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決戦まで2日、挑戦者・田口良一は自身を仕上げた。

林壮一ノンフィクションライター
常に激しく打ち合うスタイルで頂まで上って来た田口良一(写真:ロイター/アフロ)

「田口が勝ちますよ。中盤以降にKOするでしょう」

 元日本スーパーバンタム級王者の岩本弘行はそう語った。

「ベテランならではの田口の経験が生きますよ」

撮影:著者
撮影:著者

 ついに、WBO世界フライ級タイトルマッチまで、残すところ2日となった。田口良一は今回、4年3カ月ぶりに挑戦者としてリングに上がる。ご存知のように、迎え撃つチャンピオンは、12戦全勝7KOの戦績を誇る田中恒成だ。

 田口は言う。

「もちろん、調子のいい日も悪い日もありましたし、疲労が溜まってきつかった週もありました。でも、コンディションはいいですし、パンチのキレもあります。昨年5月20日のヘッキー・ブドラー戦(田口は判定負けでWBA/IBFライトフライ級タイトルを手放した)に向けていた頃のように、空腹に耐えかねて、睡眠時間が奪われるということも無かったです。いい感じで仕上がった自負はありますね」

 2019年に入ってからの田口は、1月に43ラウンド、2月に77ラウンド、今月は30ラウンドと、計150ラウンドのスパーリングをこなした。

撮影:著者
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 「新たなトレーナーである梅津宏治さんの指導で重心が低くなりました。パンチをもらっても、バランスが崩れても、直ぐに立て直せるスピードが付いたと思っています。この試合に向けて9月中旬からトレーニングしてきましたが、この2カ月間は、僕の人生の中で最も速く時間が流れたように感じます。身体のケアも理学療法士さんの指導を受け、疲れが残らないようにやって来ました」

 梅津も語る、

 「3月8日に行ったラストスパーの内容も良かったですし、限られた期間のなかで、やるだけのことはやりました。

僕自身は田中の映像を繰り返し見ましたよ。危ないパンチは〇〇だから食わないようにとか、●●を仕掛けていくぞ、とか。ミット打ちをやっていて、その場で閃くこともありましたね。手応えはありますし、自信を持ってリングに上がります。ただ、ボクシングはやってみなければ分からないです。田口のジャブがどのくらい当たるのか等、蓋を開けてみなければ何も分かりません。でも、以前にもお話ししましたが、田口は本番に強いタイプです。予想外の展開になっても、リング上でアジャストできる経験値を持っています。勝たせたいですし、きっと、やってくれるでしょう」

 ひた向きに、黙々と汗を流してきた田口良一。16日は、魂の籠ったペレアを見せてくれるだろう。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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