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王として訪れ、伝説としてパリを去った男の新天地

林壮一ノンフィクションライター
イブラヒモビッチにとってアメリカは、EASYなリーグかもしれない(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2年前、「王として訪れ、伝説として去る」と語ってパリ・サンジェルマンからマンチェスター・ユナイテッドに移籍したズラタン・イブラヒモビッチ。彼が選んだ新天地は、アメリカ合衆国のメジャー・リーグ・サッカー(MLS)であった。

 

 LAギャラクシーに入団したイブラヒモビッチは、3月31日のLos Angeles FC戦で背番号9のユニフォームを纏い、後半25分にピッチに立った。その時点でのスコアは1-3。リードを許していた。

 イブラヒモビッチが投入されてから、3分後、ギャラクシーは2点目を挙げる。そして76分、45ヤード離れた位置からボレーを叩き込み、スウェーデンのキングが同点弾を決める。圧巻のパワーショットだった。

 その後のアディショナルタイム、イブラヒモビッチは、味方のクロスをヘッドで合わせる。ボールはGKの頭上を越えてネットを揺らす。彼の追加点でギャラクシーは、4-3の逆転勝ちを収めた。

 「イブラヒモビッチは、アメリカサッカーに新しい刺激を与えた。昨年最下位だったLAギャラクシーだけど、イブラヒモビッチが生で見られるというだけで胸が躍る。サッカーファンが、更にこの競技を好きになるプレーだった!」

 MLS西地区のライバルチーム、ポートランド・ティンバーズの下部組織でプレーする14歳のアメリカ人少年は興奮気味に語った。

 4月8日のSporting Kansass戦で、イブラヒモビッチは後半17分からプレー。しかし、ギャラクシーは0-2で敗れた。

 先の少年は言う。

 「でも、イブラヒモビッチがピッチに入ってから、確実に流れは変わった。とにかくシュートが強い。他の選手とは比較にならない」

 2007年、LAギャラクシーは、デイビッド・ベッカムを獲得している。その前シーズンまで、ギャラクシーのチームカラーは黄色と緑であったが、ベッカムが当時在籍していたレアル・マドリードに良く似たデザインに変更した。

 アメリカに渡った折、元イングランド主将は話した。

 「モチベーションは金じゃない。アメリカのサッカーのレベルを上げたいんだ。皆の予想より、ずっと強くなるよ」

 ロシアW杯は逃したが、確かに2007年以降、アメリカ代表は進歩を見せた。

 現在はイブラヒモビッチが、ベッカムが愛したギャラクシーの白いユニフォームに身を包んでいる。MLS3戦目の相手はシカゴ・ファイアー。現地時間14日(土)の14時半キックオフだ。AWAYながら、イブラ効果で試合3日前に2万8000枚のチケットが完売した。

 KING&LEGENDSが、アメリカサッカーに新たな血を注ぐことを期待したい。

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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