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200年に一人の天才ボクサーが語る山中慎介の再起戦

林壮一ノンフィクションライター
再起に懸ける山中慎介 撮影:山口裕朗

 本稿でお馴染みの元WBA世界ジュニアウエルター級1位、日本同級&ウエルター級王者だった亀田昭雄。現役時代「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と謳われた男である。

 その彼に、明日の山中慎介vs.ルイス・ネリ戦について語ってもらった。

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 山中慎介とルイス・ネリの再戦ですか…。ネリの勝因はドーピングでしょう。でも、ボクサーというのは、一度負けると心に傷が残るんです。ましてKOでやられた相手だと、向かい合った時、パンチを交換した時に「コイツに負けたんだ」という印象を持ってしまうものなんです。

 両者に実力的差は無いでしょうから、気持ちが勝敗を分けるでしょうね。山中も敗北から時間が経って気持ちは回復しているでしょうが、リングに上って少しでもやり難さを感じたら、難しい試合になりますよ。

 ただ、本人が望んだリターンマッチですから、気力が充実しているかな。そこがプラス材料ですね。

 僕自身、東洋太平洋タイトル戦でチャンピオンだった金応植と2回戦いました。1戦目は、バッティングされてレフリーストップになって敗れました。リターンマッチが決まって、「雪辱を果たしてやる!」と勝利を誓っていましたが、知らず知らずのうちに相手のペースになっていたんです。

 1発食うと、焦りが出て、余計なことを考えてしまうんですよ。それで、2戦目も負けてしまった。僕はアマ時代、同じ相手に2度負けたことはなかったのですが、何と言うかメンタル的に傷を負っていたんですよ。

 輪島功一さんは、ジョージ・カーター、オスカー・アルバラード、柳済斗にリターンマッチで勝利しましたよね。彼は本能で闘う選手でしたから、再戦になっても無駄なことは頭に思い浮かばなかったのでしょう。でも、山中は頭を使うタイプの選手です。あれこれ考えないでやってほしいですね。ネリの方は、薬を使ってしまうようなヤツですから、やはり本能でファイトするタイプなんですよ。

 山中が5ラウンドまでにペースを握れるかどうかが、試合の鍵ですね。頑張ってほしいです!

 

 明日、山中は拳で何を語るだろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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