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V11に向かう世界王者 内山高志

林壮一ノンフィクションライター
Photograph by 山口裕朗

V11戦まで、あと24日。 

「アマチュア最後の時期は伸び悩んでいたと思う」と語るWBAスーパーフェザー級王者、内山高志は、プロ転向を決めてから研究に研究を重ね、己のボクシングを築いて来た。

海外の名選手の映像を繰り返し見、「オスカー・デラホーヤのどっしりとした構え、そして腰の強さ」「マニー・パッキャオの踏み込みと小刻みな動き」「フェリックス・トリニダードのストレート」などを参考にし、自分に出来ること、出来ないことを取捨選択しながらキャリアを積んだ。

<盤石王者><日本ボクシング界のエース>とされる36歳は、現在、練習メニューの全てを自分自身で決めている。

「20代の時とは疲れの抜け方がまったく違います。朝、起きて『あぁ今日は体が重いな。下手に動いて怪我するよりも、完全休養にして明後日からやろう』等、自分の体と相談してコンディションを作ります」

こういう科白をサラリと吐けるのは、自分に強い男だからだ。

「だいたい世界チャンプになると、食事会なんかが忙しいじゃないですか。防衛戦で失敗するのは、周囲の人々にお祝いされ過ぎて練習が疎かになるからです。そうやって体重も増えて行く……。でも、僕は早めに帰って翌日に備えるんです。そんなことで体調崩して負けたって、誰も責任をとってくれないですからね」

ワタナベジム、渡辺均会長も「世界タイトルマッチを修了して、内山が休むのは一週間から10日だろうな」と話す。「内山の自分を律する能力に、自分が口を挟むことはない」と太鼓判を押す。

「防衛戦が終わると1カ月半とか休む選手がいますよね。あれが僕には分からないんです。せっかく作った体が落ちてしまいますよね。また作り直すのは大変じゃないですか」(内山チャンピオン)

大晦日のファイトが終了すれば、次は海外での防衛戦が具体化している。内山の試合を放映するTV東京の伴田プロデューサーも自信満々に言う。

「きっといい内容で勝利するでしょう。具志堅用高の持つ日本人世界王者の防衛記録V13を抜き、40歳まで現役でいてほしいですね」

大晦日、内山から目を離すな!

※私、来週の月曜日(14日)にトークショーを行います。興味のある方は、是非お越しください。お待ちしております。  

https://www.shosen.co.jp/event/24914/

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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