から差別反対のメッセージを発してほしい。そう、フィリックス・TITO・トリニダードがオスカー・デラホーヤ戦の際に「ビエケス島に平和を!」と書いたプラカードと共にリングインしたように。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20191015-00146512/

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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