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「メイウェザーvs那須川」は「マイク・タイソンvsボブ・サップ」のようなものか

林壮一ノンフィクションライター
41歳となった元PfP KING。IRSへの滞納など、浪費がささやかれるが…(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本の興行団体、RIZIN側は「メイウェザーvs.那須川戦を大晦日に開催する」と発表したが、それを受けたフロイド・メイウェザー・ジュニアが「那須川戦については合意などしていない」とアナウンス。もはや、同ファイトの実現は難しい。というよりも、最初からきちんとした話し合いなど、なされていなかった感がある。

 RIZINが30億円規模のファイトマネーを用意できれば、メイウェザーが試合をする価値もあるかもしれない。だが、ボクシング界でTOPにいた男が、世界的には無名の日本人キックボクサーを相手にする意味は無い。

 00年代初期、日本国内には「ボブ・サップがマイク・タイソンと戦う!」というデマが流れた。ボクシング界の人間は別として、信じ切ってしまった人も少なからずいた。しかし、これは、日本の格闘技団体が自作した“単なる作り話”だった。

 タイソンは、イベンダー・ホリフィールドの耳を食いちぎって謹慎処分となってから、シェリー・フィンケルをアドバイザーとしていたので、フィンケルに直接質すと、「そんなオファーは全くないよ」と応じたものだ。

 今回の騒動も同じような臭いがする。

 前回の原稿で私は、「アントニオ猪木vs.チャック・ウェプナー、大仁田厚vs.レオン・スピンクス、高田延彦vs.トレバー・ バービック、船木誠勝 vs. ロベルト・デュラン等、日本の興行師たちはボクシングの元世界チャンプを使って旨い商売を展開して来た」と書いた。引退後、カネに困っているボクシングの元世界王者を日本に連れて来てプロレスなど、他競技のリングに上げ「ボクシングのチャンピオンと言っても、たいして強くない!」なる演出をするのは、いかがなものか。

 ルールが異なれば困惑するのは当然だ。例えるなら、羽生善治にポーカーや囲碁で勝負を挑み「羽生に勝った!」と騒ぎ立てるようなものである。ナンセンスの極みだ。

 那須川が世界的なファイターになりたいのであれば、あくまでも自分の土俵で戦い、その道を究めるべきだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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