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どうした報道ステーション?OBとしてもあまりに悲しい「”女性を馬鹿にした”番組PR」

鎮目博道テレビプロデューサー・演出・ライター。
テレビ朝日本社(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

テレビ朝日「報道ステーション」の番組PR動画が炎上している。Twitterのトレンド入りし、女性たちから非難の声が次々に寄せられており、番組のジェンダーに対する姿勢を問題視する声が各方面から上がっている。テレビ朝日の看板ニュース番組が一体なぜこのような”女性を馬鹿にした”とも取れる番組PRを作ってしまったのか?かつて報道ステーションにディレクターとして在籍したことがある筆者としても悲しい限りだ。

ありえない「女性を馬鹿にした描写」

問題の番組PRへのリンクはこちら(※筆者注 動画は現在削除されて見られなくなっています)。帰宅した女性が誰かに向かって「会社の先輩 産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど もうすっごいかわいくて どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で 何それ時代遅れって感じ 化粧水買っちゃったの もうすっごいいいやつ それにしても消費税高くなったよね 国の借金って減ってないよね?」などと話しかけている。そして最後に女性の顔に「こいつ報ステみてるな」と大きなテロップが載せられる。

この中でも「ジェンダー平等と掲げてる時点で時代遅れ」という部分と、女性の人物としての描き方について、不快だとする意見が多いようだ。報道ステーションのOBでもあり、長年ニュース制作に携わってきた筆者も、このPRを見てぶっちゃけ驚いた。「こんな女性を馬鹿にした描き方はありえない」と思ったのだ。

「女性向けニュース番組のプロデューサー」は怒っている

テレビ朝日が出資し、制作するABEMAで放送中のSHELLYさんMCの女性のニュース番組「Wの悲喜劇〜日本一過激なオンナのニュース」を筆者とともに制作するテレビマンユニオンの津田環プロデューサーはこう語る。

「初見で、まず脳が混乱して何を言わんとしているか分かりませんでしたが、とにかく女性をバカにしているということだけは、よく伝わってきました。先輩の赤ちゃんは可愛い、とは子供を産むのが女性の幸せ、という隠喩かと。その後、ジェンダー平等は時代遅れ、とは?時代遅れはどっちですか?という気持ちで、もはや怒りを通り越して、その感覚に心配しかありません。」

番組OBとして、報道ステーションのスタッフにも、番組の方針としても、女性を馬鹿にする意図は決してなかったのだと信じたい。むしろジェンダー平等について言及することで、何らかの問題提起をしたかったのではないかと、好意的に解釈したいところだ。

しかし、女性番組制作者にこんな感想を抱かせてしまう番組PRを作ってしまうこと自体が、いかに報道ステーションのジェンダーに対する認識がずれてしまっているかを物語っているのではないだろうか。きっと多くの女性たちが、同じような「怒り」や「悲しさ」をこのPRに対して感じたのだとすれば、まさに多くの女性を敵に回してしまったことになるのではないか。

むしろ「ジェンダー平等」をスローガンとして掲げよ

そもそも忘れてはいけない。「報道ステーション」ではかつて、チーフプロデューサーによるアナウンサーなどへのセクハラが問題になったことがある。ただでさえ番組に向けられている女性たちの視線は厳しいものであることを認識しなければならないだろう。

「ジェンダー平等をスローガン的にかかげてる時点で 何それ時代遅れ」と言えるほど、テレビ朝日のジェンダー平等が進んでいるとは、ぶっちゃけ私には思えない。何人かのテレビ朝日報道局で働く女性スタッフたちに、上司などから受けたセクハラについての話を聞いたこともある。

むしろ報道ステーションは、そしてテレビ朝日報道局は今こそ「ジェンダー平等」をスローガンとして掲げるべきだ。

そして番組OBとして「目を覚ませ報道ステーション」と声を大にして言いたい。

テレビプロデューサー・演出・ライター。

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教を取材した後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島やアメリカ同時多発テロなどを取材。またABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、テレビ・動画制作のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)

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