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開幕直前! MLS(メジャー・リーグ・サッカー)の魅力

林壮一ノンフィクションライター
ポートランド・ティンバーズの背番号10はアルゼンチン人のセバスチャン・ブランコ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 1996年にスタートした米国のプロサッカーリーグ(MLS)。間もなく25年目のシーズンが開幕する。現地時間2月19日に行われたプレシーズンマッチ、ポートランド・ティンバーズvs.ミネソタ・ユナイテッド戦を取材した。

撮影:著者
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 開幕前である為、両チーム共に「一人でも多くの若手を試そう」という狙いでメンバーを選んでいたが、選手が多国籍であることに驚く。

 ホームであるティンバーズは、ペレやベッケンバウアーが北米リーグでプレーした頃からサッカーに力を注いできた。チームの発足は1975年。当初はヨーロッパから選手や指導者を招き、サッカー不毛の地とされたアメリカ合衆国にこの競技を浸透させた。女子のプロチームも持ち、幼少を対象とした数多くの大会を催してサッカーの普及に努めているクラブである。

 今日、ティンバーズはベネズエラ人監督のジオバニ・サバリースが指揮を執り、現時点の登録メンバーは、アルゼンチン3名、コロンビア3名、コスタリカ2名、パラグアイ2名、チリ、ペルー、ベネズエラ、エルサルバドル、スロベニア、クロアチア、フランス、アイルランド、ポーランド、ノルウェー、ニュージーランドがそれぞれ1名ずつ、アメリカンは8名の構成である。

ジオバニ・サバリース監督 撮影:著者
ジオバニ・サバリース監督 撮影:著者

 

 この日のティンバーズは主力メンバーを温存し、まだ1軍経験の無い選手やテスト生らをピッチに送り込んだ結果、2-4で敗れた。今季のプレシーズンマッチで、ティンバーズが黒星を喫するのは初めてであり、開幕前の戦績を4勝1敗とした。

 それでもサバリース監督は手応えを感じており、試合後、「前半の立ち上がりから35分は非常にいい内容だった。我々にとって、ミネソタは開幕戦の相手。色々な課題も見えたし、修正しながらベストな状態を作っていく」と話した。敢えて手の内を隠す采配だったのかもしれない。コンパクトでスピードのあるアメリカのサッカーはサイド攻撃を多用し、躍動感に溢れていた。何より、将来性を感じさせた。

 記者会見中、私は、これだけの数の南米選手たちがいることの効果は? 彼らがアメリカサッカーに齎しているものは何か? と質問した。

 サバリース監督は、「南米選手は技術があるしメンタルも強い。サッカーに取り組む姿勢、発する言葉、勝利への飢えなど、チームに多くのプラス要素を与えてくれる。ロッカールームの雰囲気が良くなるし、チーム全体が勝利に向かう集団となっている」と答えた。

撮影:著者
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 ミネソタ・ユナイテッドの登録メンバーは、アメリカンが14名、ニュージーランド3名、イングランド2名、ウルグアイ2名、キューバ、パラグアイ、トリニダード・トバゴ、フィンランド、フランス、カナダ、スロべニアが1名ずつとなっていた。このチームは19歳のウルグアイ人MF、トーマス・チャコンが光る。

撮影:著者
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 開幕まで残すところ1週間。生き残りをかけたチーム内の競争は激しさを増すであろう。様々なバックグランドを持つ選手たちが異文化に触れ、発見を繰り返しながら、一つのボールを追う姿は見ていて楽しい。

 アメリカ合衆国はフットボールが王道で、サッカーは根付かないとされて来た。が、MLSを通じて新たな文化が着実に育っている。更には、地球上で最も競技人口の多いスポーツであるサッカーの底力を当地でも感じた。

 3月1日に鳴らされる、25年目のシーズン開始のホイッスルが待ち遠しい。久保裕也もFCシンシナティの一員として、MLSの開幕戦を迎える。彼はスタメンの座を奪えるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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