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2階級制覇王者の凱旋試合

林壮一ノンフィクションライター
10月1日の防衛戦に向け、順調な仕上がりを見せる京口 撮影:山口裕朗

 9月21日、京口紘人はリングサイドから同僚である谷口将隆の試合を見守った。同じ歳の友であり、何度もスパーを重ねる間柄だ。谷口は2月26日にWBO世界ミニマム級王者のビック・サルダールに挑み、判定負けして以来の再起戦であった。

 谷口は日本ミニマム級タイトル挑戦者決定戦として、同級ユース王者の石澤開を迎えた。再度、世界戦線に上るには内容が問われたが、6戦全勝6KOの新鋭、石澤に手を焼き、5回にはダウンを奪われる展開。圧勝することはできなかった。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 京口はその一戦を目にした後、語った。

 「石澤のスタイルはちょっと僕と似ているんですよ。のらりくらりとしながら、コツコツとパンチを当てていく谷口の策は、僕とのスパーからやっていて、それが出せたなと思いました。初回にダウンを奪えそうでしたが、相手も1発がありますし、それほど攻め急ぐべきではなかったんじゃないかな。

 ダウンした時は、こちらの方が焦りましたが、他は安心して見られました。谷口はダウンを喰った後に、平常心で自分のボクシングを貫きましたよね。そこが良かったです」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 10月1日の自身の防衛戦について、京口は次のように語った。

 「僕も、挑戦者(久田哲也)もファイターですから、接近戦で打ち合う展開が多くなるでしょう。そこでチャンピオンらしく、上回りたいですね。クロスレンジで相手を凌駕することをテーマに、練習を積んで来ました。今日までで、スパーは100ラウンドくらいこなしています。

 久田選手は、しつこいボクシングをしてくると思います。フックに威力があるようなので気を付けないと。中盤以降にチャンスが来るんじゃないかと予想します。<京口は強いな>と感じて頂ける試合をお見せしたいですね」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「前回の防衛戦は、『4ラウンドにKO』と言っていたものの、判定になってしまったので、今回、余計なことは話しません。流れの中でKOできればいいですが、ノックアウトに拘ってもいません。ボディブローが僕の代名詞のようになったので、相手はそこを警戒するでしょう。でも、もう1段階上のパーツ、増えた引き出しをリングで出したいですね」

 今回の試合に向け、京口はフィリピンで8日間のキャンプを張った。

 「35ラウンドくらい現地でスパーをこなしました。ジムの設備、住居、目付きと、貧しさの中から這い上がろうとするファイターの生活に触れ、凄く刺激を受けました。こういう気持ちを忘れたらアカンなと。

 10日1日は、自分が生まれ育った大阪での防衛戦です。世界タイトルを獲得してから、故郷のリングに上がるのは初めてです。地元の方々に成長した自分を感じて頂きたいなという思いがあって、とてもモチベーションが上がっていますね」

 凱旋試合まで、残すところ1週間である。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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