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熱く燃えるNBA PLAYOFF ペリカンズを引っ張るベテラン#9

林壮一ノンフィクションライター
Rajon Rondoのゲームメイクとアシストは昨年の王者を止められるか(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NBA PLAYOFFは東西共にベスト4が出揃い、熱戦が続いている。

 "KING"レブロン・ジェームス率いるクリーブランドは、PLAYOFFファーストステージの最終戦で、辛くもインディアナを振り切った。しかしながら、レブロンの消耗は激しそうだ。

 全盛期のマイケル・ジョーダンにはスコッティ・ピッペンという相棒がいた。レブロンがマイアミ時代にNBAを制した際にも、ドウェイン・ウェイドの存在があった。だが、現在は一人でゲームを組み立てているように映る--。

 西地区はレギュラーシーズンで6位と振るわなかったニューオーリンズ・ペリカンズが、同3位のポートランドに4連勝し、地区セミファイナルに駒を進めた。このペリカンズを牽引するのが、背番号9のレイジョン・ロンドである。

 ロンドは1986年ケンタッキー州ルイビル生まれの32歳。本格的にバスケを始めたのは高校時代である。母親は、ロンドの細身の身体を見て「この子がスポーツで大成することはない」と感じたという。

 

 だが、地元ケンタッキー州立大で全米中に名を轟かせるガードとなり、2006年のNBAドラフトでフェニックス・サンズから指名されプロの道へ。サンズからボストン・セルティックスにトレードされ、9シーズン緑のユニフォームを身に纏う。セルティックスでは、ケビン・ガーネット、レイ・アレン、ポール・ピアースらと共にプレーし、2年目にNBAチャンピオンの座に就いている。

 185センチと小柄ながら、戦術眼、アシスト、スティールに活路を見出し、2010年から4季連続でオールスターに選出されている。

 当時、控え室でロンドをインタビューしたいと思っても、まず不可能だった。試合前はヘッドフォンをしたままいつも集合時間ギリギリに現れ、試合後はシャワーを浴びると囲み取材で二言三言コメントしただけで、すっと消えてしまったからだ。

 試合中も気の強さを見せ、<悪童>キャラで売っていた。そんなところがロンドの魅力であった。

 

 今日、悪童もベテランの域に達し、チームリーダーとなった。

 「リーダーね…どんなチームにもそういう役割の選手がいるよな。俺もそんな役割になったのかなぁ。あんまり意識していないけど」

 ロンドは乾いた声で言った。

 「長くプレーしてきたけれど、最高の思い出を挙げろって言われたら08年にNBAチャンピオンシップで勝ったことだろうね。また、ああいう経験をしたい。バスケ選手にとって、最も肝心なものはハートさ。強いハートが成功するか否かを分ける。セルティックの優勝メンバーは実に強靭なハートを持っていた。一流選手は皆そうだ。それを見習ったし、俺も築いたつもりだ。今シーズン、自分に出来る限りのことをして、少しでも上に行きたいと思っている」

 ロンドが西地区セミファイナルで対峙しているのは昨シーズンのNBA王者、ゴールデンステイト・ウォーリアーズである。4月30日現在、0勝1敗でリードを許している。ウォーリアーズの柱は述べるまでもなくステフィン・カリーだ。

 ロンドがNBA王者となった折、2歳下のカリーはまだ無名選手だった。ポジションは同じポイントガード。

 この西地区セミファイナルで、ロンドの意地を見たいものである。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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